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FILE4:永久の戦い

執事は取り敢えず自分の有り金全てを持って、外へと出た。

屋敷にあるものも持って行きたいが、その全てを持ち出すのことは現状では不可能だ。

此処には宝石の類はまだしも、花瓶や棚など高価な骨董品が多くある。


「まぁ、それはまたいずれで構わない」


そのうちこの屋敷も売り捌くのだ。

時間は幾らでもある。

死体の片付けもあることだし、屋敷の物品回収はその時でいい。

重厚な門扉を閉じ、屋敷に向かって薄笑いを浮かべると鼻で嗤った。


「金さえあれば、此処にも用はない」


此処に勤め始めて十数年。

初めから金が目的で勤務していたが、漸くその願いが叶った。

人に避けられるこの屋敷でも、勤めてみれば何てことはない。

変わっているのは容姿と些細な能力だけで、決して無茶な事は言わなかった。

今日殺した最後の末裔以外は――。

だがその狂った子孫も死に、自分を妨げる者はもういない。

執事は踵を返して、たった一本の街へと続く道を歩き出した。

もう振り返ることはしない。

全てが自分の思う通りに運んだと思い込んでいるから…。







執事が遠く離れ、姿が屋敷から見えなくなった頃。

それを見計らったかのように屋敷の空気は一変した。

屋敷には一人の笑い声が木魂していた。

それは静かなもので、しかし何の音もしない此処では十分な大きさだ。

笑い声は邸主である人物の部屋から洩れ出ていた。

中にあるのは血で染まった凄惨な空間と、血塗れの一人の男の死体。

しかし、その死体は小刻みに震えていた。

笑いに呼応するように――。

声の主は、赤い水溜りから身体を起こし、壁に体重を掛けて座り込んだ。

その間もくすくすと笑い続ける。

己の血で張り付く髪を掻き揚げると、狂気的な赤い相貌が覗いた。

その黒髪の男は、紛れもなく死したはずのルゥアだった。

彼は彼方此方に斬り傷が残されているのを自分で眺め見て嘲嗤った。


「随分と派手にやってくれたものだな…」


相当、恐怖心が高まり、鬱憤も溜まっていたらしい。

身体のいたる所が深く斬られており、臓器や骨が外へと飛び出している。

ルゥアはそれらを適当に体内へまた押し込むと、傷跡をなぞった。

すると傷跡は残っているものの皮膚が繋がり、中は見えなくなった。

それを見てルゥアは薄く笑った。


「折角教えてやったものを…。本当に爪の甘い男だ」


どうして生きているのか。

執事が戻ってくれば、お決まりの様に血相を変えてまたそう言うだろう。

その答えはこうである。

“先ほど唱えたフェネリット家の禁呪がこれを可能にした”

それは不死の身体にし、所謂ゾンビとなる呪い。

陽さえ浴びなければ、永久の命だ。

故にこれからは斬られただけでは死ぬ事はない。

ルゥアは数十箇所に渡る傷に指を走らせていった。

全てを癒し、先程までとは正反対の漆黒の衣服を纏う。

それでも見える傷跡には、包帯を巻きつけて隠した。

窓辺に移動すると、執事が去ったであろう方角をみて笑みを浮かべた。


「さぁ…、第二ラウンドを始めようか……」


いつかお前は此処を売る為に帰ってくる。

その時に生きている俺を見て、お前がどんな顔をするか…。

それが俺の生涯の楽しみであり、醍醐味だ。

その為だけに俺は生き続け、此処でお前を待とう。

ルゥアは冷酷で狂気じみた声で、自身が飽きるまで笑い続けた。





精々これからも楽しませてもらおうか



もっと…、もっと……



俺が満足するまで



俺の遊戯に最後まで付き合って貰おう



この『屍の住む館』という舞台で――――




     ―END―



妙な感じですが、限界なので「屍の館」はこれにて最終話と致します;

彼等の今後は皆様のご想像にお任せします。

ただ突発的に続きを書くかもしれませんが…。

今度はルゥアも出てきますが、別のキャラの物語を天界させる予定です。

これを「幻獣の館シリーズ」とします。

此処まで狂気的な話を読んで下さった方々、有難う御座いました!

点数だけでもつけて頂ければ幸いです!

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