EX.32 「停止空間」
謎の生物の放送の後、うんともすんともいわなくなった携帯を手に岡田は焦っていた。
恐らくこのままじゃ、国のスーパーコンピューターですらあの生物の下へ辿り着くことも出来ないだろう。
だからこそ、頼みの綱はあの世界に強制的にもいえどあの場に辿り着いたアキヒトのみ。
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「もぎゅう‼一体何があったんですか⁉」
「俺だって知らないよ‼そもそもなんであんな化物が産まれたとか、アキヒトがコンピューターの世界に入ったとか、もう頭がいっぱいいっぱいだっつの‼」
何気にアキヒトや山本の喋り方が混ざった状態でモフに対応したが、今はそれに反応する余裕は無い。
何故なら、アキヒトは実際にあの生物と対面しており、その後自分はパソコンの前から立って外に出ている事もあった為、アキヒトの身が心配になったのだ。
モフの(人形の状態)小柄な体を持ってアキヒトの部屋まで小走りに、そしてアキヒトのパソコンの画面を見る。
そこには、ノイズは酷いものの平気としている彼の姿があった。岡田はホッ、と安心したがすぐさまに彼の異変を感じた。
ピクリとも動かないのだ。
瞬きもせず、この世界に入った瞬間からずっと浮きたゆたゆしている髪も動かない。更には少し砂嵐に似た物がアキヒトの体を纏っている。
「フリーズを···しているのか···?」
「えっ⁉フリーズってあの青色の画面になることでしょマスターは動いていないだけじゃないですか」
「いや······フリーズには重度があって、パソコン自体が落ちるのが本来フリーズって言われるけど、情報通信量が間に合わない時に一時停止をして情報と今現在までを繋げるようにする軽度のフリーズが存在するんだ」
「へぇ···」
「これは明らかに後者だけど、これにはかなりのデメリットがあるんだ···」
「何ですか?」
「再び動き出すまで待ち続けなければいけないんだよ」
するとモフは「もぎゅう‼」と叫んだ。
「それじゃあ不味いですよ‼あの化物がどう動き出すか分からないし、そもそもアキヒト自体がそこからこちらに戻されるのかもしれませんよ!」
「そんなことは分かってる···だから手を打つだけだ」
そう言い終わると、岡田は本来ならフリーズしたと思っていたアキヒトのパソコンを直すために持ってきたパソコンを出した。
「パソコン······使えないでしょう?」
「こいつは特別性だ。たった数日前に人工衛星を打ち上げたが失敗が無くて、かなり便利になっているんだ。いわゆるこれは『自作PC』ならぬ『自営PC』だな···それにこれはかなりのハッキング能力を持っているんだ」
ククク、と笑う岡田の後ろでモフが(人型)でうわぁぁ···という顔をしていたが彼は気にしていなかったようだ。
「それで···それを使ってどうするんですか?」
「『ハッキング能力』を持っていて『自営PC』なんだぜ、インターネットに独特に繋がってあるから今回の事件の影響は喰らってないはずだぜ」
「と、言う事は‼」
「アキヒトをこれで強制的に復活させる」
岡田はパソコンの電源をつけた。
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これは彼があの状態になる数分前。アキヒトは突然出て行った岡田の声を聞き「一体どうしたんだ?」と呟いていた。
彼の目の前にはバリボリと壁を食べている謎の生物がいた。
ギョロリと自分の事を見ている事は分かってはいたがどう手を出すかを迷っていた。すると――――
「ゲ「ゲゲ「ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ‼‼‼」
その生物はうねりを上げて跳んだ。
目標は恐らく自分。アキヒトは背中に手を向けた。いつもの愛剣『ムーンフェアリー』を握る為に――――だが、その手は空をきった。
元々ここに着くまでは自分の部屋の中にいたのだ、剣は剣立てに置いており背中に挿してはいない。
この事に気づくまでに1秒程掛かり、いつの間にか6本あった手の1対が針の様な手に変わり自分に急接近していた。
カウンター狙いで左手をグッとする。
ドッ、と音がしたのはアキヒトが左手を握り締めた瞬間であった。
そしてその瞬間キュィイイン‼と音がなり彼は動かなくなった。髪の毛の先まで。
「ゲ「ゲゲ「ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ‼」
謎の生物は笑った。
動かなくなったアキヒトを見て、「ざまあみろ」と言わんばかりに――――
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そこから更に時が経って、アキヒトの時間が動き出した。
「うぉぉお!」
アキヒトは左拳をアッパーの要領で振り上げた。
しかし、その拳も空をきる。何故ならその場にはもうあの生物はいないからだ。
『良かった···やっと動き出したか』
「その声は岡田か···?って言うか『動き出したか』ってどういう事だ?」
『さっきまでピクリまで動いていなかったんですよ』
次はモフの声が聞こえてきた。
「動いていなかった···か、もしかしたら···」
『もしかしたら···?』
今度は二人同時に聞こえた。俺は素直に岡田がいなくなったその後の事を話そうとした。
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「「って···はあああああああああああ‼⁉」」
その後の顛末をアキヒトから聞くに二人は叫んでいた。
すると画面上では「うるさい」と言わんばかりに耳に手も当ててふるふるとしているアキヒトがいた。
「要は···『負けた』って事ですか···?」
『負けた感覚はないんだけど、一撃を喰らった瞬間に動けなくなったんだよなぁ』
「一時的にアドレスを弄られたのか···?」
「どういうことです?」
『どういう事だ?』
二人は岡田の台詞に反応する。
「ん······いや、アキヒト···お前を復活させる前にお前のアドレスを見たんだけど、文字化けをしていたんだ」
『パソコンを3台も使っているからかな···』
「それは···恐らく関係ないと思う、だってアドレスが化けた瞬間にインターネットは使えなくはずだし」
「······つまり、その一撃を喰らった瞬間にアドレスを弄った···と言うことですか?」
アキヒトは考えた―――確かにあの一撃を喰らった瞬間にキュィイイン‼と言う音が聞こえたからだ。
あれがアドレスを変えた時の音だったら納得のいくところだ。
「そういえば妖精達は大丈夫なのか?」
『ん···ああ、大丈夫だ――――ほら』
そう言うと炎や水などをだす。
『こういうのなら大丈夫なんだけど『精製』関係は使えないみたいだな···ちょっと剣造ってくれないか?』
「ふ〜ん、少し検討しておくよ」
「マスター···『レインボー』さんがいたら一撃を喰らわなかったじゃないですか?」
『何故かは分からないけど居ないんだよ』
「え?」「ん?」
すると、二人のいる場所から少し右側―――つまりベッド側から「ふゃわぁあ〜」とあくび声が聞こえた。
「だれかぁ〜私を呼びましたかぁ?」
「「なっ⁉」」
ベッドの枕付近から現れたのは見間違いもない、完全にレインボー――――今この瞬間まで話していた彼女本人であった。




