EX.31 「電脳の生物」
俺は今、宙にぷかぷかと浮いている。
別に空を飛んでいる訳でもない。
強制的に、ここがまるで宇宙にいるかのような無重力空間にいるかのように――――
しかし、周りをよく見ても鉄筋コンクリートのマンションや木で造られた一軒家も、当たり前を言うと森も林も木も川も海も空も無い、今の自分と同じ様に雲だって浮かんじゃいない。
ここにあるのは数字の羅列と無数にある謎の道。
太陽が周りを光らせている訳でもなく、淡い青色の光が全体を包んでいる。
ここは『電脳空間』、本来データのみが行き来出来る場所。
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「あ·す·な·さ·ん·せ·ん·じ·つ·は·ほ·ん·と·う·に·す·み·ま·せ·ん·で·し·た――――ちょっと堅苦しいかな···」
あれから2週間が経ち、ゴールデンウィークのある日、俺はパソコンを使って反省文を書いている。
それはつい先日、アスナの買い物に行くという約束があったのだが、寝坊こそはしなかったのだが、集合場所である三宮駅に行こうとしている最中事故が起きて道が封鎖されていたりしていた。
まあ、今言うと言い訳がましいのだが、今回の件に関して俺は全面的に悪いのだ。
何故なら俺は『天空飛行』が使えるからだ。
あの時、本気の意味で慌てて、ようやく着いたのは予定時刻の1時間後の話である。
あの時、アスナは見た目ではやんわりと怒っていたが、度々、あっ···めちゃくちゃ怒ってる···、と思えるような言動と行動によって、アスナの怒髪天をうったことにようやく気付き、これは流石にまずいぞ、と思い、今、パソコンに向かっている。
「···だめだぁ〜!」
俺は未だに1時間、書いては消して書いては消してを繰り返している為、集中力が切れ始めてきたのだが―――――。
――――ブツン
「え···?」
俺は少し伸びをしようと机にもたれ掛かった瞬間、嫌な音と共にパソコンの画面が真っ黒になったのだ。
「いや、今駄目だろ‼もっと頑張れよ‼熱くなれよ‼」
別に俺は有名な熱血テニスプレイヤーではないのだが、この状況のまずさにより無意識に言っていた。
だが、俺はあの時の―――アスナとの半ドタキャンしかけた事件の時の俺とは違う、俺には方法があるのだ。
俺はバッ、とポツンと悲しく置かれてあったスマートフォンを見て、手にする。
電話を掛ける相手は決まっている。
「なぁ、今暇だろ?」
『暇だけど、なんでお前にそう言われなきゃいけないんだよ···』
1コールで出てきた奴に言われてもな···。
ちなみに相手は機械に詳しい岡田である。
「ちょっと、家に来てくれ。直して欲しいものがあるんだよ」
『直して欲しいもの?···まあいいか、もう行っても良いんだよな?』
「ああ、早急に頼む」
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ちなみにあれから3分位で来た。
確かに早急にとは言ったけど、早く来すぎだろ⁉とは俺はツッコまない。
何故なら俺と岡田の家は2つ隣だからである。
そう考えるとちょっと遅いほうなのだが···。
「···ん···あれ···どういう事だ?」
今は、岡田がパソコンをカタカタ弄っているのだが、どうやら難航しているらしい。
「どうしたんだ、岡田?」
「ん···いや、これフリーズでもコンセントも抜けてないからおかしいと思ってな」
確かに言われればそうだ、フリーズだったら青色の画面に記号の羅列をはしっていたり、コンセントが外れていたら画面が真っ黒になっているだろう。
だが、今のこの画面では、真っ黒というよりも灰色に近い色なのだ。
「でも、この画面だったとしても直せるんじゃないのか――――――‼」
「アキヒト‼」
俺は岡田に質問をしようとしてパソコンの画面を軽く小突こうとした瞬間――――指がトプンと画面に浸かったのだ。
そして、その瞬間沼に沈むように、誰かに画面内から引っ張られるかのように俺の右腕が入っていく。
まずい‼···と思い耐えようとした瞬間、ピカァ、と光だし、部屋中を包んだ。
「ぐあ!···おい大丈夫かアキヒト···アキヒト···?」
そこには彼の姿はなかった。
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どういう事だ⁉
岡田は目の前から人が消えるという自体に驚く。
今の光がアキヒトの冗談だったのなら、笑い話になるのだが、ドアも開いていないし、ましては誰かが移動したような音もしなかった。
ということは、となけなしの希望と共に岡田はパソコンの画面を見る――――すると、灰色の画面の中で人影を見つけた。
「あっ···」
希望が見えた。アキヒトの能力があれば脱出することが出来る。
「おい···おい、アキヒト‼」
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こうして、冒頭の話に戻る。
助かったことに、あの画面とこの世界は繋がっており、岡田自身は入れないもの声は届かせれたのだ。
岡田によって目覚めた俺はすぐさま能力『転移』や『電脳』を使おうとした時――――
『ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!!!!!』
「なっ···!」
そこには、6本足で電脳空間を歩く生物がいた。
そいつは顔半分をまるで落書きのような適当に書かれてある口のようなものがあり、その首の動きは今見た中でも2、3回回っている。
「おっ···おい、岡田···あれは何だ⁉」
『ちょっ···ちょっと待て···今調べ――――なっ⁉』
「どうしたんだよ⁉」
『携帯が反応しない···』
「‼」
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岡田は外を見た。
そこには、突然の情報停止によって慌てふためく人々があった。
「えっ······」
またもや、携帯は可動したのだ。
携帯の動きがストップして、またもや動き出す。
おかしい、と思うのが当たり前だ。携帯会社の悪ふざけにも程がある。
しかし、携帯の画面に映ったのはいつものホーム画面ではなく、謎のメール画面であった。
岡田は画面をどう動かそうか努力したが、この画面だけで他はうんともすんともいわない。
カタッ···、とメール画面から文字が映し出される。
『コンニチハ、コノセカイノデータヲ、タベサセテモライニキマシタ』
文字自体は読みにくいものの、「データを食べる」という言葉に深く疑問を持った。
「どういうことだ···?」
そう言いながらアキヒトの自宅に戻ろうとした瞬間。
「もぎゅうーーー!」と叫び声が聞こえた。
「どうした⁉」
「て···テレビが」
「テレビ?」
そこには、メール画面に映し出されたような文字ではなく、アキヒトがSOSを出した時に見た生物と同じ姿をしたものが映し出されていた。
「ゲ「ゲゲゲ「ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ‼」
そう言い終わると共にブツン、と音を立てテレビが消える。
こいつは···こいつは、まずいぞ···アキヒト···‼




