EX.59 「魔王会議(前編)」
雷が轟々と轟く。
分厚い黒雲が空を覆い、世界は真っ暗になっている。
ここは『魔神街』。
そして、更にその中心『魔王城』666階。
そこには、たった6人しか存在しない魔王が集結していた。
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円卓の騎士ならぬ悪魔の円卓。
今現在この場に座っているのは4名。
無邪気に笑う、少年の姿をした者は。能力不明、『撲滅の魔王』デトロス·アヴェイン。
扇子のような物で自分を仰いでいる、紫髪で長髪の者は。能力不明、『情慾の魔王』アンドロイド·メッセンジャー。
寝間着のような姿でくかくかと眠りにこけている者は。能力不明、『籠絡の魔王』クラリス·ネロ。
ぶかぶかのフードを被って、ずっとニヤニヤしているのは。能力不明、『怪異の魔王』ミステイク·オールワン。
今はもう存在しないのは、最近まで空白の席に在席していた『財各の魔王』コルキス·セルロイス。
「しっしっし〜それにしても、あの豚は死んだかぁ〜」
そんな風に話すデトロスにアンドロイドは仕方なしと言わんばかりにその会話に参加する。
「仕方ないだろう。あの男は財政の力は強かったから、そして当時ちょうど空席になったから入れただけだ。死ぬのもやむなしだろう」
すると、パチンと鼻提灯を割ってクラリスはまるで全てを悟ったように、感嘆なく話す。
「そうだね。あの豚は実力は最低値だったからね。それにいつだって『死』の席に入る魔王はすぐ消えちゃうよ」
ドガン‼と机が半壊する。アンドロイドは気にも止めず「また替えが必要ですね」と呟く。
「あの野郎······毎回毎回遅刻しやがってよぉ‼気ぃ弛んでんじゃねぇだろうなぁ‼」
そう言って憤りを見せるミステイク、彼は何重人格もあり、今はヤンキー口調の人格になっているらしい。
「僕的には、またあの人この会議に参加しないつもりなんじゃない?だってこの前も事後の話だけ聞いていったんだっけ?」
「ふむ······まあ、そうですね。あの方は少々おかしい所があるが、力こそ我々さえ慄く所がある。それに——————」
「ああ‼どこが慄いてんだよ‼俺様はなあ······あの野郎の命が狙われる瞬間を狙ってんだよ‼」
「諦めた方がいいんじゃなぁ〜い?最悪僕っちたちが束になっても勝てないような気がするんだけど?」
すると、ドガン‼と再び机を叩く音がして、ガラガラと今度こそ机が壊れる。
「黙れ。貴様等」
「おうおう、臨戦態勢か?受けて立つぜなよなよ野郎‼」
「殺るなら、殺っちゃうよぉ〜。まあ、どっちでもいいけどさ?どうしたい?」
「煩いな······」
そこには、悠々とコツコツ音を鳴らして歩いてくる人影があった。
魔王の四人は臨戦態勢を解いて、ある一つの驚異にどう対処するか頭を回す。
先程まで、何一つ感知しなかったのだ。彼から発される殺気も悪意もその闘気も何一つ気づくことも出来なかったのだ。
彼等には隠密スキルを持っている能力者でも感知することが出来る『第六感』が存在する。たとえノミほど気配を消していただろうと気づかないわけがない。
しかし、『最強』——————その異名を衰える事もせず、ただの一度も強張らせず。ただの一度も狂気なる姿を見ることもない孤高の魔王。
長い黒のロングコートを身にまとい、長めの前髪に少しばかり目が隠れ表情こそは少しばかりしか見えない男。
名前不明、年齢不詳、能力不明、体重不明、身長不明、もっぱら銃を使う所を見られる事が多いらしい。そんな不明瞭な中で唯一はっきりしているのは——————。
この中で最も強いということ。
「さあ、話を始めようか」
単調に端的に始められた言葉に四人は戦闘の意思を壊された——————訳でもなく。
「「「「殺す」」」」
「ちょぉぉぉと、待ってくださァァァァい‼」
すると、最強の足元から氷山が作られる。
「?」
最強は少しばかり怪訝な顔をするが、特に気に触った様子をしたわけじゃなかった。
飛び出した四人が生まれた氷山を容易く壊し、強い爆破音がなって砂煙があがる。
しかし、そこには四人の全力の一撃をたかが四本の指で止める最強の姿があった。
「貴様ァ······」
「弱いんだよ、お前らの攻撃は」
すると、ミステイクは軽く舌打ちをして砕いた氷をぶん投げて。
「誰だてめぇ‼」
おおっと、という声がした方向には若々しい顔をした青年がいた。
「実は今から推薦したい人物がいまして······」
「推薦······だと······?」
そうアンドロイドは片眉を上げて、疑問を向ける。
「ええ、これから行われる『空白の魔王の穴埋めの会議』に最も最有力な人物を紹介いたそうと思いまして、はるばるここまで来た所存でございます」
「貴様······もしかして、そんなものの為に会議を!?」
「そうだ、悪いか?どうせ誰かが勝手に新たな魔王なんて作ったら、お前らが潰しに来るだろう?だったら全員で決めれば良いだろう」
「ちっ、無駄に正論立てやがって」
「それで······貴様は誰で、誰を推薦するんだ?」
そう言って、彼は微笑を浮かべて。
「私の名前はソーラ·バスタードでございます······そして、私が推薦したいのが——————」
「ガオウ様でございます」
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とある部屋の中。
「くっくっくっ······ここまで教えても懲りずに理解しないお前にはオシオキが必要みたいだなぁ」
「だめっ、だめだよアキヒトくん‼まだ、私達そんな関係じゃ、ないじゃない‼」
そう言って抵抗するも、男の力に負けて押し倒される。
「そんな事は言いつつもお前の身体は期待してるんじゃないのか?ほら、こんなに興奮して······」
「あっ······ん···だめっ······」
そうして二人、餡蜜の時を過ごす——————。
訳でもなく。
「ここは因数分解したほうが結局の所簡単でそこから——————」
はい、これが現実です。
悪いですか?私だって思春期なんですよ。えっちなことにも多少なりとも興味があるんです。
だけど、結局現実はこれですよ。期待はそこそこしかしてませんけど、最初はどぎまぎしてたけど今となっては無心でやられてるから罪悪感が······!
ちなみに、アキヒトくんの後ろにはユーちゃんがいて——————
押し倒せ、ヤレ、そして既成事実を作るのだ。
無理ですよ。いきなりハードルが高すぎます。
「それにしても、教えるの上手いね。分かりやすい」
「そうか······?」
素っ気なく言われたが、顔を見ると嬉しそうな表情をしている。どうやら、これは褒め殺しが効きそうなタイプだな。
すると、ピピピピピピピピピ‼とアラーム音が鳴って、二回目の休憩時間が来たようだ。
私は後ろからふわりと倒れていって。
「うわ〜疲れたぁ〜」
「お疲れ様。まあ、あと一時間だから頑張ってくれ」
「?でも、一応数学と国語は終わらせたじゃない?誰が社会を教えるの?ちょっとなんで目を逸らすのユーちゃん」
すると、何故かずっと無言で意思疎通を行っていたユーちゃんが真っ青になって、私から目を逸らす。
すると、アキヒトくんはふっふっふっ······と私の想像と同じように笑って。
「お前の社会を教えてもらうのはな······」
すると、まるでタイミングを測ったかのようにインターホンが鳴って、それに家主である私ではなく、アキヒトくんが出た。
そこから来たのは——————。
「ふっ······じゃあ残り一時間頑張ろうか?カレンちゃん」
「イヤアアアアアアア‼教えて欲しくないぃぃぃぃい‼」
そこから現れたのは星空明日菜、アキヒトくんの元カノな人間だ。
「我慢しろカレン。流石に俺にとっては社会は暗記科目でな、教えることができないんだよ」
「でっでも、ユーちゃんは!?」
「··················」
さっきから何一つ喋らないなこの人!
「じゃあ、始めましょうか」
「やだァァァァァァ‼」
こうして一時間、みっちりしごかれた私だった。




