EX.69 「不敗の男と何敗の少年」
本日はアキヒトの誕生日!!
是非是非楽しんで読んでください!!
「うっ······ラッ!!」
エイドリアンの右腕の一撃をなんとしても受け流そうとした俺は、両腕でL字型を作ったが、当たった所は全て青あざになっている自分の腕を見て、ゾッと青ざめる。
そして、その風圧によって俺は弾き飛ばされた。
更にその風圧は所々に蠢いていたマグマもあらかた弾き飛ばしていた。
俺はなんとかして受け身をとるのだが——————
「遅ぇ!!」
エイドリアンの追撃が待っていた。
一瞬の隙を見つけて、襲いかかってくるエイドリアンの姿を見ると、野生の猛獣のようであった。
「"スタリング·ラッシュ„!!」
俺は半ば体勢を戻すのを諦めて、ドドドドドッ!と『ファイター』の基本技を叩き込むが、実際ダメージを喰らったのは俺だった。
拳の先から血が滴り落ちたり、吹き出したりしている。
そんな自分の拳を見て、「くそっ」と毒づく。そして土煙が晴れたその先にはエイドリアンが少しばかり項垂れ、丸まっていた。
しかし、その姿は『ダイヤモンド』
エイドリアン 能力『金剛』 全身をダイヤモンドの見た目や硬度に変え、その防御力を誇る能力。
「"ダイヤモンド·エルボー„!!」
首元に強い衝撃が加わり、ガキボキと嫌な音が鳴って声が出せなくなる。
どうにか体勢だけは持ち直して、踵に砂煙を上げてようやく耐えることが出来た。
「························!!」
するとエイドリアンは太い両腕をうねり上げて笑う。
「ムハハハハハハ!!滾る······滾るぞ!!······だが、お前本気を出していないのだろう!?10秒待とうじゃないか、やってくれ!!」
俺はようやく治療した声帯で呟く。
「こいつ······絶対泣かせてやる······レインボー!!」
「はい!!」
俺の掛け声に応じたレインボーが技魂と化し、俺は技魂化したレインボーを体の中心を指して入れていった。そして、体から溢れ出た虹のオーラを俺の体に包ませる。
傍から見たらなんとも神々しく、なんとも珍妙な姿。まるで虹の龍を纏った様に見えるその姿を見てエイドリアンは感嘆の声を漏らす。
「ほう······それがお前の力か······おもしろい!!」
「ことごとく正直な奴だな······」
俺は少々呆れながらも、目の前のエイドリアンの姿を見据える。
一挙一動に集中しろ······少しの力で最大限のパワーを与える為に······!
アキヒトの新しい妖精であり、能力『レインボー』は未だに燃費の悪い能力。長期間この能力を使い続けると、少しの間に動けなくなってしまうだろう。
もしかしたら、これからも戦わなくてはいけないかもしれないのに、こんな所でジリ貧になったら元も子もないだろう。
俺は左脚に力を込める。すると、それに応じるように虹のオーラがうねり、膨らんでいく。
一瞬ピクリとオーラが尖った瞬間に——————
彼は飛び出した。
「"ダイヤモンド·スマァァァァシュッッッ„!!」
「"フェニックス·アロウメント„!!」
黒い煙が轟く。
結果は力負けで、俺は後ろへ吹き飛ばされた。しかし、俺はそのまま空中で一回転し、その後左足に虹のオーラを込める。
「"オーディンソード„!!」
俺の左足から放たれた剣状のオーラが、地面を抉り、大地を切り裂いた。
すると、エイドリアンは——————
「ぬん!"ダイヤモンド·ウォール„!!」
エイドリアンが地面を強く叩き、叩いた地面からダイヤモンドで作られた壁が、ギャリリリリリリ!!と電動ノコギリで削るような音が鳴って、アキヒトのオーディンソードを防ぐ。しかし——————
「どこにいった!?」
アキヒトの姿がエイドリアンの視界から消えていた。
エイドリアンが壁を解除し、そこから爆発めいた土煙から人影は一瞬さえ見ることが出来なかった。しかし、エイドリアンはあの少年は一度戦いを望んだのなら最後、戦いが終わるまで逃げる事はしないと直感でそう考えていた。
そして実際アキヒトは逃げた訳ではなかった。
そしてそれはエイドリアンの視界、足下の死角である場所にしゃがんだだけであった。
「こっちだぜノロマ」
「ヌオオオオオオオオ!!」
アキヒトが話し、ようやく気づいたエイドリアンは全身をダイヤモンド化して両腕でハンマーの形をとる。
しかし、アキヒトはぎりぎりまで左手に溜め込んでいたオーラでエイドリアンのダイヤモンドを切り裂く。するとダイヤモンドがきらびやかに宙を舞う。
「いくぞ!!黒鬼!!」
『おうよ!』
黒鬼から野太い声が届いて、俺の右腕が黒く、ゴツく変化する。
今のこの俺の右腕は黒鬼の許可制で変化させる事が出来る。
何故許可制なのかといったら、どうやら発動する度にムズムズするらしい。なので一応気を利かせてこうやってまだ余裕のある時は気合入れの為もいれて叫んでいる。
俺は右腕をダイヤモンドに変換されたエイドリアンの体に拳を打ち込んだ。
「"破星拳„!!」
俺の腕がエイドリアンの腹元を穿つ。エイドリアンは必死として防ごうとするが。
ピシッ······という音と共にダイヤモンドがひび割れる。
「よし!!」
アキヒトはこんな姿を見て、歓喜の声をあげた。
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マズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズい······これはマズいぞ!!
エイドリアンはひび割れている自らの腹を見てそう思った。
しかし、ここで逃げるのは漢じゃねぇな······。
そう思うが早く、こんな状態でエイドリアンの思考は冷静になっていた。
この能力を解除したらどれだけここから血が吹き出すか分からねぇが、ここで退く方がもっと駄目じゃねぇか。
だったら真正面からぶつかるか!!
エイドリアンはかつてプロレス界のトップの男であった。
そして、そのスタイルは『相手の技を全て出し切らせて、その上で勝つ』事であった。
そして、実際彼は356戦の中で356勝、実際問題無敵の存在であった。
しかし、リングの上で戦う彼は物足りない気持ちであった。強すぎたから、負けることを知らなかった。だからこそ、強すぎたのでより強い者を求めていた。
『やめてください、エイドリアンさん!!』
その手は——————
彼は観客の逆恨みとしてナイフを突き刺した男にたった一発喰らわしただけで、その人間は二度と動かぬ物になった。
殺してしまったのだ。
——————あまりにも強すぎたのだ。
あの声はもう誰の声だったのか覚えていない。
それから、あの事件は正当防衛としてプロレス界や、世間の人々はそう解釈したのたが、エイドリアンはあまりにも強くなっている自分を恐れていたのだと思う。
その後間もなく、エイドリアンはプロレス界から姿を消していった。
自らの罪の意識に勝てなかったのだと、世間の人々はそう考えていたのだが、そうは違う。
自分を壊してくれる。そんな剛の者を求めていた。
自分が生涯の負けをその剛の者に与えようと——————
そして、貧弱な体だが、力強い拳勇ましい肉体を持つ少年に敬意を持って。
能力を解除した。
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エイドリアンの鮮血が俺の顔にかかった瞬間——————
恐ろしい光景が見えた。
「さぁあ······続きを始めようじゃねぇか······!!」
まるで、目の前にいたはずの人物の肉体が膨れ上がりまるで化物になったような幻想を見た。
こんなにも恐怖を感じたのはいつぶりだろう。
実際こんなにも誰かに恐れるような事も覚えている間では殆ど無かった。
聖戦戦争でも数えるのなら片手とちょっと位だと思う。そもそも親父位がここまでの恐怖、いやそれ以上とってそうなのだが、それでも実戦ではそんな恐怖も命取りになる。
恐怖は全身の細胞を痺らせて動かなくさせる。
エイドリアンのハンマーが俺のすぐそこをかすり、地面を叩いて波状に膨らんだ衝撃波が俺の体を吹きとばした。
「ぐぅ······!」
強烈な圧を感じて、強い熱を肌を焼いて、ズキズキと体を刺した。
俺は慌てて全身をオーラで囲い、これ以上のダメージを防ぐ。
するとフワッと全身を包むような優しく温かい温もりが足下から吹き上げた。
俺はそれを感じた瞬間からある種の直感が働いた。
岡田······やったんだな······。
そこには覚悟と決意の二重螺旋が含んだ、そんな雰囲気があった。
あいつが頑張ったんだ。俺がここで慄いている訳にはいかないだろ!!
俺はパン!!と頬を叩いて意識を定める。
俺の目の前にはエイドリアンが俺を待って佇んでいた。
俺はその行為に敬意を感じて。
「なあ、エイドリアンさん。そろそろ終わらせるか······」
そんな言葉を伝えた。
するとエイドリアンは片眉を上げて。
「む······それはどういう意味だ?」
と言った。
「それは······」
俺は左足を後ろに下げて。
「もちろん······」
少し重心を下ろして。
「俺が勝つって意味だ!!」
俺は飛び出した。
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エイドリアンは狂気的な笑みを見せて、地面を強く叩いた。
「"ダイヤモンド·ウォール„!!」
ダイヤモンドで作られた壁を生み出す。
俺は——————
三人に分裂して、風に加速する。
ダイヤモンドの壁にぶつかる前に、二人の俺は反転にX状に斬る。
そして俺はその重なる中心部分に『リヴァイント·ストライク』によく似た強い一撃を加える。
『"ロスト·エンジェル„!!』
突き刺したその場所から蜘蛛の巣状にひび割れ、壁が崩壊していく。
その先にはエイドリアンが見えていて、俺はその存在に向けて左手をぐっと握りしめて飛び出した。
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なるほどな······
エイドリアンは己が全力の技を紙一重で避け切られ、その上で唯一の防御手段である『ダイヤモンド·ウォール』すらも破られ打つ手が無かった。
だが——————
諦めるな!!強者には敬意を持って戦え!!
エイドリアンは右腕に全力の力を込めて、放つ。
『万能と力の融合性』
それはエイドリアンがプロレスの新人時代、よく使っていた技。彼は初心に戻って少年に立ち向かう。
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そして彼は——————
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爆発めいたエネルギーの集合体であるオーラを左腕に全て詰め込めて——————放った。
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それは、エイドリアンの『万能と力の融合性』すらもうち飛ばし、その拳は彼を吹き飛ばした。
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357戦356勝——————1敗
彼の唯一の負けが決まった瞬間であった。
そんな激闘の中で、彼は妖精を肩に乗せながら——————。
立って、大の字に倒れるエイドリアンの姿を見て。
「ありがとう」
そう呟いた。
『焦燥の塔』第四階『煉獄』アキヒトVSエイドリアン
勝者アキヒト




