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アキヒトバトルアドベンジャーズ  作者: モフきのこ
第1章 『出会いと別れの一年間』
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EX.23 「人形」

 人間は通常では3~40%程しか使っていない。


 人間にはあるリミッターが存在し、『全力を尽くして戦った』の『全力』はあくまでも体感的な言葉であり、科学的にいえば本来人間の出せる『全力』の十分の四だけしか出せていない。


 しかし、人間は科学的な『全力』を使うことが出来る。だが、人間が『全力』を繰り出せるのは、ほんの瞬間の間の時間。例えば、走競技50メートル走ならば2、3秒の短い時間しか『全力』が出せない。


『全力』は何故そこまで制限され、リミッターが脳に存在するのか―――そこには、たった一つの理由がある。


 人間は、『全力』を長時間使えば身体が崩壊するからだ。


 崩壊するといっても、物理的に崩壊する訳ではない。


 筋肉が傷つき、骨はひび割れる。


 酸素を求める為に脳は動くのだが、身体が思うように動かない。


 メリットはほんの一瞬で、デメリットは長期間。


『全力』の中で最も有名や『火事場の馬鹿力』は普通人間には到底持てないようなたんすなどを軽々と持っている様に見える。実際に60兆の細胞全てが『持ち上げる』という動作を行うことでその瞬間だけ、不可能を可能に変えるのだ。そして、その行動をしている場合、大概気分がハイになっている為、自分の目に見えない傷に気付かない。全てが終わった瞬間に強い筋肉痛や鋭い痛みがおとずれる。


 だからこそ、人間はリミッターを付け『全力』を制限しようとしているのだ。


 だが、それは脳が機能し心臓が鼓動する『生命』の話であり、身体の機能が消失した『死体』は関係ない。


 @@@@@


「うわっ···‼」


 俺は思わず飛び退いた。

 その瞬間、俺が今さっきまで立っていた場所が大きなクレーターを生んだ。

 俺が飛び退いた理由には、力が圧倒的に強くなった事を肌で感じたことでは無い。この位なら受け止めることではないかと思っていた。

 だが、そう思った瞬間、体全体にある悪寒が感じた。彼らの恐ろしいと感じた程の剥き出しの『悪意』に――――後ろのピエロ男ならともかく、彼女―――アセロラには、暗殺仕込のある程度の殺意と相手自身に向けた敬意があった。たが、今の二人には、目の前の人物―――つまり俺を殺す為だけに操られた操り人形だ。

 たとえ、死んでいるが命を無下に扱う行為。俺の最も嫌う行為だ。


「お前···この野郎‼」


「ククク···死体の操るのは本当に面白い‼なんせ、一度殺した相手をもう一度殺す事になるのだからな‼」


「くそっ···悪趣味な野郎め···」


 ユウスケが毒つくが相手は全く気にしていないようだ。


「く······そ···なっ‼」


 アセロラ―――だった物が足らしき物で強く踏み込み、飛び出した。その元には足型の凹みが出来、飛び込みの威力を物語るようだった。


「アハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!死ね〜〜〜〜〜〜!!!!」


 実際、彼女の言葉なのかは分からない。『死体は二度と話さない』が当たり前のこの世界で、その死体を動かし、さらに借り染めの思考を持たせる。これ以上の屈辱はないだろう。


「···すまん···‼」


「あは〜〜」「ホホホ‼」


 俺の渾身の一撃を拳で止められるとは思わなかった。だが、その衝撃が背後に伝わり、俺の攻撃を受け止めたアセロラの背中辺りから、ボコォォ!と破裂する。


 それも仕方ない、本来こんなに長時間フルパワーが出せる訳がない。筋肉破壊、粉砕骨折を越えて人体爆発まで起きてしまっている。

 このまま、避け続ける方法もあった。だが、それは俺の心が許さなかった。


 死よりも死を求めているであろう死体をこのまま放置したくなかったからだ。


 俺は剣を後ろに構えた。


 奥義――――

「月光‼」


「あれぇ〜〜···」「ホホホ···?」


「すまなかったな···」


 まだ、彼らが死体である内にもう一度殺さないと彼らの魂が浮かばない。


俺が向ける殺意はたった一人でいい。


「滑稽な死に様だったな」


「お前ぇぇぇええ!!」


 こいつは、こいつだけは絶対殺す。死んでも二度とこんな事は出来ないように――――。


「うぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁあああ‼‼‼」


 俺はメセラ·ディファインに向けて飛び出した。

 座っている奴なら、『リヴァイント·ストライク』で十分いけるはず···!!


「殺気だった所悪いんだが、そこは私の『円』の中だ」


「は···?」


 ドッ···、と鈍い音と共に強い痛みを感じた。俺は目を痛みのする腹元に目を向けた―――そこにあったのはきれいに穴を開けられた。自分の身体だった。


「く·········そ···」


「アキヒト‼」


 ヤバイ···アイツが目覚める···目覚めさせたらいけない存在が――


 @@@@@


 グシャと倒れたアキヒトの体を見て、ユウスケとポックルは絶望を感じ、メセラ·ディファインは高笑いをあげた。


「アハハハハハハハハハハハハハ‼自分の力を信じた結果がこれだ‼未熟で未成熟な存在のくせにな‼···本当にこの世界の存在はクズばかりだ‼······さて、お前達をどう処分するか···そうだ!アキヒトといったか、そいつを人形をして、お前達を殺そうとしよう‼お前達の悲観な顔が楽しみだ‼」


「ぐっ······てめえ···‼」


「アキヒトさん······‼」


『そろそろ、そのうざったらしい口を閉じろ‼』


「‼」


 そこには、メセラが殺したはずのアキヒトが俯いたまま立っていた。


「······やべぇ」


「···え、どう言うことですか?」


「アイツが目覚めやがった」


「アイツって⁉」


「黒鬼だ···」


『チョーシこいてこの器を壊そうとしてんじゃねぇよ、殺すぞ‼』

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