EX.63 「焦燥の塔」
『焦燥の塔』——————その最上階に一人の女性が座っていた。
その目に光は無く、ただ絶望だけに打ちのめされたのが見てわかるような姿をしていた。
そして、彼女の下に一人の男性がニヤニヤと笑いを浮かべならがら近づく。
「さあ、実験の続きだ」
ああ、私はもう······助からないのか······。
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ここは王宮、『王の大広間』。
そこにはアキヒト率いる『セブンウォーリアーズ』がこの場に集まっていた。
「まあ、今から君たちには『焦燥の塔』に向かってほしいんだ」
「いきなり過ぎて俺達どころか、読者も原作者もついていけてないんだけど」
「いや原作者がついていけなかったら駄目だろ」
俺はあれから何度もここに行っている為、特に目新しく無いのだが周りの皆は流石に驚いている。
「なんでお前は当たり前のように話してんだよ!?キングだぞ!キング‼」
「え?お前知らなかったの?」
そう興奮して話すユウスケに俺はその真逆な対応——————詳しく言うと冷静な対応で言った。
「こっここまで来ると驚きを隠せずにいられないわね······」
そう冷静な口調で言う、矛盾女の隣でカレンがアウアウしながら。
「こっここが、『王宮』!?始めてきた‼」
普通来てたら驚くよ。俺が言える立場じゃないけど。
「·····················‼」
ハルトは一応二度目なのだが未だにビクビクしている。
「ん?それなんだ?」
「ああ、これは『反重力装置』を造ろうとしてるんだけど。結構難しいかな」
「なるほど」
そう会話を続けてまるでなんの応えもしていないように見えている二人。だが、俺は知っている。二人の頬に冷や汗があって、それを誤魔化すように井戸端会議を始めようとしている事を。
そんな十人十色な光景を見て、ソウマ·レオン·ハザァードはくすりと笑って。
「彼ら彼女らが君の仲間なんだね。結構楽しそうじゃないか」
「確かにね。見てて飽きない仲間だよ」
俺達はそんな会話をする。
そして、ソウマはおほん!と咳払いをして、皆の視点を一つに定める。
「実はな、『焦燥の塔』に良からぬ人影が見つかってね。そして、その数分前にある一人の女性が消息を絶った······この意味は分かるかい?」
「ああ······分かっているよ」
つまり、『焦燥の塔』を根城に誘拐事件が起こっている事だ。だが——————
「あそこは重要文化財だろ?そんな所に無断侵入出来るのかよ?」
「あそこは見た目に反して中身の体積があまりにも大きすぎるからね。一度入ったら見つけ出すのは苦労さ······それに、僕が行こうと思ったが力加減が難しくてね。最悪壊れてしまう」
「あの······すみません」
岡田は手を挙げて、質問をする。
「『焦燥の塔』って実際どのくらいの大きさなのですか?」
すると、「ふむ······」と少しばかり悩んだ様子見せたが、答えはすぐに教えてくれた。
「『焦燥の塔』は六階の塔。そして段階的に大きさが小さくなっていくんだ。そして答えを言うと一階が半径百km、二階が半径五十kmになっていくらしい。もっとも最上階でも半径五kmぐらいあるらしいよ」
一階がものすごく大きくて、最上階が圧倒的に小さいのか。
俺はキッと力が籠もった所を見てソウマは両手を振って。
「そこまでは気を張らなくて良いと思うよ。ただ、最低限の装備さえしてくれれば大丈夫だとは思うから」
「そうか······それと···」
「お金なら振り込んどくから安心しておいてくれ。キングの頼み事だ楽しみにしておいてくれ」
そう言って有耶無耶にされたが、そこまで急かす必要はないかと言わなかったことにする。
「じゃあ、頼んだよ」
「ああ、承った」
俺達は俺の言葉が終わってから、『王宮』を出ていった。
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七人の後ろ姿を見て、僕は少しばかり眉間を突く。
「言わないのかい?あの事を」
そこにかぐやさんが現れた。
「言っても仕方ないですよ。貴方の予言からはもう一週間も残ってないのですから」
「そうか······まあ、不吉の予言じゃあないから別に良いけどね」
そう言って、かぐやさんは後ろを軽く振り向く。
そこには小さくなっていく彼らの後ろ姿があった。
「彼らは強くなるね」
「え······?」
彼女がそう褒めるのは久し振りだった。何故ならいつも夫であるレオン·ハザァードと比べるからだ。
「集団ってのは個人を腐らせるものだが、彼らは違うとボクは感じるよ。彼らは彼らに信念も、個性もある。きっと、もっと強くなる」
「大きな起爆剤も貰ったことだしね」
「それは······」
「ガオウくんに敗北した事だよ」
そう言ってかぐやさんは両手を大きく広げて。
「敗北は蜜の味だ······何故なら自分の間違いに気づけるからね。そして、一度挫折しかけた心を彼は奮い立たせた。そこからは登ってくさ。度重なる敗北を混ぜてね」
それは幻想でも、事実ではなく。『願い』だった。
彼女の顔は太陽に反射して、見えなかった。
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あれから数十分後。
「なんでここにアスナがいるのかなぁ〜‼」
カレンの激昂を前に俺は飄々とした態度で。
「いや······電話したら『行く』って言われて」
そう言うとケラケラと方でを電話の形にして笑うアスナ。
むき〜!と飛びつくカレンを見て、俺はカレンと同じく不機嫌そうな吉田を見て。
「何があったんだ?」
「殺すわよ」
「ひっ!」
「頓死しなさい」
「怖いって‼」
「捻り潰してあげるわ」
「まぁまぁまぁまぁ‼落ち着こうか」
袖を捲くって殴りかかる態勢をとった吉田を見て俺は慄くが、その様子をユウスケは止めてくれた。
「そろそろ行くぞ〜!」
遠い所で『焦燥の塔』のドアを開けていた三人の内に岡田が俺達を呼ぶ。
俺達はその言葉に誘われて中に入る。
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「うおっ······!」
入った中には大草原や森や川がずらりと広がっていて、心地の良い所だった。
だが——————
「ホホホ、『セブンウォーリアーズ』の方々ではありませんか」
「有名なのか?だったらうれしいんだけど」
そこにはマジシャン姿の紳士がいた。
「いやいやご謙遜を。貴方がたは魔王を殺した人物ではありませんか」
シルクハットをポンと叩いて、六枚のカードを取り出す。
「?」
「!?気をつけろ皆‼」
真っ先に気づいた岡田が皆に危険信号を出すが、少しばかり遅かった俺達は逃げられなかった。
俺達は拡大されたカードに吸い込まれた。
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フッ······と吸い込まれていったアキヒト達を見て、俺は何も出来なかった。
ようやく逃げられたのは自分一人だけ。
俺は懐から愛銃を取り出して、紳士に向けた。
「何をした······殺すぞエセマジシャン‼」
「誰がエセマジシャンですか······私は——————ヴァンパイアですよ」
マジシャン姿の紳士——————もとい、ヴァンパイアが急高速で飛び出してきた。
アキヒト達が今何処にいるのかは分からない······だけど、今出来る事を俺はやるだけだ。
俺は愛銃の引き金を引いた。




