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アキヒトバトルアドベンジャーズ  作者: モフきのこ
第1章 『出会いと別れの一年間』
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EX.68 「笑顔の銃士」

 超高速に落ちていった彼によってクレーターが生まれたが、当の本人は肺から空気が漏れていく程度で間に合った。


 念には念を入れてアーマーを着けておいて良かった。


 岡田は服の中に入れて、既にバキバキと割れたアーマーを見てそう思う。


 だけどもう一度は耐えられないだろうな······。


 岡田が自ら造ったアーマーは防弾チョッキと同じ要領で造ったのだが、かなり丈夫に造ったそれでさえもたった一撃で壊れた様子を見て岡田は冷や汗を流す。


 つまりもう一度喰らうにはいけない······!なんとか仕掛けを見つけないと。


 岡田がそう考えた理由には少し前の出来事が挟む。


 たった数秒間とは言えども動けなくなったことについて——————と言うことだ。


 一対一の命を賭けた闘いにおいてその『たった数秒』は命に関わる事態となる。


 名も知らないあの吸血鬼の能力ではないだろう。擬似的とはいえ、この『現代』というフロアには太陽も存在する。


 原理は何一つ分からないのだが、草もそれによって成長して、内部には酸素も充満している事から本物と見ても仕方がないくらい本物に似ている。


 だからこそ何故こいつはこんな所をリングにしたのだろう······?


 岡田は頭を巡らす。


 相手の能力が『催眠術』なのか、それに近しい何かなのかは分からないのだが、もしその予想が違ったのならあれは完璧な、種族としての吸血鬼となる。


 だけど亜人族然り、大概がこの人間界から遠く離れた世界に住んでいる筈だ。······ましてや鬼族や巨人族なんかは別世界間に住んでいる存在。


 たとえその二種族として違うとしても吸血鬼もこんな所にいるはずがない。


 きっと何か一つ仕掛けがある筈だ、たった一つでも単純な一つの思い込みで消え去るような小さい何かが······。


 例えば、こいつが吸血鬼として未熟だったのなら······。


 チュッ······。


 再び身体が動かなくなる。


 そうか······そういう事だったんだな。


「蚊の生理活性薬と違って、この小さい蝙蝠は血を吸った対象を一時的に止めるのか」


 岡田の出した結論に吸血鬼はニヤリと笑って「正解だ」と答えた。


「だがしかし、答えに近づくのが遅かったようだな。もう終わりだ」


 吸血鬼は岡田の身体を持ち上げて、再び『地球落とし』のモーションをとる。


 @@@@@


 吸血鬼クロディック·アウストナルは未熟な吸血鬼である。


 吸血鬼は子を産む際、人、十人分の血を吸い尽くす。


 しかし、クロディックは同じ吸血鬼の血によって産まれた子供だ。


 だからこそ吸血鬼本来の力を出す事が出来ず、嬉しい事に太陽の光にも、聖水にも、心臓を杭に打たれても、目の前に十字架を用意されても死ぬことはあり得なかった。


 未熟であり、最強の存在。


 だが、最強の吸血鬼、吸血鬼の王はその楔を爆発めいた力で克服している点を見ると、まだまだ圧倒的に未熟というのが浮き彫りになる。


 しかし彼は今の現状に満足していない。


 人間の血をたらふく吸い尽くす事で本物の吸血鬼になれる事を信じて、今この場で『焦燥の塔』の管理者の一人になっている。


 彼の母は彼を産んだその瞬間に裏切り者として殺された。


 彼の目標は吸血鬼を殺す事。


 吸血鬼によって吸血鬼共を殺す事。


 その為なのなら、いくら人間を吸い尽くしてもどれだけいかれた敵と戦っても構わない、そう覚悟して——————。


 そして、今この場で自分よりも熱く、強い覚悟を持った少年に悪意を持って殺しにかかる。


 @@@@@


 "地球落とし„!!


 圧倒的スピードで落とされた彼の身体はまるでバキバキに割れたガラスの様にボロボロであった。


「ぐはっ······!」


 口から大量の血が吹き出す。


 内臓がどれほどやられているか分からないが······まだ、まだやれる。


 まだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだ······ま······だ···だ。


 焦点がぶれ、意識が朦朧とする。


 呼吸をしているのかしていないのか分からない、ただ死にかけている事ぐらいしか分からない。


 まずい···············


 ······溺れる············


 ··················死ぬ······


 すると誰かが自分の手をしっかりと掴んだ感覚がした。


 すると、引き上げられ。そこにいたのはアキヒトであった。


 アキヒトだけでない山本もユウスケもカレンも吉田もハルトだっていた。


『全く、何へまこいてんだよ。こんな奴、お前だったら楽勝だろ?』


 そう言って、俺のお腹辺りを触って癒やしの力を与えるアキヒト。


 瞬きをすると痛みと共に消えていて。


『俺の知っているお前はもっと根性のある男だったぜ!!』


 と山本が


『お前の狙撃の力だったらあんな空中にいるやつなんかチョチョイのちょいじゃないか』


 とユウスケが


『アキヒトくんに選ばれている時点でもっとしっかり自信を持って戦わくちゃ!!』


 とカレンが


『変な所でくたばっちゃ、骨も回収出来ないわよ』


 と吉田が


『まだ、奥の手使ってないでしょ?何諦めてるんですか。立って倒してくださいよ』


 とハルトが


 そして俺が何かを言う前に煙の様に消えていった。


 ただ俺は皆を偽物だとは思わなかった。


 何故なら皆は容姿が違えど皆であったから。


 その優しさがその厳しさがアキヒト達、皆だったからだ。


 そして瞬きをすると場所が変わり、戦場になる。


 今度は先程のアキヒト達と人数が同じだが、その後ろ姿でさえも違うと認識できた。


『よお、君が新しい狙撃手か。歓迎するぜ』


 するとポンと肩を叩かれて後ろを向くと、そこには片目に眼帯を付けた青年と言えるような容貌をした人間がいた。


『狙撃手って辛いよな······皆が戦ってるのに、自分はその後ろ姿しか見れないんだもんな』


 その声は酷く優しく、その言葉とは違うと感じた。


『でもな······たった一発、たった一撃で戦況を一転出来る力を持つんだよ俺たちは』


 狙撃銃の銃弾を親指で弾いて彼はニヤリと笑った。


『きっかけはもうすでに君に訪れてる。あとはその力をどう使うかだ。······僕のオススメは今まで通りが一番良いと思うけどな』


 すると彼はどでかい狙撃銃のスコープに目を付けて——————


『さあ、目覚めて戦ってくれ。応援してるからな『笑顔の銃士』』


 爆発めいた音量がライフルから発せられ、一発撃たれる。


 すると意識が戻っていった。


 @@@@@


戦え···············!!


足が折れても、喉が潰れても、あらん限りの力を使って戦え。


たとえどんな苦痛も乗り越えて戦え。


仲間が俺を信じているのなら、仲間が俺を頼るのなら。


戦え···············!!


まだ牙があるのなら。


まだその意志(ほのお)が燻っているのなら。


震える足をひっぱたいて。


震えるその手を握りしめて。


残ったその牙を噛み締めて、その意志(ほのお)を豪快に燃え滾らせて。


戦え······戦え······戦え······戦え······戦え···戦え···戦え···戦え···戦え···戦え···戦え···戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え···············


························戦え!!


 @@@@@  


「がはっ!!ゴホッ!!」


 意識が急速なスピードで戻っていき、口の中に残っていた血を吐き出す。


 痛みがなくなっていた身体と全体を包むオーラが新たな力を物語っていた。


「チイッ!!クソがァァァァ!」


 吸血鬼が爪を使ってオーラの壁を破壊しようとしていた。


 しかし俺はそんな光景よりも自分の銃を見ていた。


 見惚れていた。


 きらびやかな形にうねりを上げるオーラ、そしてこのオーラの壁を発生させている銃口を。


 俺は新しく進化した銃を構えて撃った。


 すると銃口からは薄紫色のきれいなオーラが凝縮されたエネルギー弾が発射される。


 その弾はまるで最初から分かっていた様に狙いを定めて吸血鬼に当たっていく。


 ジュ〜と言う焦げ付く音と共に吸血鬼の悲鳴が聞こえる。


 そして、オーラの壁が消え去っていって吸血鬼が飛び出した。


『クオリティア·コード』!!


『ダブルマシンガン』!!


 たった一つの銃が、二つに分離して岡田は地面に銃口を向けて——————撃った。


「何処を狙ってるんだお前えええええ!!」


 襲いかかる化物に俺は冷や汗をかきながら、対応する。


 あと少し······あと少しだ······。


 カチッ、カチッ


 よし、今だ!!


「遅い!!」


 吸血鬼は岡田の身体を持ち上げる。


 俺は高所恐怖症だ。


 だけど——————


「病気は治せないものじゃなくて、治すものだろうが!!」


 そう言い切ると、意外と胸の奥がすぅ〜となって、心が穏やかになる。


 考えろ、この状況で撃っても恐らく外すだろう。


 考えろ、ならどうする?


 考えろ、そうだ、この圧力が一瞬無くなる事があるじゃないか。


 なら行動しろ!


 岡田はゆっくりと穏やかに銃を持ち上げた。


 5······4······3······2······1······今だ!!


 そう思った瞬間、身体の重量がなくなった。


 ちょうど上空飛行が止まる、その瞬間に。


 俺はただ一点を目がけて撃った。


 その弾は吸い込まれる様に届いていき、直撃した。


『地殻弾』


 地面の殻を撃ったその瞬間、地面がうねり、波を作る。


 そしてその波端から銃弾が飛び出した。


 その銃弾は吸血鬼に直撃していく。


「グォぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!まだだあああああああああ!!」


「いや、終わりだ」


 するとグシャ、と身体が潰れていった。


「!?」


 驚愕な顔を見せる吸血鬼に、岡田は


「この弾はアキヒトの血液によって作られている。そしてアキヒトは『再生能力』を持つ······言ってる意味は分かるよな」


 すると吸血鬼は岡田を離してもがき出す。


「時より強い再生能力は微量でも再生能力を持つ存在に牙をむく」


「終わりだ」


「まだだ!!まだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだまだだ!!まだ終わりじゃない!!まだ終わっていない!!まだだ······私の復讐は終わってないんだああああああああ!!」


 岡田は落下しながら、照準を定めて撃つ。


 その弾は吸血鬼の眉間の間を撃ちぬき、ついに吸血鬼は死んでいった。


 地面に落下し、多少の痛みはあったものの。岡田は喜びに満ちていた。


「やった······!!勝った、勝ったぞ皆!!」


 その声に応える者はいなかったが、岡田は満足したように意識を失わせた。


 彼の顔には笑みが浮かばれていた。


『焦燥の塔』第一階『現代』岡田智樹VSクロディック·アウストナル


 勝者岡田智樹





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