EX.22 「王の咆哮」
「ここか······」
王の間――――に辿り着いた俺達にある存在が目に入った。
王の玉座を優雅に座っている人物。
メセラ·ディファイン―――付けられた呼び名は
『傀儡の王』
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「まずは······おめでとうと言っておくか」
バス寄りの低い声から発されたのはまさかの賞賛だった。
「何がだ···?」
「彼らを殺したことだよ―――何せ彼らは宇宙暗殺者の中でもかなり評価は高いんだ···まぁ『アリス』って子を最初は欲しかったけどね」
「お前が誰を欲しかったのかは知らないが···仲間を殺して賞賛されたのはあんたが初めてだよ」
「フフフ···褒め言葉として受け取っておくよ」
殺しにかかって来た俺達と殺しに来られた相手が談話をするのがそもそもおかしい状態なのだが、その俺達を前を向いて玉座から立とうともしない奴は自分の実力を信じているのだろう。
ようは強者の態度。
一見きしゃな体からは想像出来ない禍々しいオーラを奴から感じる。だが、そういう考えなら更に奴よりきしゃな俺が恐らくビックバン何発分のエネルギーを本来消費する俺よりかは圧倒的にマシだ。
それに、奴から感じる禍々しいオーラは左手のみから感じるからだ。
まるで、別の存在であるかのように――――。
「まぁ、感謝はそこまでにしておこう―――『座れ』」
「ぐっ···!」「うわ!」
まるでいきなり重力が十倍以上跳ね上がり、バランスがとれず二人は膝を突く。
「くっ···『王の咆哮』か···その左手のせいか···」
「ほう···物知りだなお前···そう、これはかつての伝説ホルク·アレクシスの手だ。まぁ私がこれを見つけた頃には殆ど奴の身体は崩壊していたがな···だがな、とりこんでやったよ」
まだ美青年と呼べた顔からオーラと同じ禍々しさを纏い凶悪な表情に変わる。
この状況で、冷静に奴の状態を分析出来たのは俺だけだ、何故なら―――
「ユウスケさん‼何であの人この状況で立ててるのですか⁉」
「アイツは『王の加護』―――いや、王自身がアイツの精神内に存在するからだ‼」
「『精神内』って、どう言うことですか⁉」
そんな二人を背後に、俺達は睨み合いを続ける。
「ほう···お前も『王』の持ち主か···名を聞かせて貰おう」
「あんたのその手の持ち主を殺した奴だよ···‼」
ギャリィィンと高い音と共に背中からムーンフェアリーを引き抜く。
「なるほど『黒鬼』か、厄介だな」
「その前に、俺に殺されるんだけどな」
「だったら、その前に死なないでくれ」
「は···?」
まるで、奴が計画していたかのようにドオオオンと爆発音が響いた。
「ウヒャヒャヒャヒャヒャ〜〜どう死ぬ?はらわた出して死ぬ〜〜?それとも血ぃぶっしゃぁ〜って出して死ぬ〜〜?」
「ホホホホホ〜‼汚物は消毒ですぞ〜‼」
「なっ···何でこいつらが···⁉」
「おめでとう···そしてありがとう。君には上等な死体が手に入った『傀儡の王』という言葉を忘れてはいないか?」
俺はこの言葉を聞いてハッとした。
「死体···そういう事か、お前こいつらの亡骸を操っているのか···‼」
「死ねぇぇ〜〜〜!」
「死ねぇぇ〜〜〜!」
「体細胞100%の力とくと味わうがいい」
「···くそ‼」
二人の悪意が俺に襲いかかる···‼




