EX.66 「隠し技」
吉田の能力『祈る者』で発動出来る存在は『万国不動の城壁』以外にも存在する。
しかし彼女は専ら『万国不動の城壁』しか使わない、何故ならその他の能力は扱いづらいからだ。
その扱いづらさには難易度が存在し、『神』の称号を受けた精霊魔は使う事が出来ない事も多々あるのだ。
しかし彼女は直感で一つの答えを掴んでいた。
この戦いでは必ず私の力が必要になると——————。
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カキン‼キンキンキンキン‼
二本の刀と一本の刀が交じりあう音がこの空間に響いた。
攻撃をされたら防御をし、隙が見えたら攻撃し防御されを何度も繰り返し、今では集中力の勝負となっていた。
たった一瞬でも気を抜いたら死ぬ——————そう考えたからだ。
だからこそユウスケは『時雨流』を使わない。
あの技の強力さは自分が一番分かっているが、あれは技が終わったあとの隙が長い。一発でも放てばその後にお陀仏だろう。
だからこそ型の無い剣技を使う。
他の者から見たら、剣技を重んじる者から見たら、何を馬鹿な事をしているのだ、と言及されたりするのだが。ここは実戦だ。型を重んじて死ぬのは尚馬鹿だろう。
そして少年は『時雨刀』を持って戦った。
「うおおおおおおおおお‼」
ユウスケは強く踏みしめて飛び出した。
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こいつ······やるな······!
鎌倉錦はユウスケの剣撃を受け止めながらそう考えた。
しかしまだ若輩、私の足元にも及ばん‼
錦は更に加速しユウスケの剣を圧倒した。
鎌倉錦は江戸時代に名を連ねた剣士である。
その剣は主を守り、主はその剣を守る。そう言う関係で強くなった。
しかし、当時『刀士』であった『40代目キング』リュウオウ·レオン·ハザァードとの一騎打ちにより、その際敗れ処刑された。
しかし、ダヴィンチ·アグラ·マルによって今時代に復活した。
彼には一時的な忠誠を認め、この『焦燥の塔』の侵入者である少年と戦っているが、時々自分とは何かを考える時がある。
私の生きた時代は既に終わっている、私という存在も時代と共になくなる筈なのだが······。
しかしそれは今考えるべきではない、集中すべきだ。私が敗北を喫したリュウオウに負けた時のように虚を撃つ者かもしれん。
しかし······まあ、この男もよく止めるな。私の『二段副魔流』にここまで食いつく者も稀だ。私もうずうずしてきたな······!
「もっとだ······もっと生きてくれよ少年‼私の全てを出すまでに‼」
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吉田は自分とその周りを『万国不動の城壁』で守り、考える時間を作った。
自分一人ならばこんな方法をとっても、あの剣士にはひとたまりもないだろう。
しかしこの場にはユウスケがいて、大概の攻撃を防いで、注目を立てている。
恐らく彼は今自分の行動を求めているだろう。
ならば応えるしかない。
「考えろ······」
私はそう呟いた。そしてその何十倍も頭の中で叫んだ。
考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ‼
頭の中にピカリと稲妻が走った。
例えるならば名探偵がトリックにひらめいたように。
そして考えついた答えは、相手が見た目通り古い人間だからこそ取れる方法。つまり、ただのコスプレなのならば気づかれてしまう作戦。
私は『祈る者』の第二能力『火神槌』を発動させた。
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目の前の骸の剣士から放たれる無数の剣撃から必死の思いで受け止めるが、それも時間の問題だ。
こちらが決めなければいけない。だが、失敗した時のリスクが恐ろしい。
そう言う考えで自分の選択肢が常に防御になっていた自分に、とある音が聞こえてきた。
甲高い、まるで鉄で鉄を叩くような音が。
カーンカーンカーンカンカーン!
カーンカンカーンカンカン!
カンカーンカーンカーン!
カンカンカーンカンカーン!
カンカーンカーンカーンカン!
カンカーンカーンカーン!
不規則に叩かれる金属の音。
しかし、そこには何かのリズムがあった。
カーンカーンカーンカンカーン!
カーンカンカーンカンカン!
カンカーンカーンカーン!
カンカンカーンカンカーン!
カンカーンカーンカーンカン!
カンカーンカーンカーン!
ちょっと待て······これは、何か知っているリズムだ。
あれは確か、6月の修学旅行の何かの軍船に乗った時の——————。
『これが通信手段だったんだな······ん、お前何やってんだ?』
あれは確かアキヒトの隣でカレンに抱きつかれながら吉田はメモしてたな······。
『暇だから暗記しようかと』
『暇だからって暗記するもんじゃねぇよ!?』
『ね〜ね〜それなぁ〜に?』
『貴方、日本語普通に読めるでしょう。さっさと読みなさい』
俺たちの班はいつものメンバーで集まっていたから、そこまで印象深くはなかったけど。
何故か覚えている。
この音は確か——————。
『モールス信号?』
そうだ······そうだった。これはモールス信号。吉田はこの音にメッセージを付けているに違いない!
それでも問題は俺にこれが読めるのか、という事なんだけど······。
誰かが俺の耳元に何かを囁いた。
カーンカーンカーンカンカーン!『す』
カーンカンカーンカンカン!『き』
カンカーンカーンカーン!『を』
カンカンカーンカンカーン!『み』
カンカーンカーンカーンカン!『せ』
カンカーンカーンカーン!『ろ』
『すきをみせろ』
今まで聞いたことのない人の声だったが、納得のいく答えであった。
ただ、隙を見せるなどしてどうするのだろうか······?
しかし、たとえそれでもそこからどうなるのかが分からない······だけど——————。
仲間を信じないのは駄目だろう——————‼
俺は本来押す筈だった刀をわざと引いて、右半身の防御を解き。どう考えても隙としか思えないような大きな空間を作った。
ただ、モーションは怪しまれないように相手の攻撃を防ぎきれなかったように。
ユウスケの仲間を信じた猿芝居を行われた最中、とある人物は作戦の完璧を、あるものは目の前の少年に敬意を評したトドメを指すために——————。
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鎌倉錦は突如して見えた彼の隙を見逃さなかった。
しかし、彼の動きを少しばかりストップさせたのは先程の金属をぶつけ合う音である。
先程の音は一体何なのだ······?何かの言伝なのか、それとも私の意識を逸らす為の虚空な音なのか······?
包帯を巻いた剣士はそれでも前に進んだままである。
およそ0.3秒——————それが鎌倉錦が考え、吉田優希が生み出した時間である。
彼が刀を少年に向けたその瞬間の隙を彼女は見逃さなかった。
彼女を護っていた『万国不動の城壁』の顔部分が崩れ落ち、人影が飛び出した。
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彼女の『火神槌』はオリジナルの能力ではない。
ただの本物から抽出された幻であり、分身である存在である。
それは『万国不動の城壁』も同等であり、彼女の能力『祈る者』で専ら使う技は偽物である。
しかし彼女はその尖ったパラメータであるその二つの能力を使っているのは、エネルギー消費が少ないから、である。
彼女の能力で作り出されるオリジナルは使うだけで、発動するだけで馬鹿高いエネルギーを消費する上、それを持続するエネルギーを彼女は持たない。
だからこそ彼女は忌避していたし、使うのは諦めていた。
しかし——————
「これは高つくわよ······!」
彼女からエメラルド色のオーラが吹き出し、彼女を纏った。
『希望を纏う祝福のベール』
その間に召喚した、リボンベールを纏った剣を——————ユウスケの背中を突き刺した。
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『不殺の剣』
彼女が召喚した剣には、『生物を殺さない制約』が与されていた。
ユウスケの背後から剣を突き刺し、まるで霧に突き刺すようにフワリと感覚がなく、そのまま深く刺していく。
しかし例外がある。
彼女の本来の能力は全てを自由にする事が出来る。
例えば、その剣の元々の力を反転させる事を——————。
——————『希望を纏う祝福のベール』‼『不殺の剣』の先端に剣の力を与えよ!
一瞬、エメラルド色のオーラが剣の先端を撫でて、再び実体化する。
そして、鎌倉錦の心臓を貫いた。
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二人の思考は叫激としか言えなかった。
片や一切痛みもなく、傷もなく身体を剣が貫通し、片やその剣が自分の心臓を貫いた。
まさに、規格外な攻撃が行われたのだ。
しかし鎌倉錦は既に骸。たとえ心臓が少し止まってもしばらくは動き続ける。
しかし、剣が消失し背中に重みが感じた瞬間、彼は動き出していた。
"時雨流攻式45の型„
「"神雨„‼」
光の速度で振り回された刀が鎌倉錦を襲った。
たとえ歴戦の戦士としても視覚が何個もバラバラになったのは初めてである。
鎌倉錦の身体は無数に切り刻まれ、多数の肉塊になった。
ユウスケは右腕の強い痙攣を気にせずに笑みを見せながら。
「これが俺たちだ」
そして、気絶した吉田を担ぎながら、
「セブン·ウォーリアーズを舐めるなよ」
『焦燥の塔』第二階『地獄』
津川侑介&吉田優希VS鎌倉錦
勝者 津川侑介&吉田優希




