EX.97 「絶望の兆し」
あれは幻影だったのだろうか——————
ほんのちょっとの気まぐれで、水晶玉を視てしまったシスター·シャローはとある未来を視てしまった。
少年——————だったのだろうか。それよりも少女と言ったほうが良いような顔つきに少年の体つき。
そうそれは、先程王様が連れて言った少年に酷似していた。
その上、彼の後ろには魔女ガールや眼鏡ボーイ、そしてここで療養をとっている金髪ボーイに人形ちゃんがいる。
少年は高らかに吠えた。
「蹂躙せよ」と。
それはここで捕まっていた人間の恨みなのか、憎しみなのか、人間は私達人魚や魚人をなんの躊躇もせず、殺しまわった。
ネプチューン軍も、ネプチューン3兄弟も最後にはネプチューン王すらも殺されていき——————。
最後には、少年が私の身体を貫く姿を視てようやくこの呪縛から解き放たれた。
「······!?ハァ······ハァ、ハァ······」
自分の身体を触って、貫かれていないか確認する。それほどのリアリティがあった。
何度かおえつをし、胃内にあった物を吐き出して、今の現状を理解する。
テティス様は······もうすぐ来る人間は希望だとおっしゃっていた······。だけど、私の目に、水晶玉に映ったのは最悪の未来。
100パーセント死の予兆。彼女に突きつけられたのはそれと同様だった。
慌てて外に出て兵に知らせようとしたものの、人魚の移動手段であるシャボンを付けていないのに気づく。
バブルサンゴから放出される時間でさえ、じれったかった。
ようやく放出されたシャボンに乗って外に飛び出す。
幸いにもただの兵よりも遥かに優秀で信じられるネプチューン3兄弟がいた。
私はその中でも一番体格の良いウバボシ王子を大声で叫び呼ぶ。
異変に気づいた彼はすかさず倒れ落ちそうだった私を抱え、安定させる。
私は、思い出すだけで吐き気がするような思いをしながら話す。
「あの子が······ミヤタアキヒトが······!この世界を滅ぼすわ······!!」
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「本当に······ありがとうございました。先程は大変な非礼を······どうかお許しください」
「ん〜〜?まぁ別にいいよ。匿ってくれたんだろ?それだって俺も感謝しているんだし」
兵士達がいなくなった後、アキヒトはようやく毛布を外され、あぐらをかいて座った。
「お名前は······アキヒト様とレインボー様でよろしいのですね」
「ああ」
「はい······それよりもサメ怖くありません?真正面から見られると私でも怖いんですが」
「まぁ、小さな頃から一緒にいますから」
「小さな······今と変わんないじゃないんですか?」
「お前もちっさいくせに悪口を言うな!」
「私だって本当の本気で頑張ればグラマラスなバディになれるんですから!!」
「あーはいはい」
テティスさんの手のひらの上でジタバタ暴れているレインボーに対して棒読みで対処する。
すると、水色の髪に、水色のドレスと、天女の布のような物を身につけている彼女は、レインボーの身体をつつきながら。
「へぇ、これが妖精族······本当に小さいんですね」
「ちっちゃくないですぅ〜〜おっきいです〜〜!!」
「肝がな」
「ムッキャァァァァァ〜〜!!」
頭突きしてくるレインボーを避け、先程からなにか話そうとしているテティスさんを見る。
「えっと······アキヒト様は人間でいらっしゃるので······悪いお方なのですか?」
「ん〜〜人によるかな〜〜」
人によっては俺の行動は断罪すべきだと言うかもしれないし、それを良しとする人もいる。ようは人によるのだ。
「お仲間の方々はウチの兵士達に捕まってしまったと······」
そうテティスさんはシュンとするが、俺からしたらあいつらを信じているから特に気にしてはいない。
俺は「別にあいつらは大丈夫だ」と言って、それよりも気になった事を聞く。
「そんなことよりもさっきのオノは何なんだ!?どんな怪力の奴がどこから投げてきたんだ」
あの後軽く調べると、人のサイズ(ようは俺やテティスさんの大きさだ)位の大きさがあった。
こんな物を投げつけるなら、さっきの王様や巨人族位だろう。そのまた、その行動に悪意がある感じで。
すると、先程まで言い淀んでいた口をテティスさんは開いて。
「犯人は······わかっています······。——————エドワード·ティーチ様と言うお方で······結婚をお断りしたわたくしを恨んでおいでなのです······その殿方は『必中』の能力を持っておられ······いつ、どんな場所からでも"的„と定めたわたくしの命を狙う事がおできになるらしく······ですから外は危なくて、わたくしはこの『隠し絵の塔』から一歩も外へ出られないのです······!!」
「——————もう······10年になります」
「10年も!?そりゃぁ退屈だな〜」
俺はテティスさんから貰ったパンを食べながら話を聞く。
「——————やっぱりわたくしにはあなた様が悪い人間には見えません。"人間„でしたらやっぱり地上にあると言われる太陽も見たことがあるのですか?——————それに······色々な種類の"お花„やお体が毛だらけの"お動物„······"お森„という緑色の場所へはいらっしゃった事がありますか?」
「とりあえず全部今言った事は行ったなぁ」
すると、先程から千切っては渡しているパンを口いっぱいに頬張っているレインボーにテティスさんは興味を持ったらしく。
その手で——————レインボーの頰を強く押した。
「ぶ!···············いらないことしないでください!!!!」
あちゃ〜としか言えない状況だった。
「そ······そ、そんな······大きな声で責立てないでください······やっぱりこわい方······レインボーさま······でも、分かってましたから!」
「いらない事しなければ怒りませんよ!!」
何かこの会話にシンパシーを感じる。
「ところで、その······『分かってましたから!』って何なんだ?」
「えっと······わたくしもエドワード·ティーチと同じように『占い』に酷似した能力を持ってまして······」
「占いの能力か······レインボー知ってるか?」
するとレインボーは顎に少し手を当てて悩みこむ。最近は俺よりもレインボーの方が能力に詳しいので聞くことが多いのだが、ここまで悩むのは珍しいくらいだ。
「おそらくですが······『星稜占』の能力だと思います······かなりマイナーな能力ですね」
「へぇ〜漢字読みの能力もあるのか。じゃあ『星稜占』?」
そう呼んだ時、波状型に円が生まれる。そしてそこから——————
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!」
一見ランプの精を連想させるような飛び出し方と見た目をして現れた。
「おやおや〜マスターではないですか?固有能力をお持ちなのに私を使うとはよっぽどの事態。まぁ視えてましたけどね」
そう言う系統の言葉好きなんだな。
「じゃあマスター。何か聞きたい事でも知りたい事でもありますか?例えばそこの虹の妖精が夜中マスターの服を——————」
「ストップストップ!!黙りなさい!私達が知りたいのはそこの人魚があなたと同じ能力を持っているかを——————」
「持っていないよ」
「······え、とそれはどういう事ですか?」
「麗しき少女よ、君は少し思い違いをしている。能力というのは水晶玉なしで、自分の体内に存在する物で視る事が出来るものだ」
「故に、私と君は能力の差が違う」
「だけど——————君には『天命』が付いている。おそらくだが君が無能力者故の結論だろう。本来ならば存在感で能力でかき消されるのだが······例外はマスターの特異再生能力やそこの虹の妖精ぐらいだ」
「天命は存在ではかき消されるが、本来ならば圧倒的な力を持つものだ」
そう言った後にくるりとこちらに向いて。
「すまないマスター。少しおっかない話をした。出来ればそこのあの彼女と外へ出掛けて欲しいんだ」
「ん······でも——————」
「大丈夫だマスター。あなたが一緒にいればあの子は無事だ」
と烙印を押されてしまった。
だったら······。
俺はさっきから空をウロウロ泳いでいるサメをみて。
「この方法なら行けるかもな」
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『魚人街【ノア】』
巨大な転覆船でできたその街に、エドワード·ティーチは訪れた。
その目的は——————
「キャプテン!エドワード·ティーチ様がお着きにぃ!!」
うおおお!!と盛り上がる他の面子を前にエドワード·ティーチはその両足でとある男の所に進む。
「ん〜〜〜遅くなってスマンねぇ······ちょっと火山爆発に遭ってなぁ。オタクかい?悪名高きディザスターってのは!!」
「『悪名』はお互い様だ······イカれたエドワード·ティーチ!!」
「よろしく頼む······」
「おっと握手かい?そりゃマズイちょっと待ってくれよ······。
レオナルド·ディザスターが右手を出したときにエドワードは少し手を引っ込める。そして手袋を付け、これでいい、と言って手を繋ぐ。
ディザスターは少し頭を捻ったがエドワードから気にするなと言われ、気にしないようにした。
ここからだ······。
「バハハハハハハ!!こちらこそよろしくだエドワード·ディザスター!!」
「メリットは互いにある。目的は一つだ!!!!魚人や人魚のプライドも持たねぇネプチューン軍を叩き潰し······!海神ネプチューンの首を取るっ!!」
「「そして、リュウグウ王国の"完全崩壊„だ!!」」




