EX.25 「『傀儡の王』との約束」
台座がひび割れ、メセラは吹き飛んだ。
限りある意識の中でメセラは考えていた―――
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あれで1%以下なのか⁉おかしい!物理的に反している‼
······いや、昔はあれが普通だったのか⁉
確かに、あの伝説―――一撃で星を破壊する。そんな事は本当だったのか⁉
だがまぁいい、椅子は割れて壁も破壊された。
このまま勢いに任せて吹き飛んで、右腕に残しておいたエネルギーで、この星の傀儡共を使って逃げ切る、完璧な作戦だ···たとえあの化物でも、人混みに消えた私が見つけれる訳が無い‼
この国の話では黒鬼自身と友好な星であったはず‼だからこそ奴はこの星を壊さない筈だ‼
たとえ壊したとしても器である、あのガキが存在する限り、黒鬼自身が死ぬ事だってある。
ふはははははは‼私の考えは貴様らと違って完璧なのだ‼
彼の頭の中は澄んでいた。
実力差を考え逃げる事にしか考えない彼には、その一点の事にしか考えなくなった彼には全てが見えていた。
逃げるためのルートも、それに移すための意思力も―――――見えていた。
全てが見えていたはずだった。
しかし、彼はこの場で異分子のアキヒトだけを見ていた。
自分に向けて手差されたポックルの腕を見ていなかった。
それと同時に彼の能力も――――
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黒鬼は精神内に戻っていた。
そして、目の前にはくろうがいる。
「エラク、カンジョウテキダッタナ」
「うるっせぇな、感情的でよ···久し振りにアキヒトが気絶して、シャバの空気吸って興奮してたんだよ」
「···ホントウニ、ソレダケカ?」
「ああ、そうだよ」
「······フム、マァイマハイイ、ダガイツカハオシエテモライマスヨ」
「本当にてめえはよ···人の話を聞いていたのか?」
そう言い、黒鬼は思いにふける。
かつて、無意識に行い、その光景を見たある友人が「らしくない」と言われ、その後何時間か喧嘩をした友人の顔を。
別れのこの瞬間を―――
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「殺せ···?てめえが勝手に死んどけば良いじゃねぇか」
リオルはケラケラと笑いながらその黒鬼の言葉に答える。
「ハハハ‼いいじゃねぇか友達の頼みだぜ」
黒鬼はその言葉にため息をつきながら答える。
「···んで、俺はどうしたらいい?」
「···『破星拳』を撃ってくれ」
予想し得なかった回答に黒鬼は「はあ⁉」と驚き。
「全く···てめえの考えは最期までわからねぇな」
「頭脳じゃなく暴力的にいつもなるお前には一生分からないさ」
「ああ‼」
「ハハハ‼まぁそう怒るなよ···まぁ遺言みたく聞いてくれ」
「語り継げとも···?」
「いやいや違う違う、一応忘れないで欲しいなぁ〜っていう馬鹿な考えだよ」
そしてリオルはだらぁと両手を拡げ目を瞑る。
「元々『鬼』という化物と違って俺は人間と化物の混合の更に化物だ···俺の家臣にはとっくに俺は黒鬼に殺されると言っておいたから安心しておいてくれ―――それとこの星を守っといてくれ」
「要求が多いな···まぁいいぜ」
黒鬼は低くしゃがみ左手を右手の拳を包み込む。
『破星拳』のポーモーションだ。
「ありがとう―――会えて良かったよ」
「俺もだ―――じゃあな」
そして黒鬼は100%の『破星拳』をリオルに放った。
100%の『破星拳』は黒鬼の慈悲の技――――痛みを感じさせず。分子から崩壊される奥義。
多少リオルはのけぞりはしたが笑顔のまま光の粒となって消えていった。
そこから、黒鬼は影ながら『トリア星』を見守り続けたという――――
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「いまだ‼」
「『100G』‼」
「ぐうぅぅ!」
ポックルの能力『重力』で拘束したメセラは情けない声を出しながら地面に突きつけられる。
二人は彼の意識の復活に気付いていた。
メセラは彼の意識の復活に気付いていなかった。
そこが、命の狭間と知らずに―――
「アキヒトォォォ‼」
「ああ‼レインボー‼」
「うん‼」
アキヒトはレインボーを纏いメセラの上に立つ。
「てめえいつから‼」
「今さっきだよ···だから今、終わらせる」
「止めろ···やめろォォォォォ‼」
「『龍拳』‼」
アキヒトにその技を喰らったメセラはその瞬間、ひび割れ黄金の光を纏いそこから黄金の龍が飛び出した。
そして、二代目『傀儡の王』メセラ·ディファインの死が確定した。




