EX.98 「人魚姫」
「いくら何でも······やりすぎだ!!」
城内から岡田の怒号が発せられた。そしてその目標地点は先程格好良く登場したユウスケ。
「お前達が始めた戦いだろうがよ!!共犯だバカ野郎!!」
「オレたちは威嚇して逃げるつもりだったんだよ!!」
「——————いま、まぁ確かに一瞬本気にしたのは確かだったけどね······」
そう、彼らの背景には巨大なネプチューン王やその他兵士が縄や鎖で拘束されていた。
彼らには拘束する術は無かったが、自分達を捕まえようとしていた縄を使って逆に捕まえたのが途中の話。
「やっちまったもんはしょうがねぇじゃねぇか!!ガタガタ言うな今更!!」
「しょうがねぇで済むかよ!魚人島にやってきてうっかり『龍宮城』を占拠って!どんな極悪人間だよ!捕まるわ!!」
「じゃあやられれば良かったのか!」
「頃合いで逃げようって何度も言ったろオレは!!」
「逃げ方が分からねぇ上にアキヒトがいねぇじゃねぇか!!」
「そうそう!アキヒトくんがいなんだよ!あの人どこにいったんだよ!?」
「——————変な喋り方はやめろカレン······さん?」
「何故にクエスチョンマーク!?」
「ネプチューン様······!ご無事でしょうか!?まさか"海の大騎士„ネプチューン王がこのような······」
「む〜〜〜ん······ぎっくり腰が出ては戦いようもなし······歳をとったな。不覚じゃもん······すまぬ!」
「貴様ら······ウバボシ王子、リュウボシ王子、チョウボシ王子のネプチューン軍3強が帰城なされた折には······!その体タダでは済まんと思え〜〜!!」
「ぬう······!城全体を水で埋めれば奴らに勝ち目はないものを······!逆に全ての水を抜かされるとは······かなわんのぉ〜」
「とにかく······もう魚人島にはいられねぇ」
ユウスケは腕を組みながらそう言った。
「ここから地上に上がるための方法はどうするんだ?ここにエレベーターが置かれてあるわけではないし」
「あって船くらいだからな······だけど水圧で潰されるだろうし」
「はいは〜い!私達以外の皆の行方もわからないし!」
「なんだったら、オレ達が最初に見た大型魚獣をてなづけて——————」
三人が帰る方法を考えていると、城内にピンポーンとベルが鳴り響いた。
軍の兵士達は口を合わせて「きっとウバボシ王子だ」と言っている。
そして、その入口前——————。
リアに返してもらったリュウグウ号に乗って3強と呼ばれている三人の内一人であるウバボシは内部の状況を知らずに、城内に繋ぐ連絡口のインターホンを押し続ける。
「············ん?おかしいですね······。衛兵は何をしているのでしょう」
ガチャと共に見知らぬ男の声が聞こえる。
『もしもし誰だ?』
『わー!お前が出るなー!ウバボシ王子〜〜〜!お助けを〜〜!』
『黙ってろお前ら!!』
「·····················??」
『リュウボシ王子!チョウボシ王子!!』
「これは······兄上!何か事件の様レロレロ〜!!」
「オイラもそう思う!!父上やテティスは大丈夫か!?」
「······私です!!ウバボシです!!そちらで何が起きているのですか!?今すぐに『連絡廊』を下ろし『総門』と王宮の『御門』を開けてください!!」
『開けたらどうなる?そいつはできねぇ!!」
「おーい!お前何言ってんだよ!!正直に訳を話せ!!」
「ユウスケが恐いよ〜〜!」
『"セブンウォーリアーズ„のどなたかでしょうか?』
「ウバボシ!!そやつは"セブンウォーリアーズ„の時雨流の剣士ユーリじゃ!」
「ユウスケだよ!!なんでそんなピンポイントで外すんだよ!!」
『父上!!』
ユウスケは一瞬頭を抱え、短く深呼吸をしてまた話す。
「聞こえたろう?ネプチューンを含め、こっちには大量の人質がいる。こいつらの命が惜しけりゃあそっちで俺たちの陸上準備を整えろ!!必要なものはここから浮上するための乗り物、後はうちのメンバーの筋肉バカと人形と吉田とハルトだ」
「いや前半酷くねぇ!?」
「あっ、シーフィッシュ!シーフィッシュもお願い!!」
「今はそれどころじゃねぇだろ!?』
「条件はわかった······君たちが仲間全員と速やかにこの国を出て行ける様手配しましょう。——————引き替えに人質は全員無事に返してもらうぞ!!」
「兄上!!」
『無事にか······分かった』
「——————他に術がない······我々にとってもこの『連絡廊』だけが龍宮城への唯一の通路······他は何重ものシャボンでガードされて侵入不可能」
『一ついいかユウスケ君······』
「ん?」
『こんな状況でコレを伝えるのは不本意だがリュウギョウへの義理を欠くわけにはいかない。元【王宮守護星】『リュウギョウ』より、【セブンウォーリアーズ】リーダー『アキヒト』へ。君らがこの島に訪れたら伝えて欲しいと······伝言を二つ預かっている』
「リュウギョウか······!!」
「リュウギョウ親分······」
「そういやあいつ······その、リュウギョウって奴と知り合いだった筈······!」
「私たちを助けてくれたってアキヒトくん言ってた······!」
「············アキヒトは今ここにいねぇが······俺から伝える······言え」
『一つ目は······『ディザスターと戦うな』——————もう一つ!!『【海の森】で待つ』!!——————この二つだ』
「海の森?ディザスター?」
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『魚人島サンゴが丘』
「やりやがった!!英雄【セブンウォーリアーズ】が龍宮城を占拠したって!!」
「ええ!?」
「あいつらの目的は何なんだ!?」
ここではセブンウォーリアーズのメンバーが龍宮城を乗っ取った事が話題の持ち切りとなっている。
何故ならネプチューンは彼らにとって絶対的な力を持っていて、それに信頼していたこと。そして、そのセブンウォーリアーズの主要角であるアキヒトがつい数時間前はここにいたからだ。
「まさか······!!本当にいい人達に見えたのに」
「そんなことするなんて」
「もしかして今まで人間達が何度も消息を絶ったのも本当に島を消すため······?占いに出た未来もあいつらで間違えないんだ!!その通りに事が動いてる······!!」
「とうとうシッポ出しやがった!!」
「あいつらの仲間かわ二人······マーメイドカフェの裏にいるらしい!」
「今警備隊が捕まえに行った······!!」
そう言った直後。そのマーメイドカフェの裏側からガラスの割れる音と、男の悲鳴が聴こえた。
彼らはその方向に振り返ると——————
「モギュッ!!はい、はい!!槍死兵!!」
片手にドリルを持ったモフが軽々しく警備隊達を殴り倒している所だった。
「は〜〜〜はい!!ハルトさん病み上がりです!!手を出さないでください!!」
「何だこの生物!?」
「気をつけろ!手に何か持っているぞ!!」
「何が『龍宮城』へ来いですか!!僕たちを捕まえる気だろ!!」
「おいお前ら······」
店の中からゆっくりとハルトが歩いてくる。
「ハルト!!まだ動いたらダメだ!!」
「——————その『龍宮城』って場所に——————いるのか?」
「!?」
「つまり『人魚姫』さ······」
「お······おられるがどうした!!」
「じゃ行く。モチベーション上がった」
「行くのか!?また体張る程度の美人だったらどうすんだお前!!」
「······本当に昔からモフって俺だけ敬語なしで暴言振るよな。何か嫌われることしたっけ?」
「——————死ぬまでに考えてみたらどうですか?」
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『龍宮城【隠し絵の塔】』
「行きたい所あってんだろ?だったら行こうぜ!こんな所に10年も閉じこもってたら頭おかしくなるよ」
「······けれど······その様に勝手な事をしてしまいましたら······お城の皆様に大変なご迷惑を······」
「ご飯食べさせてくれたお礼だ!!俺がついていってやるから!!——————ドコ行きたいんだ?」
「····································」
モジモジと何度も指を重ねては離したりして言うのを躊躇っている様子が見える。
「あの······」
彼女の口から出た場所は——————
「【海の森】」
「···············」
「えっ、えっとだめでしたよね?ごっ、ごめんなさい!こんな事を言い出して······」
「いや、別に駄目とは言ってねえよ!!泣かないでくれ!」
「ご······ごめんなさい。······でっでも分かってましたからね!!視えてましたから!!」
「はいはい、わかったわかった」
すると、ごく近くに何かがぶつかる音がする。強い音が。
「また何か投げてきてんのか!?質の悪いやつだな······」
「いえ、アキヒト······これは無機物というより······」
——————
それは龍宮城内部まで響いていた。
「何の音じゃもん!——————まさかティーチの投擲武器か。隠し絵の塔の方じゃもん!!テティスが危ない······!!衛兵はついておるのか!?」
「いえ······全員こちらに捕まっています!!」
兵士の一人が慌てて答えるとネプチューンはユウスケ達に向けて。
「背に腹はかえられん!!【隠し絵の塔】は城の北東じゃお前達すぐに行け!!」
「なんで人質に命令されなきゃならねぇんだ」
「黙れい!!テティスはわしの友人の一人娘じゃもん!!訳あって常時命を狙われておる!!この機に娘に何かあったらおぬしら!海溝の果てまで追い立てるぞ!!」
「つまり人魚姫ってこと!?」
食いついたのはカレンだった。
「だったら私が行くよ!GO!!」
「ちょっ!待てカレン——————」
「サイン貰ってこよ!」
「アンデルセンに頼め!!」
「待たれい少女よ!!」
「右大臣!!」
軽快な足取りで言われた方向に走り出したカレンに右大臣の立場である彼はこう言った。
「縛ったままで結構だ!!私も連れて行ってくれ!!【隠し絵の塔】は私の管轄!!姫の身に何か起きては、私は死んでも死にきれん!!」
「いいね、その性格」
カレンは言われた通りに縛ったまま、俵持ちの要領で彼を持ち走った。
——————
「【海の森】にずっと行きたかったのです······10年間、ずっと······!けれども塔の外は危険だと皆様注意してくださいますし······わたくしも外に出るのはとても恐くて······アキヒト様、レインボー様······わたくしを連れ出して下さるのですか?」
「ああ」
アキヒトは快く返事した。
「——————本当にわたくしを守って下さるのですか?」
「ああ、任せとけ。大丈夫だ」
そう言うとテティスは嬉しそうに顔を明るくする。
「——————まあでも外に出たらばれちゃうかもしれないからさ。ちょっと工夫はするけどな······なあレインボー」
「?」
——————
「人魚姫さ〜〜ん!サインください〜〜!!」
「目的がごっちゃになっているではないか!!——————少女よ塔の周りを見てくれ!!」
「え?」
ツギハギの修理で守られている塔の周りにはいつものようなナイフや斧ではなく——————
「人間達が塔にぶつかる音だったのか!?何たる奇行······!人に非ず!エドワード·ティーチ!!」
「ええ!?え、エドワード·ティーチ!?」
カレンは聞き覚えのある人間の名前を聞いて驚く。しかし——————
「いや待て······奴ら立ち上がる······!!これはまずいぞ······この侵入不可能の龍宮城に!!まさか敵兵が送り込まれたと言う訳か!?」
まるで屍から蘇るゾンビの様に飛ばされた人間はノロノロと立ち上がり血を大量に流しながら武器を持って立ち上がる。
「これは······奇襲だ······!!?王が危ない!!姫が危ない」
——————
「よし音がやんだ!行くぞ!!」
「バレても知りませんよ!!」
「はっ、はい······メガロ、お願いします!!」
「いっけええええええええ!!」
隠し絵の塔の扉を飛ばして出てきたのは、虹色のオーラによって何十倍にも包まれたメガロに乗ったアキヒトとテティスだった。
「【海の森】まで!!」




