EX.96 「未確定の未来」
「まったく、あなたという人は!!ご自分の立場を弁えもせず。また勝手に城外へ!護衛兵も引き連れず外海に降りるなど言語道断!!何かが起きてからでは遅い手です!!今、この国がどういう情勢にあるのかあなたは——————」
「·········はい······はい·········以後気をつけるんじゃもん······」
怒られた······!!
「ん?ユウスケは······」
「それよりホレ······!例の我が義娘の言っていた人間らしき人物達を連れてきたのじゃもん!サァ客人達を饗せ!ところであの子は?テティスはどうしておるのじゃ!」
「——————それが国王様。つい先程また············」
「························」
ひそひそ話の中身は一体何だったのかは分からないが、突然ネプチューン王は激昂しだして。
「そんな折にあなたが突然行方をくらましては城内の不安を煽る事になるとわからんのてますか国王!!そもそも——————」
「·········本当に·········以後気をつけるんじゃもん······」
また怒られた······!
この場に居合わせた三人はただただ終わりのなさそうな光景を見守るほかなかったのだが······さっきからナマズっぽい人「かなわんなー」としか言ってないんじゃないか!?と岡田がツッコミかけたのはカレンしかしらない。
「——————それで、王自ら客人をお連れ頂いた所、真にもうしわけないのですが重大な話が!!」
そう、リュウグウ王国右大臣——————ヨッド·テシャン(タツノオトシゴの人魚)は言い。
「ええ、今しがたフカボシ王子より連絡が入りまして。ほんとかなわんなー」
そう、リュウグウ王国左大臣——————ペリオ·マネッジ(ナマズの人魚)は言った。
「ん?フカボシが······何事じゃ?」
「実はですね······」
「あれ?アキヒトくんは?」
三名が密かな会話を始めた中、ようやく三人はアキヒトの不在に気づく。
「さっきまでここにいたんだけどな······もしかしてここにいないユウスケを自分で呼びに行ったのか?」
「あの子何神の聖域をウロついているの!?」
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「んん······ユウスケいないな······。って言うかここで釣りができるのか?そもそも論だけど······」
すると、食事を送るような台と、空になったそれを運び戻る兵の姿があった。
そしてその兵はアキヒトの存在に見向きも触れずその場を去っていく。
「もしかしてここが宴会の場か?ユウスケが戻ってきているかもな」
俺は間食も出来ずに、それでいて気を失う前から何も食べれなかった状態だったので、気絶の時間から合わせると一日はゆうに越している。腹の音は先程から鳴ってはいたので、少しばかり先に頂こうかなと思い扉を開ける。
巨大な門であり、分厚く硬そうな扉であったので、それなりと重さは覚悟していたのだが、いざ引っ張ってみると思いの外軽く開いていった。
「おお、真っ暗だ。じゃあ宴会場ではないのか······」
ユウスケがドッキリ企画を用意していない限り、暗くする必要がない。
まあ、そんなことよりも俺の目に入ったのは机に置かれてあるご飯。
「アキヒト······犯罪ですよ」
えっ、犯罪だっけ?あんまり憲法は覚えてないんだよな。
「じゃあ俺は何を食べればいいんだよ」
「私を食べてください······とは流石のアキヒトの飢餓状態では言いませんよ——————ガリガリに痩せてますしね······じゃああそこの料理を私が作り直す——————」
「却下」
「じゃああの料理を私が一度分子的解剖して一度素材に戻して別のメニューを作り出すのは?」
「時間がかかるから却下」
「じゃあさっきの扉に突き刺さっていた剣や斧やモーニングスターは?」
「俺に兇器を食べろと!?」
しまった声を出しすぎた。
俺は慌てて口を塞ぐが······。
時すでに遅し。
「きゃ······!!誰かいらっしゃるのですか!?」
その声と同時に照明の明かりが付き、思わず腕で目を覆う。
「うわああああ!?」
前言撤回をさせて欲しい。確かに犯罪だ。テンパり過ぎて一度犯罪を煩雑と読むくらいに犯罪だ。だって——————、
女のコの部屋に不法侵入は流石にまずいだろ!?
「どちら様でいらっしゃるのですか!あなた様は!?」
「えっ、ええとその······あっと······」
俺は狼狽えながらもなんとか自分の今置かれている変態というプロットをレッテルを剥がそうと考えている中。
「あなたもわたくしの命を取りに来たのですね!!ですけど怖くなんかありません!!わたくしは視ていたんですから!!」
「ん?」
ボロボロと涙を流す彼女の元、俺は「視えていた」という言葉に疑問を覚えた······が!!
「うええええええん!!誰かぁ〜〜〜!!義父様ぁ〜〜!!義兄様ぁ〜〜!!」
「ちょっ!ちょちょちょ······待ってくれ!俺何もしてないって!!」
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「フジワラァーーーーーーッ!!」
廃船漂う海の中、どでかいチョウチンアンコウの光の中、とある大魚人に引っ張られて前へ進む。
「返事はまだ来ねぇのか!?テティス姫からの手紙の返事は!!」
「うんうん。まだらなあれーふぇん船長」
「オレは返事をもう何年待ってる!?」
「んー10年くらいかなあ?来ねぇねぇ、そろそろ来るかなぁ」
「偏にそれは憎きネプチューンのせいなのだ!!奴の狙いは彼女の持つ『真時視』を我が物にするため——————の筈だ!!それが証拠に姫はもう10年もの間『甲殻の鉄』で作られた『隠し絵の塔』に閉じ込められている!!何と痛ましい!!オレ達は愛し合っているのに!!——————の筈だ!!」
時々「——————の筈だ!!」と言っているのは確実性が無いからだ。
すると男は船に乗せていた大きな薔薇の刻印を印された斧を持ち上げて。
「今日も一輪の······バラの絵の入ったオノを贈ろう」
ドッせい!と掛け声と共に斧を投げ降る。
しかし、まさかの斧が真逆の方向に急転回し、船柱を切り落とす。
「おわ〜〜〜!!キャプテン戻って来やしたぁ〜〜!!てんで的外れです!!」
「バッカモオォン!!オレは的を外さねぇ!!——————筈だ!!テティス姫!!——————広い海底をどれだけ彷徨い続けても······お前ほど密やかで美しい女はいやしねぇ!!結ばれる愛ならよし!他の誰かと生きるお前などあってはならない!!そのときは······死ね、テティス!!オレに"愛を誓う„か!!"死„か!!」
「お前の人生は"DEAD or MARRIAGE„だ!!」
その人物は、かの大海賊時代。戦死した筈の人物。エドワード·ティーチの遠い子孫。
エドワード·ティーチ七世。
その人物は高らかに笑う。
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『リュウグウ王国【龍宮城】』
彼女の泣き叫ぶ声により、城内は一瞬にして大パニックに陥る。
「『隠し絵の塔』の方だぞ!!」
「テティス姫様の泣き声がっ!!」
「塔の警備の者はどうした!なぜ誰もいない!!」
「申し訳ありません。警備交代の手違えで!!」
——————
『うわあああああああああああああああん!!』
「おいおい!おいって!!ごめんって!俺はちょっとご飯を戴こうと思った人間だって!!」
「うっ······うるさい······!!耳よりも頭に来るような······何故?アキヒト!ちょっと静かにさしてください」
この場でわかったよ、とは言えなかった。
『人間のお方がわたくしの命を取りにお部屋の中にいらっしゃっておられます〜〜〜〜!!』
「アキヒト!!」
「!?」
その瞬間。アキヒトの耳に入ったのは、水色の髪の美しい少女の泣き声では無く。金属が、言うなれば鋭利な刃が空気を切り裂いていく音。
彼の目に入ったのは——————微量に開いた扉から、斧が投げ込まれる最中だった。
そしてその大きな斧は彼女の身体を切り裂くかのように襲いかかる。
「え······」
彼女は突然過ぎて動けてない······!間に合え!!
「レインボー!!」
瞬時息の合ったタイミングで斧と彼女の間に滑り込み、斧を受け止める。
だが、勢いは止まらない。
アキヒトはそこから大きく仰け反るように——————あらたに投げるように後ろに飛ばす。
すると斧は壁にめり込み、勢いを失くす。
「なんでオノが!?どこから飛んできた!?」
少なくとも俺の入ってきたあの門くらいしか入れる所はなかった筈なのに······。
「テティス姫様〜〜!!今参ります〜〜!!」
「見ろ!扉が開いてるぞ何事だァ!!」
「テティス姫!!ご無事でありますかァ!!」
扉が大きな音をたてて大きく開き、そこから多数の兵士達が現れる。
テティスは何か察したように、アキヒトをベッドの中に押し込む。
(何するんだ!離せ!)
(お静かに······!!)
「どこかおケガは······!?」
兵士を代表してヨッドは言う。
「尋常ならぬ姫様の泣き声、心配しましたぞ!この扉一体誰が!?侵入者でありますか!?」
「······ご······ご心配をおかけしました······何でもございません······何か······悪い夢を見てしまった様で······」
「······はぁ——————さようですか······何事もなければまァ良いのですが。······ああそうだ、少しお耳に入れておかねばならない事が······」
「ん?」
もちろん反応したのは毛布に包まれているアキヒトだ。
「例の——————姫様の占いに現れた英雄"セブンウォーリアーズ„の件ですが······どうにも厄介な事に」
(··················??)
——————
「と、言うわけで行方知れずの人間達を率いてこの『魚人島』を"壊す疑い„——————その、未来の"不確定危険人物„として"セブンウォーリアーズ„全員城の牢獄へ幽閉する事が決定いたしまして——————先に龍宮城へ来ていた剣士はすでに身柄を確保!」
(ユウスケのことか······?)
「先程到着した三人の二人の仲間もおそらくもう拘束完了の頃······!!しかし、一緒に入った筈のリーダー"アキヒト„が勘付いたのかまさかの失踪······!城のどこかに潜んでいると思われますので充分ご注意を」
(ここに本人いますよとか、絶対にいえねぇ······)
「魚人島なにいる他の仲間達も順次捕え、国の安全は必ずやお守りします!せっかくの占い。宴会どころかお縄を差し上げる事になろうとは至極残念」
そう言い終わると、ヨッドが首にかけた時計を見て、「5分を過ぎましたので、我々はこれにて」と去っていった。
@@@@@
『龍宮城【正面玄関】』
「取り押さえんかぁ!!たった二人の人間だ!!」
「カレンちゃん!トモキちゃん!!これ以上逆らったら本当に罪になっちゃう!!」
「——————だけど、大人しくする理由がないよリアさん。逆らわねえと捕まるだけなんだ!理解不能の因縁フッかけてきたのはこいつらなんだ······!!」
「未来に私達が何をしようとそれを理由に今捕まるなんてヤダ!!」
「お望みなら、いくらでも銃弾ぶち込んでやるぜ······!」
「くそっ······!『魔王』の一角を倒した人間達だ。流石にトップ不在でも相当強い······!」
そこには、岡田とカレンが二人で倒した兵士達が転がっており、その中で岡田は銃弾を、カレンは"キラメラ„の装填準備をしていた。
「怯むな兵士たち!!見ろ、これこそが予知された未来の序章だ!!必ず仕留めよ!この国を守るのだ!!」
「——————よく言うなぁ!お前らが仕掛けて来なきゃ。俺たちが暴れる事も無かったのに!!」
そう言って岡田は的確に兵士の腿に銃弾を当てる。
戦士としては致命傷だが、生物としてはさほど無事である一撃。
カレンだってそうだ、"キラメラ„を直撃させるのではなく、直前で爆発させて、その風圧で倒していっている。
生殺与奪の力を持つ二人は常に相手を生かす方法をとっていく。
第一にここで殺し合う必要はないと考えているからだ。
常に余裕を持って迎撃していく——————それが今二人が考えている敵対法。
次々となぎ倒されていく兵士達を見て、ペリオ·マネッジは焦りの汗を流す。
「ネプチューン様!!お力を!!」
「フム······未来予知などで······それに未だ未確定の状態で人を捕らえてよいものか······考える時間が欲しいんじゃもん!」
そう言ってネプチューンは戦槍をもって突進していく。
「したがって······!一旦捕まってくれい、お前たちっ!!」
「!!?」
「ソイやっ!!」
ダダッと走る音が聴こえた瞬間。一人の人物がネプチューンの武器を止めていた。
その人物は——————
「ユウスケ!!」
「お前······牢獄にいたんじゃ······」
「——————所々手薄だったもんで······出てきた!!」




