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アキヒトバトルアドベンジャーズ  作者: モフきのこ
第1章 『出会いと別れの一年間』
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EX.55 「父親」

 夜、病院内にて——————


「と言う訳なんで、6月22日に退院することになったから」


『了解‼その日はお兄ちゃんの誕生日なんだから絶対にすぐ帰ってくること‼絶対だからね‼』


「ははは、分かったよ」


 電話の相手はもちろん俺の愛すべき妹、鈴音さんである。あれ以来、宮田家男子二名が一切電話を掛けなかった問題で、ちょうどこういう話をする為に俺が電話をした際泣き声が聞こえて、やべっ、と思い誠心誠意彼女を泣き止ませて、今こんな話をしているのだ。


 親からのリンチ覚悟で慰めていたが、どうやらそこまで気にはしていないらしく(どうやらかぐやさんが話したらしい)のんびりとお茶を啜っていたらしい。まあ親父はアメリカにいるのだが······


『とびっきりの用意するからね‼なんせお兄ちゃんが15歳なんだからその記念だよ‼』


「おお!ありがとう‼」


 なんの記念かは分からないのだが、祝ってもらうになんの文句も出さないだろう。


『じゃっ、おやすみぃ〜』


「はい、おやすみ」


 妹との電話が終わった辺りから、病院内で就寝のチャイムが流れてきた。ここの病院は就寝時間に厳しいのでそそくさ俺は部屋に戻って寝る態勢をとる。


 ふと、俺は右腕を見る。


 新しく生まれ変わった腕だ。


 まあこれは比喩的表現なのだが、実際新しく成長した腕と言った方が正しいのか······


 あの後、別に違和感も後遺症的な物もなく、ただ俺の一部となったような感じになっている。


 俺の一部か······


「本物に怒られそうだな······」


 そんな俺の言葉は宙に乗ってどこかに飛んでいった。


 @@@@@


 三日間の入院期間(と呼べるかどうか分からないが)が終わり、俺は自宅に戻っていった。


 皆が皆、家族に心配をかけたらしく(約三名以外)そそくさと帰っていった。


 ちなみにユウスケからは誕生日プレゼントとしてソフトクリーム奢って貰った、カレンは「絶対凄いもの買うから‼」と言われ流石にやんわりと断った。その後ピンドメを贈られてちょっとだけ困ったアキヒトくんであった。


「ただいまぁ〜」


「お帰り」


 俺を迎えたのは既に一月前に14歳になった俺の妹でも、今日の為に俺の好物を作りまくると息巻いていたハルトでもなく、大人な男性であった。


「あれ?親父」


 その姿は親父——————宮田直樹であった。


 俺の親父はアメリカに単身赴任している剛角で厳格な人間だ。


 彼自身が英雄を引退しているのではあるが、名前自体は残っていたり、時折母さんが酔いながら親父の伝説を語ったり、実際ニュースなどに出ている為毎回毎回渋い顔をしたら良いのだか、誇らしい顔をしたら良いのか困っているのだが······


 実際、親父の伝説がドラマになった瞬間、マジか!?とも思った。


 まあ、もちろん俺の義理の親であり、本当の親ではない。それでも、母さん並に尊敬しているのは確かだ。


「随分無茶な事をしたんだそうな?随分鈴音は心配してたぞ」


「はい······深く反省しています」


 傷口に塩を塗るとはまさにこのことだ。俺の場合は塞がったと思っていた傷をほじくり出した上で塩を塗られた感じだが。


「それはそうと15歳の誕生日おめでとう」


「あっ、ありがとうございます」


 今!?とは思ったが親父は不器用なので、これくらいの事が限界なのだろう——————珍しく酔う時は凄いものなのだが······


 すると、俺はふと気づく。


「あれ?親父ってこの日も仕事じゃなかったっけ?」


「む······とある事情で数日有給貰ってな、しばらくはここにいる予定だ」


「へぇ······スズが喜ぶな」


「そうかな······」


 ん······どうしたんだろう。確かに無口な部分もあるのだが、言葉をつまらすのは久々に見た。


「そんな事よりも鈴音も部屋に居させているが、お前も早く部屋に戻った方が良い」


「?何で?俺は祝われる気満々何だけど」


「いや、まあそんな事は今は考えないほうが良い。早く部屋に戻っとけ」


「ん?何か怒ってない?」


 すると親父の後ろ辺りからざわざわとしている。


 ん?どうしたんだろう、と思ったが答えは真っ先に訪れた。


 金髪の女性が俺にタックルしてきたのだ。


 @@@@@


 俺は一瞬死を覚悟した。


 そのくらいの一撃だったからだ。


 結果から言えば、即座に反応した親父が能力を使って靴箱に突っ込もうとしていた俺の体を瞬時に自らの手元に引き寄せた。


『無次元』——————それが、宮田直樹の能力だ。


 この能力はアスナの『二次元』の能力覚醒種であり、ゼロの状態から『次元』を作り出して、その空間を操る事が出来る能力である。


 親父はもっぱら、その能力発動の際に生まれる黒い靄のような物を使って遠距離技や力を強化など、様々な用途でつかっている。


 まあ、今はそんな事は置いておいて。


「アキヒト‼アキヒト‼アキヒトォォォ‼会いたかったよ〜‼うええええええん‼何でいなくなっちゃったのぉ〜」


 目の前で金髪の美女が俺に抱きついて泣いているのだ。しかもセリフがちょっとレインボーっぽい。


「私はそこまでじゃないですよ‼愛情はそれ以上ですが」


 いや、多分だけど両方とも凄いよ。


 親父はこの光景にあほうけているし、どうすればいいんだ······?


「こらぁ!あんたは黙って簀巻きにされときなさい‼」


「嫌だァァァァ‼お姉さまぁぁあ‼止めてぇぇぇぇ‼母子の対面じゃない‼」


「だからこそよ‼ほら、ひつ爺も手伝って‼」


「む······分かりました」


「ちょっと待ってひつ爺‼」


「これ以上恥を出すのを止めてください姫様」


 俺は······この人達を知ってる。


 知りすぎていた。


 だけど、もう何年を出会っていない人達だ。


「おいおい、お前達元気じゃないか。でも、暴れ過ぎるのも良くないぞ?」


「でも‼今、目の前にいるじゃない‼今まで埋めれなかった溝を埋めるチャンスじゃない‼」


「だからって極端はだめだぞ、ヒメ。更に溝が生まれるからな」


 泣きじゃくる簀巻き女性をあやす男性を俺は驚きを隠せない様子で見ていた。


 そして、当たり前のように。


 まるで父親のように。


「よぉアキヒト。お誕生日おめでとう」


『49代目キング』ソウマ·レオン·ハザァード


 俺の······本当の父親だ。









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