EX.64 「八人の戦い」
なるほど······吸血鬼か······。
俺は銃を足元まで下げて、目の前の相手を見据える。
吸血鬼とは無敵と言うセリフよりも、十字架や聖水などに弱いという感覚が強いだろう。
だが、今持っているものは能力『銃士』によって生み出された愛銃一つのみ。それにただ実弾を使うだけだ。
でも、だからといって諦める理由がない。
「くっくっくっ······さあ、どんないたぶられ方がいいか?」
「あんた、どう見たって弱そうに見えるんだけどな······それに、人間の下につく存在だったけか?」
すると吸血鬼は笑いも怒りもせず、ただ顔に爪の長い手を添えて。
「フッ······笑い話にもならない。私は利用するだけだあの小賢しい人間をな」
『利用する』——————そんな言葉に俺は何度呪われた事だろう。
だけど、今は信頼出来る仲間達がいる。
だけど皆は何処にいるか分からない。
それもこれも全部あいつが何かを行ったから。
だから、あいつを倒したら何か突破口があるかも知れない。
「いくぞ······!」
「何をいっている貴様の戦いはもう終わっている」
「は······?」
そう言われた途端、俺の体の感覚が無くなった。
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「ここは······」
トランプに吸い込まれた後、吐き出された所は地獄のようにマグマや炎が橋を作っているような場所である。このまま鬼とかが現れたら本当にそう思うが流石に違うのは分かる。
「なあレインボー」
「はい?」
俺の耳元から鈴の音色のような声が聞こえたことで少しばかり安心する。どうやら妖精達も俺と同じ所に来ているらしい。
「ここは『焦燥の塔』で合っているのかな?」
「合ってると思いますよ。場所的に変わってません」
「そうか······つまりここは四階か······」
俺がそう断言出来たのにも理由があった。
『焦燥の塔』には六階まで存在し、その様々な階に名前がついている。
現代·地獄·天国の3ヶ所にさらに、煉獄·甘獄·虚無の3ヶ所が加される。
今言った順番に階層が変わるため、何階かは分かる。
「それにしても、暑いな······」
煉獄と言われるぶんものすごく暑いのだ。俺は手をパタパタと扇いで、自分を冷やそうとする。
「暑いですね······」
まさかの環境が敵になるとは思ってなかった為、耐火の服装をしていないのだ。
「レインボー、無理なら言ってくれよ。ぐったりされたら心配するから」
「それって遠回しなプロポーズですか?」
こいつまだまだいけそうだな。
取り敢えず上の階を目指そうとして階段を探そうとするのだが。
「すぅ〜〜〜〜まっしぁあああ‼」
俺の腹元に突然現れた巨体が突っ込んできた。
「うげぇ······」
そんな吐き気のする声を漏らしながら俺は吹き飛ぶ。
「アキヒト‼」
レインボーは間一髪で両手に挟み込んで護った。
「お前は······誰だ······!!」
「ムアッハアア〜‼俺の名前はエイドリアンだ‼能力『ダイアモンド』‼なあ『セブンウォーリアーズ』のリーダーよ。力比べをしようじゃあねぇか‼」
なんか色々とペラペラと話してくれたエイドリアン。こいつは恐らく最初のマジシャンと同じく——————敵か。
「ああ、分かった。打ちのめしてやるよ‼」
『焦燥の塔』第四階『煉獄』アキヒトVSエイドリアン。
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「熱っ······くねぇ!?」
俺、津川侑介の叫びを少し後ろに立っていた吉田が呆れた物言いで。
「いきなり体張ったボケをかましてくれたのはいいのだけれど。私、ツッコまないわよ」
俺はなみなみにつかれているマグマから右足を抜いて、弁論する。
「いやいや!これ、本当に熱くないんだって‼ほら、溶けてないじゃん‼」
「確かにね。それが貴方の能力か」
「違うわ‼もうちょい便利だわ‼」
キィィィィィィィィィィン‼
そんなふうに飛んできた斬撃を吉田が『万国不動の防壁』で受け止める。俺は少し前にこいつでタコ殴りにされたのでちょっとばかし冷や汗をかく。
「いるわよ」
「ああ」
カシャン、カシャン。
カシャン、カシャン、カシャン。
カタッ、カタッ、カタッカタッカタッ。
タタタタタタタタタタタタタタタタタタタ——————タッ。
「くっ······」
骸骨の剣士が長い足音と共に現れて、何も言わぬ言わさぬの態度で攻撃してきた。
今回ばかしは『万国不動の防壁』で守る時間がなかった。
早すぎたのだ。
この階は半径五十km、そう考えても最初に聞いたのはかなり薄く聞こえたのだ。
なのにものの数秒で俺たちの場所までたどり着き、俺に攻撃を与えている。
「危ないな······」
「ちょっとの油断が命取りでござるよ」
『焦燥の塔』第二階『地獄』津川侑介&吉田優希VS鎌倉錦。
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「ふむふむふふふふふふふ‼お前の十八番である『空圧拳』を受け止めてやったぞ‼」
「チッ······ちょっと止めただけでいきがりやがって······‼」
「それでも止めたのは事実ですから気をつけてくださいね」
「分かっているよ」
相手の姿は全身パール姿で唯一地肌が見えているところでも他のパールの部分で受け止めてくるため実にややっこしい。
実際『空圧拳』を撃って止められたのでこれは少し頭を回さなければいけないだろう。
「ハルト」
「はい」
「炎は灯しておけよ。いつ、使いようになるか分からねぇからな」
「分かりました」
珍しく口数の少ないハルトだが、これは緊張している様子。俺が漢を見せなくては。
「さて······いくぞ‼」
『焦燥の塔』第五階『甘獄』山本直希&ミヤタハルトVSキル·ウィッシュリスト。
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「はぁ〜ここが天国かぁ〜いつかこんな所に住めるといいなぁ······いや、アキヒトくんと一緒に住むのなら何処でも天国なのでは‼」
独自の思考回路でトランプから放り出されたときのショックがあらかた消し飛んでいた。
「だけどなぁ〜こんなヒステリックな女と出来るだけ長くいたくないなぁ」
「それは私も同じ考えね。さっ、殺し合いましょう」
長い髪に散り散りと別れた髪型にまさに絵に描いたヒステリックな風貌で殺し合いなど言うのなら本物のヒステリックだろう。
私は速攻魔法である『キラメラ』を取り敢えず十発程用意して、相手を務める。
『焦燥の塔』第三階『天国』余島カレンVSサステイナブル·アクサード。
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「ここは······」
アスナの目と鼻の先に現れたのは、真っ白な世界にずらずらと並べられた機械であった。
そして、さらに遠くを見ると。
ゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボ。
液体に密閉された機械の中に女性が入っていた。
「なんで······‼あっもしかして‼」
「その『もしかして』だよお嬢さん」
そこには白衣姿の無精髭の男性が現れた。
「彼女はね『ミラ様』がご用意してくださったモルモットだよ」
「許せない······!」
私は剣を引き抜く。
それに反応したように白衣の男性は合計六つの注射器を取り出す。
「光栄だね······!モルモットが二体に増えるなんて」
『焦燥の塔』第六階『虚無』星空明日菜VSダヴィンチ·アグラ·マル。
各階の衝突が始まる。




