EX.16 「アキヒトとレインボー」
「能力を使うって······どういう事だ?」
「そのままの意味だよ、私のこの―――レインボーの力を使ってみてってことだよ」
虹の試練 最後の間 能力試験と言うところか···だけど、一体どうしたら···
「言っておくけどなレインボー、お前のその身体の状態じゃ流石に無理かな」
「チッチッチ〜大丈夫だよアキヒト‼私はこうやって―――――ほら!このとおり‼」
そう言うとレインボーは突然光だし、10歳くらいの少女の姿から、妖精サイズの大きさになった。
「これは···」
「この姿は私流で言うと『フェアリースタイル』かな、でもこの姿でもちゃんと能力を使えるよ」
そう言うとレインボーは右手の平からあるモニターを映し出した。よく見てみると今まで通ってきた通路が全て映し出されていた。恐ろしい事に『絵画の部屋』の際の絵が全て無くなっている事に俺はゾッとしている。
「これは、私の権限の一つ『バーチャルモニター』七色の内の『藍』の力。こうやってアキヒトの動向を見てたし、アキヒトの能力を知れた」
するとレインボーは俺の方に指を向き指し。
「アキヒトの能力は『妖精の力を最大限まで引き出す』能力でしょう‼」
ニヤリとまるで探偵が犯人を追い詰めた様に笑うレインボー。俺は軽く笑い。
「まあ、そういう物に近いかな。俺の能力は『パーフェクト』全ての能力を操りし者だ」
「オー‼全てとは言い切ったね〜、ここにアキヒトの能力外の私がいたと言うのに」
「うっ···まあ、それはそうだけど。今、こうやってお前を手に入れるからな!」
「え〜アキヒト、エッチだよ〜!私の身体を手に入れるって!」
「変な捉え方をするな‼―――全く、じゃあいくぞレインボー『技魂』にはなれるのか?」
「もっちのろんだよ!!さあいこうか‼」
すると、レインボーは技魂の姿となり宙へ浮く。
ここで、俺は何が起きるかは分からないが、やるしかないよな。鬼が出るか蛇が出るか···‼
そうして俺はレインボーを体内に繋ぐ―――すると。
「うおっ‼何だこりゃ⁉」
俺の周りに虹色のオーラが身を纏ったのだ―――そのオーラは俺のひと回り大きく、お尻あたりには7つの龍らしき物が生えている。何だこりゃ、と思っていたら。
『そういうのはイメージで出来ているんだよ!アキヒトのはさしずめ『ドラゴンスタイル』だね‼』
「へ〜お前この状態でも喋れるのだな···というか『スタイル』って何なんだ?」
『スタイルはスタイルだよ!それは私流の言い方だよ‼アキヒトだってそんな言い方だってしてたでしょ‼』
「まあ···そういうのはなんか···な!さしずめ俺の場合は『どれだけカッコいい男みたいな顔をした俺』を何度も想像した事はあったかな」
『なんか···ごめんね‼』
「止めて!悲しくなる‼」
お〜うおうおうと泣くふりをする俺。何故かオーラは俺の顔を通り過ぎて手が直に触れれる。
「う〜ん、これは一体」
俺はしゃがみ込みそこにあった小石を拾う。俺はその小石を人差し指で撃とうとするが結局は直の俺の力、一体何なのだろうかこの能力は。
「ん···あれ?」
するとオーラ自体が腕の形になり、手らしき物が小石を掴み俺と同じ様なモーションをとった。
ということは、もしかして···
「···しっ‼」
そこから、飛ばした小石が目の前にあった壁にぶつかり半径20cm程のクレーターを作った。
「おぉ···すげぇ···」
俺はその状態に感嘆しつつ、もう一度俺の姿を見る。俺の今の状態は先程の通り7つの龍のしっぽとひと回り大きな姿、そして頭の所には謎の耳の様な物がついており、まるで着ぐるみの様な状態だった。触ろうと思えば触ることが出来、そのスライムの様な手触りに少々驚く。イメージの力でどんな姿にもなれる、言わばその姿を思い浮かべさえすれば俺はその姿をしたオーラを包むことができるのだ。だが、どんな姿になれるのかが想像出来ず、とりあえずはこの姿でいるかと思った。
「これは···『超強化型』かな?」
『違うよ、言うならば『超万能型』かな』
「へ〜···そうなのか」
能力には、『万能型』と『強化型』の2つあり、『強化型』はその名の通り、自己の身体的特徴を大幅に上げる力である。そして『万能型』は全体的パラメータがちょうど等しい状態の能力の事である。俺はこの能力自体が自分を強化しているのかと思ったのだが、レインボー曰く『万能型』だったらしい。
「ほ〜そうなのか、まあそれならばそれで思う所があるな」
そう言って俺は両手をぶんぶん振り回し、オーラが飛び散る所を見る。これは結構神秘的でとても綺麗だ。
「ありがとうレインボー、もう解除しても良いかな?」
『気をつけてくださいね、アキヒト』
ん?どういう事だ、と思った直後に強い倦怠感がおとずれ突然フラッとする。
「え···これは···」
「この能力はアキヒトの体力を使って爆発的に強くする力ですよ。だからアキヒト、体力あげてください‼」
「うっ···まあ善処するよ······」
その言葉を聞き満足したように俺の頭に座る。
「はふぅ···やっぱりここが落ち着きますねぇ」
「そうでございますか」
俺の頭の上でのんびりしているレインボーに俺は多少呆れつつ、よし‼という言葉と共に立ち上がる。
「なぁレインボーどうやったら出れるんだ?」
「あそこの道を通るとちゃんと外に出れますよ」
「そっか」
そうして俺は、その洞窟の様な所を通ろうとするが――――
「おっと、忘れてた」
俺は懐からある本を取り出せるレインボーがいた台座に置く。
「これは?」
「ちょっと色々書き記したノートだよ。もう必要ないからな」
そう言って俺はこの場を立ち去る。
これからずっと相棒となるレインボーと共に―――
@@@@@
「あっアキトくん帰ってきた‼」
「よっ、ただいまアスナ」
「ちょっと〜心配したんだからね」
「ハハハ、色々あってな」
俺達が今話しているこの場所は虹の洞窟の入り口の所だ。花も綺麗に咲いていて、虹の様に彩り豊かだ。
「あれ、この子セピアちゃん?」
するとアスナはレインボーを指差す。
「いいや、こいつはレインボーだよ。まあセピアの魂が入っているのらしいけど」
「えっ、それどういう意味?」
「まあ詳しくは後で話す」
「お〜!アキヒトじゃねぇか探したぞ‼」
すると、あの時のアスナの声に辿り着いたのか、男子二名が現れた。
「よう、お前らも······ん、何だその格好?」
「掘ってたんだよ‼生き埋めになってねぇか心配で!」
「ハハハ、サンキュ」
そういう和やかの雰囲気の中――――
「まあ、レインボーちゃんよろしくね‼」
「はい!アスナさんもアキヒトと別れてくれてありがとうございます‼」
ピッキーンと凍った世界の中アスナとレインボーは会話を続ける。
「あらあらあらあら、知らないの私とアキトくんには諸々な事情があってね···」
「どんな理由があったとしても、別れたという結果がありますからね、もうアキヒトに言い寄る権利がありませんよ」
「権利〜け·ん·り〜そんな事を言う口はこの口かなぁ〜」
「落ち着けアスナさんこれ以上はいけない」
「レインボーも止めろ‼流石に怒るぞ」
「関係ないですも〜んアキヒトは私のものですからね〜」
「はいはい分かったから」
「あれ〜アキトくんは私の英雄になるんじゃなかったのかなぁ〜」
「分かりましたからもう止めて‼」
どうやら俺は会わしてはいけない二人を会わせてしまったらしい。
はぁ···とため息を付きながら、これからこんな景色が日常となっていくのかと嬉しくなっている自分もいた。




