EX.3 「彼女との約束」
三人の呼応が響いた瞬間―――――彼らは飛んだ。
『天空飛行』―――翼を身に纏うようなイメージで飛ぶことが出来る人間最上の秘術。
もちろん、イメージなので、実際に翼は存在せず悪魔で飛んでいるという状態になる。ある科学者は強くイメージすることによって、体の全細胞が上へと向かう事に起こる現象、と言われてはいるが実際のことはよく解っていない。
何故なら、『空を飛ぶ』ということは、過去にとっては人間の絶対不可避の領域であり。不可能とも言われたことだからだ―――――つまり、そのことが出来るこの二人はその時点で天才とも言えることだろう。
そして、二人が飛ぶ、先には猛獣―――――ライオン型の魔獣の元――――――
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アキヒトは回避出来なかった
右前足から襲い来る一撃に対しては容易く避けれた、しかし尾っぽからくる一撃に対しては避けきれなかった。
見てなかったのでは無い、見れなかったのだ。
元々、鞭のような状態だったのだが、突然尾っぽが八分割されその全てが蛇に変化し、その全てがアキヒトに襲いかかった。
不幸か三人は、右足の対処に集中しており、死角からの攻撃には気づけなかった。
「アキヒト!!!」 「アキトくん‼」
俺に襲いかかった尾っぽを斬ろうとするユウスケを俺は右手で制止し
「ぐふっ···大丈夫だ…お前は足の対処をしてくれ」
「分かった…で、俺はどうしたらいい?」
「一瞬隙を作ってくれ、たった一瞬でいい」
「了解」
そう言い終わると同時に彼は飛んだ、彼はアキヒトの傷を気にしてはいない何故なら――――
「チッ……、全く服がボロボロになったらどうするんだよ」
彼から見える外傷は全て無くなっていた。
完全蘇生能力
生まれた時から、『パーフェクト』と同時に手にしていた能力。外敵攻撃などにより擦り傷や重くて部位欠損が起こった場合その部分を瞬時に『蘇生』する能力。もちろん、怪我をする際の痛みはもちろん感じるがそこまでだ、トカゲのしっぽのように、瞬時に回復し戦線へと迎える。自切と同じ様に回復する際、多少のエネルギーを消費するが、腕の一本や二本が失うのは例外として、普段の生活により補う事が出来るのだ。
アキヒトは八匹の蛇を全て取り除き、それを後ろの剣で全て切り刻む。
「アスナっ‼カウントダウン頼む‼」
「了解‼カウントダウン3···2···1···今‼」
「おう‼」
蛇への人薙により魔獣のターゲットは俺に向けられていたが、カウントダウンを呼応したユウスケが左足を斬り、再びターゲットをユウスケに向ける。
アキヒトは飛んでいた。
それを、目視出来たのはアスナだけだったのだが、おそらくユウスケも気づいていたのだろう。
俺は背中の剣をもう一度引き抜いた、黒と白の単純な色合いをしているが、その潤沢な黒と白の光沢は誰をかもとりつかせるような光を放っていた。
この剣の名は『ムーンフェアリー』
たった、十二本しか存在しない『最上級神器』の一つであり。かつて、『蘇生神』が創り出した剣である。そして、その剣の材料となったのは、かつて銀河の覇者と呼ばれた『鬼の腕』である。
その剣は本来の力を解放さえすれば、地球をの大きさの惑星も一振りで真っ二つに切ることが出来る。
その、『最上級神器』は昔最大の軍事武器として採用はされた事があったのだが。『最上級神器』にはある特性があり。
"武器が人を選ぶ”ことだ
剣が人を選ぶ――――それはどこかの剣劇マンガなどで使われそうな言葉だが、事実、適合者以外の者が持とうとすれば、突然その剣が重くなったり武器自体が炸裂したりなど、まるで拒むかの様に持たせないようにしている。更には、その武器自体が見つからない所に存在していたりするので、最も強い武器として認定というか細胞全てが認識している。
もちろん、適合者になることのメリットが存在し、その個人の能力が飛躍的に上昇したり、その剣自体に秘められた『剣の力』を使うことが出来る。
極端な力を秘めた武器、最も強い武器ということからこの神器は『武器のモデル』とされている。
光弓シェキナーや神斧リッタ、神器ムーンフェアリーの様に『最上級神器』自体が各々別の姿をしている。
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アキヒトはムーンフェアリーを縦に立てた。
タゲ取りは完璧、だったのだが、流石のことだろう、魔獣で更に大きな山一つ分の大きさである。感覚も鋭敏なんだろう。
だが、もう遅い
「うおおぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁああああ!‼」
縦に思いっきり振った、型など関係なく、ただ全力で目の前の魔獣を殺すため―――
グオオオオオオオオアアアアア!!!!!
と、力強い断末魔と共に黒い煙になって爆散した。
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煙の匂いが恐ろしく吹き荒れる中。
二人の人影があった。
息絶え絶えで彼女は言う
「あっくん······最期に···あなたの夢を···教えて···?」
少年は泣きながら言う
「ぼくは···俺は!なるよ最高のヒーローに‼」
すると彼女はニコリと笑う
「だったら···ならなくちゃね、その···最高のヒーローに···」
「どんなに···辛い事があっても···諦めないでね···ずっと···あなた···の···元に···いる···から」
そして、彼女は目を閉じた、永遠に目覚めない夢の中に―――――――
少年は泣いた、大声を上げて―――――そして決めた彼女と約束したのだから、『最高のヒーロー』になることを。
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――――――俺はなる!!!
―――――最高のヒーローに!!!
少年の――――いや彼の戦いの物語はこうして始まった。