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アキヒトバトルアドベンジャーズ  作者: モフきのこ
第1章 『出会いと別れの一年間』
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EX.54 「彼の真実」

「やあ、アキヒトくん。お久しぶり振りだね」


「えっ、あっはい」


 俺は思わず右腕を挙げようとするが、右腕が無い事に今気付く。


 止血はされているようで、包帯に包まれている右肩は血で染みていない。


「それに関してはごめんね。あの場ではこうするしかなかったんだ。まあ、そこらの話は後でしよう」


 ふと俺は横を見ると、吉田さんが今まで見たことないような顔でアウアウしている······こんな顔出来たんだ······


 すると、かぐやさんが袖の中から財布を取り出して。


「ほら、お小遣いだよ。購買で買っておいでよ」


「えっ、あの······」


「ほらほら、出てった出てった。今はアキヒトくんに話をしたいんだよ」


 そう言って俺の病室から皆をのかす。でも俺は知っている、今皆に渡したのは二千円札である。使えるのか!?とは思ったが、かぐやさんが渡したんだから使えるのだろう······使えるのだろうか。


 結局一番最後まで抵抗していたカレンを押し込んで、手をパンパンと叩いてひと仕事終わらせたかのようにする。


「さて、そろそろ話そうかみやたあきひとくん······いや、アキヒト·レオン·ハザァードくん」


 @@@@@


 アキヒトくんの病室から追い出された私は結局扉に耳をあてて聞き耳をたてることにした。


 病院のあのピンクの服で頭に包帯をした変な少女——————それが、今私を指せる言葉だ。


「聞き耳なんて、行儀が悪いわよ······」


「いいのいいの、気にしなくて全然大丈夫‼だって気になるじゃん?アキヒトくんとあの人がどんな話をするのか」


「まあ気になるけど······それとあの人じゃなくてかぐやさんよ」


「かぐやさん?」


 すると、ハァ!?と大きな声をあげるユーちゃん、ここ病院ですよ。


「知らないの······あの『竹取物語』でも有名じゃない······」


「じゃあ退院したら貸して‼」


「素直にまず知らないって言ってほしかったわ······まあ、とりあえず購買に行っておくわね」


「うん‼」


 そう言って私はピラピラと二千円札(?)を振るユーちゃんを見送る。


 さて······そろそろ······


 いっちゃいますか‼


『さて、そろそろ泥棒猫ちゃんを捕まえようか。ん?やっぱり子猫ちゃんかな?」


 ガララッと扉を開けて笑顔を向けるかぐやさん。その時私はかぐやさんが悪魔に見えた。


 @@@@@


「私は扉に聞き耳をたてていた事に反省しています。どうぞ」


「私は扉に聞き耳をたてていた事に反省しています」 


「今聞く事は絶対に他に話す事はしません。どうぞ」


「今聞く事は絶対に他に話す事はしません」


 と、このように今現在聞き耳をたてていたらしい彼女がかぐやさんに捕まっている状況である。


「もしも、話してしまった場合。私かぐやの名前を使います。どうぞ」


 今なんか自分を盾にしたな。


「もしも、話してしまった場合。私かぐやの名前を使います······あれ?なんか変な感じが」


 その変な感じ、多分合ってるよ。


「まあまあそんなのいいから座って座って。今の言葉を喋ったからにはちゃんと仲間に入れないとね」


 そう言って俺の隣のベッドに誘うかぐやさん。


 ちなみにかぐやさんはそこにある鉄パイプの椅子に座っている。


 そして彼女はまるで当たり前のように存在する。


 @@@@@


 彼女——————カグヤ·ハザァードは年齢不詳、旧名不明、生まれた年も不詳である。


 別に彼女は若作りなどという理由で年齢を語っていないのではなく、ただ単に分からないのだ。


 生まれた日も生まれた年もそれと同時に自分の年齢も分からないのだ。


 だが、彼女は自分を求めていない。


 自分を知ろうとしていない。


 そこまで、自分に関して自分という情報が必要ないと思っているからだ。


 必要主義、ただ真実のみを求めている訳でもなく、裏の『事実』を求めているのだ。


 その際、必要だと思った実力を『能力』で補い、『世界最強』の称号を得ている数人の一人となった。


 彼女の夫である『初代キング』レオン·ハザァードはかなり骨が折れたらしい。


 破天荒でも、それでも優しいお姉さん——————俺は言葉の頃はそう思っていた。


 だが、彼女がなんでここに。


「それにしてもカレンちゃん。アキヒトくんの本名って気になるかい?」


 おい、何を言うババア


「はっはい‼······え?みやたあきひとくんじゃないですか?」


「そうかそうか‼気になるかい‼それに彼はみやたあきひとじゃないよ」


 そう言いながら俺のほっぺたをうに〜とするかぐやさん。どうやら心の声が漏れていたらしい。


 そして、その様子を見たかレインボーはほっぺたをうに〜とする代わりに耳をはむはむしている······こそばゆいから止めて。


「彼の名前はアキヒト·レオン·ハザァードさ。もっとも、彼は黙っていたかったらしいけどね」


 まさかの曝露。二人の時の場合はまだ話を続けれるが流石にまずい。


「かぐやさん‼それは‼」


「レオン·ハザァードって何?」


 ずっこけた。


 ベッドに座りながら綺麗にずっこけた。


 かぐやさんの方も、えぇぇえ‼と叫ばんばかりの顔をしている。


 そりゃそうだ。レオン·ハザァードの名前を知らない人間なんていないと思っていた。


 王の一族。それがレオン·ハザァード一族だからだ。


 恐らくカレンは聞いたことあるけど、忘れたと思う······思いたい。


「いや〜多分聞いたことはあるんだけど、忘れたんかなぁ〜」


 どうやら正解らしい。


「レオン·ハザァード一族はキングの一族なんだ。」


 だから言うなって。


「そうなんですか!?え······アキヒトくん凄い人なの?」


 するとカレンはありがたや〜と(恐らく吉田のせい)拝む。


「ハハハ‼まあ確かに偉いかもしれないけどアキヒトくんは別さ。彼は既にレオン·ハザァードではない。名前が勝手に残っているだけさ」


「勝手に残っている?」


「そのままの意味さ。彼は元々王位には興味のない子だったしね。それに彼の本当の両親もアキヒトくんをキングにさせようとしなかった······まあボクは推薦はするけどね。だが、状況が変わったのさ」


「状況?」


「子供が全員いなくなったのさ。つまり、継げる者がいなくなった。まあ本来のキングの血筋である母親の方は三姉妹だったしね。残り二人も子供はいるが、親自体が拒否をしてね。まさに背水の陣のような事になったのさ」


「でも、ガオウさんがいるじゃないですか」


「確かにガオウくんはいるよ······そういえば彼は無事あっちの方に返す事が出来たよ。まあ本題に戻そう。ガオウくんはあちらの方で『共和』に関しての努力をしているのさ」


「共和······?」


「そう、共和さ。カレンちゃんはどうして魔王軍とこちらの世界はいがみ合っているのだと思う?」


「さあ、分かりません」


 そうきっぱりと言うカレン。きっぱりと言うこともないだろうに。


「ボクの答えは簡単さ。『知らないから』だよ」


「知らないから······?」


「そう、知らないからだ。人間でもなんでもそうだが『異分子』には強く反抗しようとするもんだ、まあそれには自分達の領域を奪われたくないと言う気持ちもないわけじゃないが大多数がそうだ。彼にはねこことあちらの世界を繋ぐ橋となって欲しいんだ」


「でも、それじゃあ」


「確かにこれは大人の事情だ。ボク達じゃ出来ないから彼に任せたと言う君の意見にボクはなんの反論も出来ない。だがまあ一つ捨て台詞を言うならば、最初からそう考えた訳じゃない。彼がそう言ったのさ」


「え······?」


「『聖戦戦争』が始まった時、ボク達はガオウくんをあちらの世界に逃がす事を考えた。最も彼よりもあの子達を考えるべきだったと思えるけどね、今となっては」


「ある日彼は言ったのさ『ボクが偉くなってボクの世界と和解させる』って」


「最初は反対したさ、危ないしね。でも彼はそれにめげなかった。その結果があの強ささ。最もその彼に君は勝ったのだが」 


 俺はかぐやさんのそんな言葉に苦笑いしながら。


「そんなこと無いですよ。手を抜かれたんですよ」


「そんな事があるんだ。彼は『まさか、全力を出した俺にあいつが勝つとはな······』って呟いていたよ」


「そうですか······」


 どうやらあのときの言葉は幻聴じゃなかったらしい。あいつの······ガオウの本心だったんだ。


 すると、キッと険しい顔をして。


「それにしても気に留めて置くことも良いことだ。きみをまだ手放そうとは考えていないそうだよ」


「はい······分かりました」


 それでも気に病む事がある。もしもあの両親が来て「戻ってこい」と言われたら、俺はちゃんと拒否することが出来るのだろうか······


 @@@@@


「そろそろ、きみのそれは外してもいいんじゃないかな」


「え?」


 かぐやさんが指さしたのは俺の右肩を塞いでいる包帯だった。


「あれ?」


 かぐやさんが指さした瞬間、まるで今まで空気を包んでいたかのようにふわりと外れる。


 そこには傷一つない肩が。


 俺は右肩に集中した。


 すると、ただの感覚だがもこもこと音が鳴って右腕が修復していった。


「あれ?黒くない」


「あれは『銀河の覇者』黒鬼の腕だからね」


「······秘密がいっぱいなんだねアキヒトくん」


「秘密というか自分でもよく分かってないんだよ」


 じと〜と俺を見るカレンに俺はそう言って右腕を見つめる。


 そこにはなんの変哲もない俺の腕があった。


「ちょっと集中してごらんよ」


「?」


 俺は言葉に従うままに集中した。目を閉じて。


『その腕を借りるのか?』


 そんな声が聞こえた。


 そして目を開けたあと、そこには黒くてかなりの筋肉質な俺の腕ではない腕があった。


「え?」


「一度きみの気孔が開いたからね後は何度も出来るんだよ」


「うわ〜凄い」


 そう言って俺の右腕をつんつん突く、どうやらこの腕でも感覚はあるらしい。


「そりゃそうだよ、これはきみの一部だからね感覚も一緒さ······まあ違うのはその腕は他のは違う力を持つ」


「違う力?」


「伸縮自在で更に特異点な能力を持つ——————その力は『真実』を殴ることだ、きみの『真実の目』と同じようにね」


「真実を······殴る······」


「真実を殴り、真実を潰し、真実を捻り潰す······それが彼の言葉だったっけ。真実を嬲り殺す事だけはしなかった男らしいよ」


 知ってる、何度もあった事があるから······精神内という、最も弱々しい言葉しか言えないけど······


「ちょっと待ってください!!アキヒトくんの腕はこのまま何ですか!?」


「そうですよ‼これはアキヒトの腕じゃありません‼」


 約二名が強く反発する。俺はため息をついて。


「出すことも出来れば、直すことも出来るってことだろ」


「「あっそか」」


 ふっ、と元の腕に戻してそれを見せつける。


 するとガタッと音をたててかぐやさんは立って。


「さて、ボクはそろそろ帰るよ。きみ達の退院は三日後にしておいたから、のんびりと休んだ方が良い」


 そう言って、


「きみの選択をボクは尊重するよ」


 と意味深な言葉を言って出ていった。


 三日後は6月22日。


 俺の誕生日だ。








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