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アキヒトバトルアドベンジャーズ  作者: モフきのこ
第1章 『出会いと別れの一年間』
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EX.61 「看病」

「はぁ······」


 終業式が終わって夏休みが始まって初日、俺は風邪をひいていた。


 情けないし、実際あの力で治せるんじゃないのか?と思うのだけど、そうはいかない。


 そこまでは機能してくれないらしい。まあそれでもガンや心臓病などはしっかりと治してくれる辺り、気分と重大さで変わっているのではないかと疑問になる事もある。


「くっ···そ······」


 俺から荒い呼吸をしているのが薄い感覚でも分かる。


 頭が熱くてふらふらする。でも、眠れないのが不思議なくらいだ。


 表情をちょっと変えるだけが限界で指先もほぼ動かない状態。最近風邪なんかひかなかった結果がこれだ。


 免疫力が弱まったらこうなるって聞いたけど、ここまでとは······。


 レインボーは「おかゆ作ってきます‼」と言って、飛び出して行った。しばらくした後、「熱っああああ‼」という叫び声がして、動きたくとも動けない俺は飛び出す事が出来なくて、レインボーの安否が気になる所だ。


 俺がここまで思考が回せるのがずっとレインボーが看病してくれたおかげなので、本当に心配だ。


 するとコンコンとノックの音が鳴って、俺がようやくの思いで「どうぞ」を言い切って、出てきたのは——————。


「どもども〜!元気元気!?大丈夫でしょうか?お姉ちゃん気になるなぁ〜」


 そこから現れた人物は病人に対する気遣いなく、ドタドタと現れた。


 髪は黒とオレンジのミックス、長さはロング、白いワンピースを着た女性であった。


 でも、まあこの女性を一言で表すと『キャラ崩壊した存在』とかが似合うだろう。もしかしたら、今ここで作者が考えた適当のキャラ······おっと間違えたテキトーのキャラ。


「いやいやぁ〜アキヒトくん‼元気じゃないみたいだね!お姉ちゃん心配だよぉ〜。さっきなんか妖精ちゃんが女の子に冷やされてたんだけど何かあったのかな?」


 どうやらレインボーは無事らしい······いや、無事だとは言えないか······。


「······だれ···ですか······?」


 俺があうあうととぎれとぎれに放った言葉に彼女は「ん〜と」と顎に人差し指に乗せて考え、すると思いついたようにバッ!とポーズをとって。


「私の名前はアレン‼傍若無人な人間さ!」


 傍若無人の意味を知っているのだろうか、と俺は思ったが後半は聞かなかったことにする。


 すると、既にぬるくなっているタオルを外して手をのける。彼女の手は冷たくて気持ちよかった。


「うわぁ〜あっついねぇ〜薬のんだ?」


「いえ······まだ······」


 本来ならハルトがしっかりと病人に食べられるご飯を用意してくれるのだが、本日は学校の準備が残っているらしく登校している。


 スズは明日予定があるらしく、風邪をひかれたら困るので俺から止めてくれと頼んだ。そこで、レインボーが看病してくれたのだが、本人は今現在冷やされているらしい。


 ご飯なぞ食べれるわけがなく、薬も飲めなかった。


 すると、彼女は腕を捲くって。


「このお姉ちゃんに任せなさい‼しっかりとしたお粥を食べさせてあげるわよ‼」


 なんて心配な提案なのだろう。しかもハルトが許してくれるのだろうか。


「ハルトくんに許可は貰ってあるから、さあレッツゴー‼」


 レッツゴーの部分が異様に流暢だったが、気にしないでおこう。


 @@@@@


 小さなお椀と同じく小さな釜を持ってきた。


 彼女は釜の蓋を開くと、そこにはきれいなご飯があった。


 綺麗に光り輝いている米粒が。


「ほら、食べようか······あれ?もしかして動けない?」


 はい、そのとおりです。


 すると、彼女は俺の背中辺りをもぞもぞと動かして「よいしょぉ‼」という掛け声と共に俺の背中を押して支える。


「全く世話が焼けるなぁ〜アキヒトくんは。まあ、可愛い所だけどね」


 そう言って、掬ったご飯を俺の唇まで近づける。


「もしかして、口も動きませるまでは言わないよね?その時は君の地球でのハジメテを貰わないといけないけど」


「食べられ······ますよ······」


「そうかそうか!それじゃあ、あ〜ん!」


「あ〜ん、うぐっ」


 ふ〜ふ〜はされているのだが、それでも熱かった。


 それでもぎりぎりまで食べて、薬も飲ませてもらった。


「ありがと······ございます······」


「別に感謝なんてどうでもいいさ‼ほら、さっさと寝た!手を握ってあげるから」


 許可無しに握ってきたが、それはそれで有難かった。


 繋いだ手から熱が吸い取られていって、同時に眠気が訪れた。


 スゥ〜と意識が失っていく最中、俺はもう一度彼女を見た。


 ······あれ?『アレン』?


 ———彼女は「う〜ん」と顎に人差し指を乗せて考え


 ———レッツゴーの部分が異様に流暢だったが


 ちょっと待って、これってもしかして······


 俺は意識を失った。


 なんだ夢か······


 俺はそう決めつけた。


 @@@@@


「あっ、やっと起きた‼」


 俺が目覚めた先にはカレンがいた。


 俺は彼女に手を握ったまま、寝ていたのか。


「まったく〜来た途端手を握ってくるもんだから驚いたからね‼」


 するとぷんぷんと頬を膨らめて怒ったふりをしていて、それでいても嬉しそうだ。


「そう言えば、レインボーちゃんが冷えピタ全身巻かれていたけどどうしたの?」


 ん·········?


「夢じゃなかったのか······?」


 いや、だったらアレンさんは······。


「夢······?」


「ん······アレンっていう人に看病された夢を見たんだ」


 俺にしては珍しく素直に言ったような気がする。あの人とカレンが少し似ていたからなのかな。


 すると、カレンは唇を触って。


「それは······夢じゃないかもね」


 と、意味深と言った。


 俺は考えないようにして、もう一度眠るようにした。


 彼女の手を握って。





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