EX.67 「漢の闘い」
山本直希とキル·ウィッシュリストが直撃した瞬間ハルトは跳んだ。
ハルトは今現在『天空飛行』を使う事は出来ていない。しかし、ハルトは空中の膜を蹴る足技の奥義で空を飛ぶ事が出来る。
その膜の厚みは約1ミリ。本来触れてある感じとしては何一つ感じないような厚みであり、1ミリという薄さなのだが、通常風に煽られた程度では千切れたり、破れたりはしないのだが。蹴る場合は破れないように繊細さが必要となる。
それを難なくこなすハルトには既にその繊細さを身に着けているのだ。
そしてハルトが目指した場所は——————
遙か高くに存在する第五層『甘獄』の天井部分。
ハルトは身体を全力で捻り、思い切り蹴り叩いた。
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「"パール„ゥゥゥゥゥ‼」
「"空圧„ゥゥゥゥゥ‼」
「"ハンマー„ァァァァ‼」
「"拳„ンンンンン‼」
山本の拳が、ウィッシュリストの振り下ろしが互いの頭に直撃し、互いにふらりとバランスが崩れる。
山本は頭の頂点に、ウィッシュリストは顎に強烈な一撃が加えられ脳が揺れる。
互いに互いの攻撃を受け止めて、既にその回数は二桁を超えていて強烈な攻撃を貰っている二人は顔が腫れ、唇が裂け、額からは血が流れている。
しかし、今更互いに倒れる訳ではいかず、何度もバランスを崩しかけるが強い意志を持って何度も立ち続ける。
キル·ウィッシュリストはエイドリアンと同様に肉体派の人間だ。
しかし、エイドリアンと違い、臆病である彼は全身をパールで纒い自らを守った上で、その防御力で攻撃をするスタイルとなる。
彼は能力を持っていない。
彼は能力者ではない。
しかし、パワーファイターとして立つ彼は、目の前の自分と同じようなパワーファイターを対峙する彼には倒れる事は許されなかった。
彼のプライドが彼の覚悟がそうする事を許さなかった。
それは山本も同じで。
ここで負けた場合、まずは上へ向かっているであろうハルトが、もしもハルトでさえも負けてしまった場合その被害は他の階にいるであろう他のメンバーに及ぶ。
だからこそ負ける訳にはいかない。
山本は再び自らの拳に力を込めて『圧力』の膜を創りだす。
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荒々しい音が轟く。
恐ろしい風がけたたましく吹き荒れる。
しかし、彼のその全力の蹴りはほんの少しの傷でしか与える事が出来なかった。
その壁は『再生能力』を持つ。
その少しの傷が瞬く間に修復され、元の天井の白い姿を保っていた。
「くっそ······」
ハルトは嘆息を漏らす。
彼には山本のような破壊に適した能力を持っていない。そもそも能力者ですらない。
だからこそ力を師である山本に、師の師である宮田直樹に教えて貰った。
その際に手に入れた『無能力者の奥義』はあまりにも桁違いの技であった。
悪魔の調理場
その足技には、弱火·中火·強火の三種類が存在し、そしてその炎の強さによってその技のバリエーションや強さが変わる。それに比例するように消費エネルギーも変わる。
もちろんハルトが灯したのは『強火』。
悪魔が化物を調理する為に発せられる炎。
いくぞ······!!
「"イグニッション„!!」
ハルトの足から発せられる炎の槍が天井に直撃した。
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『焦燥の塔』は真っ白な建物である。
そして、真っ赤な夕日に照らされて鮮やかな色に変わる、いわゆる『万色の塔』との異名を持つ塔である。
そんなロマンティックな異名を持つ塔なのだが、その詳細は一切明かされていない。
解明されていない。
かつて多くの科学者がこの塔の解明に勤しんだ。
しかし、鉄でも宇宙の暗黒物質でもなく、ましてや岩石ですらない。
どれだけ検証してもどんな化学式、単体でも化合物でも混合物でもない。
結果、結論は『解析不能』であった。
それはかつてアキヒトがレインボーを解析しようとした時と同じような結果。
全世界の科学者が匙を投げたその時。ある占い師がとある結果を見た。
その占いには『天地の甘い蜜、翼の生えた子供、輪っかを頭に付けた男女の姿』が見えていた。
人々はそこが天国だと思い付き、ある優秀な科学者達が旅立った。
一秒で一時間老ける山を越え。
人食い獣のはこびる森をぬけ。
何時間も歩き続けたその先には——————。
平地に君臨する恐ろしく巨大な樹とその先にあったポツンと建つ家だった。
唯一生き残ったのは当時二十歳であったが、若い科学者が帰ってきたときには六十歳を超えたような風貌をした見た彼らは息を飲んだ。
そして彼は語った。
『あの時、我々が見た家こそが我々が何十年も探し続けた素材に違いないと感じたのは一瞬だったよ』
『それほど美しかった。あれこそ神が創った存在だ』
皆は口々にどのような状態であったか?、や、どんな素材で出来ているのか?など言っていたのだが、男の返す回答は少なかった。
『あれに触った者が一人いたが、それを触った瞬間に干乾びた。恐らくあれは生きている』
『つまりあの塔にも同じような物が!?』
『いえ、それは私達も触っているためそのような事はない、と断言出来ます。私の予想では、天国という環境があのような現象に近い何かが起こったのではないかと思います』
『つまりあの塔は地球の環境によって、比較的安全な素材に移り変わったと······?』
『ええ、それかもしくはあの家を守る為に創られた存在である事です』
そして男は言い切った。
『あれは確かに【神】が創った物だと言い切れます』
そしてその塔は『世界保全遺産』と認定された。
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ハルトの放った炎の槍はくるぶし程度まで突き刺さった。
いける······!
光の兆しが見えてきたハルトは刺さっていない左足で天井を立って。
このまま右足に力を入れて引き抜こうとする。
ピシ、ピシ······とヒビが深くなっていき。
大きな音と共に天井の一部が崩れ落ちた。
その真下には——————。
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「はぁ······はぁ······」
二人は呼吸が荒がっていた。
すると——————
「おわああああああああ!?」
瓦礫が落ちてきた。
自分達に向けて。
これは、真正面の男と共にいたガキが起こしたのか!?
ウィッシュリストはパールを投げ捨て、ファイティングポーズをとる。
しかし、ここで私は止まるわけには行かぬのだ······!!······ここで、終わらせる!!
すると真正面の男も自分と同じ様にファイティングポーズをとる。
1対1
一瞬の戦い。
瓦礫の崩れ落ちる中、無音で一瞬の最中。
勝敗は決した。
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思ったよりも落ちるのは遅いんだな······。
崩れ落ちる瓦礫を伝って降りていくハルトはそう思った。
あまりにも遅く感じた時間の中に、何度も焦りを感じた中。
ハルトは一つの人影を見た。
そこには血だらけの山本が親指を立てて、こちらに笑みを見せた。
そんな彼を見て、ハルトも笑顔を見せた。
『焦燥の塔』第五階『甘獄』山本直希&ミヤタハルトVSキル·ウィッシュリスト
勝者山本直樹&ミヤタハルト




