EX.58 「繋ぎ」
あれからもう三日が経って、ようやく落ち着いた感じになっている。
結局の所あの人とは締結のような状態となって、一応報酬を付けて英雄と同じ扱いとなっている。
『一応だが、たまには来てくれないか?ヒメがな······ちょっと、手がつけられないから······』
現在キングでさえ手がつけられない王妃マジ半端ないっす‼
まあそんな小ネタは置いておいて、そう言われなくともいつかは行こうと思っていた所なのでもちろん俺も納得した。
ちなみにあの後の出来事なのだが、重箱のように作られた弁当二つを死ぬ気で食べて、苦笑いするハルトと未だに大泣きするスズを前に笑顔を見せた。
嬉しかったのだ、皆がこんなに自分の事を考えてくれていた事に———。
そうして俺は『アキヒト·レオン·ハザァード』ではなく『ミヤタアキヒト』として、ここにして第二の人生を歩んだのだ。
さて、俺はどんな英雄になるのだろうか?
俺達の戦いはこれからだ‼······なんて、そんな事は未来の俺にいつか聞いておくにして、そろそろもっと深く考えておくとしよう。
カミングスーン‼
それでは本編に向かおうか。
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ピンポーン!ともう既に10年聞きつづけた我が家のインターホンのチャイム音を聞くが早いか、俺は扉に進んだ。
なんか頼んだっけ······?
いや、それはないだろうたとえ買い物でも全部持って帰るものだ、それにそんな大きな買い物をした覚えがない。
だったら······。
「アキヒトくん······‼」
俺が開けた扉から、カレンが飛び出してきた。
「私も止めたんだけど、聞かなくてね······」
そこには既にげっそりしている吉田がいた。
「鈴音ちゃんから、メールを受け取ってから血相を変えてね、何を書いていたのか気になったのだけど、即外着に着替えて走り出したから私も危なかったわよ」
「すまん······」
俺は未だにぎゅっと俺に抱きついているカレンの頭を撫でて、簡潔に伝えてくれた吉田に少しばかり謝る。
ふと、後ろを見てみると。
「お兄ちゃんモテモテだねぇ〜」
って言ってにまにまと顔を歪めるうちの妹がいた。そう言いながら抱きついくるのは確信犯だろう。
「あなたも大変ね······」
「ははは······」
俺はから笑いするしかなかった——————すると、
「アキヒトくん······だめだよ、勝手にいなくなっちゃ······だめだよ······」
カレンの声は震えていた。
俺は——————
「俺は······もう、どこにもいかないよ······約束する。絶対に······」
そんな言葉を繋いだ。
そんな言葉を返した。
捻じれ、壊れ、そして繋がっていく。
いつか壊れるであろう約束も意地にでも繋がせていく。
······そんなもので、きっと日常も現実も戻っていくのだろう。
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そして、俺達は普通の日常で学校のテストがあったりと、もう六月が過ぎていった。
七月、その半分が夏休みとなる変化の季節、夏を迎える為の助走期間。
「ぐぬぬぅ······」
俺はそんな中、少しばかり唸っていた。
普通だったら夏休みの予定でなにかしらがやがやしている教室もシーンとしている。
テストが返ってきたのだ。
そして俺は数学の点数が落ちたのだ。
まだ直せる範囲内で、しばらくの連戦の問題で勉強が少なからず出来なかったことが問題だったのだろう。
まあ、国語などの教科は変わらなかった為数学の減点部分が浮き彫りになったのだ。
はぁ······とため息をついて、テスト用紙を二つ折りにしてファイルに入れる。
「なあどうだったんだ?」
「数学が5点下がった」
お答えしよう、俺の元の点数は満点だったのだ。
フッフッフッ······同情は余りいらないのだ。
「あっそ」
何故か珍しく、そして呆気なく去っていったユウスケ(恐らく点数が少なかったのだろう)の悲しい背中を見て。
俺は既に真っ青になっているカレンを見た。
「なっなななななな何でもないよ‼別に点数が悪かったんじゃ無いけどね‼」
何も言ってないのに言い出した。
「吉田」
「はっ‼」
まるで忍者のようにサッと現れた吉田に羽交い締めされ、カレンはわあ、わあと叫ぶ。
「ちょっ、ちょっと待って‼何で捕まえるの!?ユーちゃん止めて‼」
「残念ねカレン。私もあなたの点数は気になるのよ」
俺はガシッとテスト用紙を持っている腕を捕まえて———
「にゃ!?」
バシッと取り上げる。
なんか声が聞こえたが今は良いだろう。
俺はカレンのテストを見た。
「?」
理科92点、英語なんかはまさかの100点だ。なぜそんなに抵抗するのかと思ったら。
「うわっ······」
国語52点、数学45点、そして社会は———
「38点······だと······」
俺からそんな声を聞こえたのか吉田は目を丸くして、ある決意をした顔を俺に向ける。
ああ······分かってる······
「勉強会決定だ‼」
「いやぁああああ‼」
そんな断末魔がカレンから聞こえた。
@@@@@
俺はなんて過ちを······
夏休みではなく、夏休み少し前の土曜日。俺はカレンの住んでいるマンションの部屋の前にいた。
あの時は確かにああは言ったものの、俺は女子の家に行ったことはないのだ。
俺は深呼吸をしてインターホンを押す——————すると、
「はぁ〜い!」
そこからは部屋着のカレンが現れた。
少しばかりの緊張の中。
勉強会が始まる。




