EX.13 「一言伝えたいこと」
どういう事だ⁉―――――そう山本は感じていた。
何も見えない。人間が司る五感の内一つが抜けることでこんなにも影響を及ぼすのか。
立っているはず······、とそう考えるが分からない。しゃがむ―――そう感じているだけなのかもしれないが、実際は分からないが地面らしき物が存在する。
ザラザラと肉体に及ぶ『触覚』 先程までの煙火の匂いによる『嗅覚』 自分の指らしき物を噛んだ瞬間に感じる『味覚』 そして最後に地面を叩いた瞬間に鳴る音を聞くための『聴覚』 その四感は確かに感じるのだが人間が物を認識するために最も大切な『視覚』が存在しない。
本当に存在しないのだろうか?光がないからこうなっているのだろう。だが、目が一向にこの環境に順応してくれない。普通、目はその環境にあわせてくれるのだが、今は、こんな状態が体内時計で七分ぐらい経っている。
おかしい、能力の仕業か?、と山本と考える内にある声が聞こえた。
「おい山本、何してるんだ?」
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七分前
俺は頭を悩ませていた。
どういう事だ、ここに落ちた瞬間何も見えなかったのにファイヤとライトが現れた瞬間から今までここの環境が見えている。
能力にはある一定の『特殊効果』が存在する。四大属性の火は『耐火』水は『水中呼吸』木は『環境緑化』土は『環境形成』―――――他にも様々な特殊効果が存在するが、恐らく今回の件に当てはまるのは『闇』の特殊効果『拒否』だろう。
『拒否』というのは簡単だ聞くことを拒否するなど、その個人にとって不利益に値する物を必死になって反応するなどその全てが『拒否』となる。
だが今回は、闇の空間では当たり前の『視覚拒否』というのと同様に『他者からの接触の拒否』なのだろう。
だからこそ、自分の能力である『火』と『光』その他様々な能力に関する力は全て発動する。
そして、今俺は『光』の『光射』を使って部屋全体を光らせているが、他のメンバーの様子はこうなっている。
まずアスナ、体育座りで半泣きになっている。更に何かのトラウマに触れてしまったのか、全身ぷるぷる震えていてまじ泣きに以降するまであと少ししか残っていないだろう。
「あっアスナ大丈夫だから、俺はここにいるって‼」
「えっ······ほんと?······でもどこ?アキトくん?」
「見えないだろうけどここにいるから、アスナ能力を使って、灯りを灯してくれ」
「え······うん」
そう聞きアスナは能力を使って『ライトポーション』を取り出す。ライトポーションはアスナが調合した物の一つで、このポーションは振る事によって明かりを灯す事が出来る。
アスナがぶんぶん振るとライトポーションが淡く光りだすようやく泣きかけた状態からいつもの表情を取り戻す。
「あっ、アキトくん良かった」
「俺はお前の状態に少し驚いてるよ」
アハハとアスナが笑う
「·········さてと残り二人にも教えないとな」
「それよりも、ここってどんな試練なの」
「恐らく、闇じゃないのかな色彩的には黒だけど、ここの鉱物の色が紫だから、淡い紫黒?ぐらいかな」
「そうか······ん?アキトくん文字見えたの?」
「いや······そうじゃないけど『虹の試練』なんだろ?つまり青·黄·藍·橙·緑·赤そして紫じゃないのか?」
「ん······もしかしたら『虹色』もあるんじゃない?」
「え······?」
「元々ここは『虹の試練』虹でしめるって何でなの?だからこそ青·黄·藍·橙·緑·赤·紫の七色があくまでも試練で一番重要なのは『虹』なのかも」
「······む、そうかそう考えるが普通だよな、とりあえず頭の片隅に置いておくよ」
「うん」
それで満足したのかアスナは優しい笑顔を見せた。
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「なぁ、俺はどうすればいいんだ?」
このメンバーで唯一光を発生させることが出来ないユウスケは少し頼りない状態になっている。
ちなみに山本は圧と圧をこすり合わせて摩擦電気を発生させて光を作っている。
「まぁ、もう次の所も見つかった所だし大丈夫だろう」
俺の目の前には入り口と同じ手を入れる場所があった。
「気を付けてよアキトくん」
「おう」
そう応じると同時に、俺は手を入れる。
カシュ、と音が鳴った
痛みはなく、手を抜いた後は特に何もなってなかった。
すると、地鳴りが起き
室内が崩れ始めた
「うわぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」
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「ここは······」
俺は無事だった。崩れ落ちる直前突然空間転移が起き、俺はこの場所に訪れた。
100色を超えた虹が何本も橋となって連なっている。
その中心には一人の少女がいた。
虹色の綺麗な髪をしていた少女だった。
しかし、俯いてて顔は詳しく見えない。
「お前はセピアか?」
すると少女は横に顔を振り
「ううん違う、セピアはセピアとしてあの場であの時に死んだ、あの子の体はもうこの世界には存在しない、もうこの世界にあの子はいないんだよ」
「そうか······」
俺は罪を償いたかった。
あの日俺なんかのために死んでしまった妖精達、セピアに――――だが、その願いは彼女の言葉によって否定される。
そうか······そうなんだ······あいつはもう······セピアはもう······この世にいない。俺はもう償う事は出来ないのだ。
「あなたの名前は何ですか?」
「名前はない···あなたが適当に決めて」
虹色の綺麗な髪をしている、俺は名前をつけるのは苦手だ。だからこそ、俺はこの世界に存在する能力の名前で妖精達に名付けている。
「なら······『レインボー』さん、あなたに一つ願いがあるんだ」
「私に願いを伝えるときはそれと同様な対価をもらうわよ」
「それでもいい······たった一言伝えてくれないか?あの子に······セピアに」
「何を?」
「『君に会えて本当に良かった』って」




