EX.26 「英雄の証拠」
「ぐっごぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお‼」
「うぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁあああ‼」
俺の放った龍拳がメセラ·ディファインの命を刈り取った―――
トリア星 赤の王国 王城の決戦
勝者アキヒト ユウスケ ポックル
死者3名の戦いであった。
@@@@@
今、俺達は地球に戻って来た。
「本当に良かったのですか?ご馳走だって用意出来ましたのに···」
「別にいいって!まぁこれでポックルはこの星の英雄だな‼」
そう言い俺がポックルを褒めるとポックルは慌てて手をこちら側の方にぶんぶんと振り。
「そんな···僕はただアキヒトさん達に助けを乞うただけなのに···」
「だけど、あの時お前がいなかったらアキヒトはアイツにトドメをさせなかった。それに―――」
「助けを乞う事も、逃げる事も、間違いでも未熟者でもなんでも無い。ここぞと言うときに守ろうとするその意志が大事なんだ。失う事に恐怖で足がすくむ様な事にお前は立ち向かった。立ち向かってその後の時間はかなり掛かったが俺達を見つけた―――これでいいだろ?普段はできる癖にしない奴と不器用ながらもこの卑怯な現実に立ち向かう奴···どちらが人に愛されるか一目瞭然だ」
ユウスケは言葉を繋げる。
「そしてお前は後者だ」
ユウスケは拳でドンと胸を叩き。
「胸張って生きろよポックル、お前は正しい事を自分の為じゃなく自分以外の誰かの為に戦ったんだ。例えそれが、足手まといでもな。ポックルこの世界の英雄を知っているか?」
「いえ···あんまり知りませんね」
「英雄は確かにかっこいいしかなり目立つ―――だがなそんな英雄達の背中には必ず何か情報を受け取る人間や傷を癒やす人間、その様々な人間がいるんだ。だからこそ、英雄は前だけを―――敵だけを見て戦えるんだ。だから一概に違うとは言い難いが、戦ったのは俺達···でも、それを支えたのはポックルお前だ」
「僕が···ですか······?」
すると、アキヒトが口を挟んだ。
「そりゃそうだろ―――だってお前が俺達を呼ばなければあの星は確実に侵略されてたんだからな」
すると、ポロポロとポックルの目から涙が溢れていた。
「僕が···助けたんですね···」
「自惚れんなよ、お前はまだまだ弱っちいんだからな」
すると、ポックルは「はい」と小さく言い涙を強く拭う。
「はい‼僕···もっと強くなって、いつか将来トリア星の英雄になります‼」
「ハハハ、頑張れよ。場所は分かったしたまには遊びに行くよ」
「はい‼その時はご馳走用意しますね‼」
「楽しみにしとくよ」
その後、ポックルは俺達に「さよなら」と言い宇宙船に乗って母星に戻っていった。
「なぁアキヒト、トリア星の住民の傀儡化直るのか?」
「まぁ、大丈夫だろ。ああいった能力は大概はその能力を使う本人自身がいないと成立しないからなそれに―――」
「『死者の能力』なんてそうそうないからな」
「···あぁ確かにそうだよな···ん?」
俺達の降り立ったのは学校の屋上―――つまり校門も見えるのだ、そしてそこから生徒が何人も入っていく様子であった。
「うわっ···徹夜コースかぁ」
「ハハハ‼居眠りしないように頑張ろうな!」
制服の汚れも傷も直したし、今日の教科自体は昨日とわりかし変わらない。そこは大丈夫なんだが眠いのは流石に危険だ、まじで眠くなったらレインボーに叩いて貰おう。
「そろそろ俺達も降りるか」
「そうだな」
@@@@@
重厚な雲が空を包み決して太陽の光を通そうとしない。だからこそここは雨も曇りも存在しない。万年光が通らないこの世界は土地の『発光岩』によって明るさが保たれている。
ここは暗黒界。魔王達が住む土地。
「なんでしょうか?魔王コルキス」
その場には白髪の青年と小太りの魔王がいた。
「···む、貴様の実力を見越して我と共におこなって欲しい事があってな」
「なんでしょう?」
「うむ···英雄『ミヤタ アキヒト』の殺しだ」
コルキスの言葉に白髪の青年―――ガオウ·レオン·ハザードは片眉を上げた。
幾度となく英雄を殺してきた彼にとっては『殺し』という言葉にはなんの感情も湧かないのだがそこに出てきた少年は別だ。
一度負けたからでは無い。
彼にとっても『アキヒト』という存在は限りなく重要な存在であったからだ。
ガオウは魔王室から出ていった後小さく呟いた。
「······まずいな·········」
その言葉は誰にも聞かれずに散っていった。




