あたしのプロローグ
調子にのったからいけなかったんだ…
あたしは泣きたくなると家の近くにあるお寺へよく駆け込む。今日もご多分に漏れない。ていうか今日はだいぶヤバイ。泣きたくなる、というか既に泣いてる。わりと田舎にあるこのお寺には大して参拝者が来ないし、住職さんもおじいちゃんだ。気を使わずに泣ける。。。
基本イエスマンなあたしは委員長をやっていた。押し付けられた訳じゃないけど、不真面目ではないってところから、誰かがあたしを推薦してクラスのみんなもあたしならうまくやれるって言ってくれた。
みんなの英語の宿題を集めて、先生に提出するためにそれを運んでいるとき、あたしは盛大にコケた。漫画みたいにぶぁーっと紙を撒き散らしながら。
一人で拾いなおしているとき、時田君に助けてもらった。これがあたしの運命を狂わせてしまったキッカケ。
時田君は隣のクラスのイケメン君だ。でも彼女はいないらしい。あたしは自分が可愛くないことを理解してるから、最初、時田君は別の世界にいる生き物と思ってた。でも時田君は冴えないあたしに対して、「大丈夫?ケガしてない?そっか、よかった」と言ってはにかんだ。少女漫画の王子さまばりだ。
そこからちょくちょく時田君からあたしに話しかけてくるようになり、仲良くなった。仲良くなったから恋心を抱いてしまった。あたしだって少女だ!恋ぐらいする。
ーそして告白した。
時田君は、好きの気持ちがよく分からなくて、そんな状態で付き合うのは失礼だから、もっと仲良くなったら改めてお付き合いして欲しい、と言っていた。悲しかったけど、誠実な断られ方だから仕方ないと思った。
ーーーある日あたしが忘れものをとりに教室に入ろうとしたとき男子の話し声が聞こえた。教室の扉のガラス越しにそっと覗き込むと時田君もいた。
「あの女マジやばくない?おれ告られたんだけど」
「…え?」
時田君の声みたいだったけど、違うよね…?
「今年の告られ目標100人だっけ?よくわかんねぇ目標だけどこれで何人?64?」
「今回で65だ!」
「いやぁ委員長って意外に面食いなのな、あの面で」
ギャハハハハハハ、と。
間違いなく時田君の笑い声で。
普段女子からキャーキャー言われるイケメン顔で。
きらきらした王子様じゃなくて、クソ野郎の方かよ…あたしはその場から走って逃げた。
あの忌々しい笑い声から。
あの忌々しい男子たちから。
あの忌々しいイケメン顔から。
「好きになったのはてめぇの顔じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
あたしは夕日に向かって叫んだ。
もうイケメンなんてこりごりだ!勝手に顔に惚れてるとか思いやがって!というか男子ってひどいな!嫌だ!もう絡みたくない!あたしは百合の世界で生きる!←
あたしはしょんぼりするタイプじゃない。わんわん泣いたからもう帰ろう!
明日アイツの悪行を暴いてやるんだ…
目を赤く腫らしながら、決意を新たにした。
そして目を擦りながら階段を降りようとして、、、
あたしは足を滑らせたーーーー
★
あたしは光に包まれていた。
なんだろぽわぽわする。それと眠い。
光の色が変わった。
?なんか鉛色のような…
わかった、曇天なんだ。
急に寒くなった。白いものが降ってくる。雪だ!
おかしいな?いま秋のはずなのに…
周りを見渡…そうとしたけど体が動かない。
あれ?心なしか手も足も小さいような……
これは…赤ちゃん?あたし赤ちゃんなの?
最近流行りの転生ってやつ…?
どうやらあたしは赤ちゃんになって、捨て子なのか外にいるようだ。親は近くにいないことがわかる。
だからあたしの頭の中の疑問符には誰も応えてくれそうにない。
あぁ…
寒いな…あたし転生した矢先にもっかい死ぬのかな。生まれ変わるならお姫様とかがよかったなー。高級そうなドレスに身を包んでごきげんな感じで「ごきげんよう」って言ってみたかった…
寒い…
冗談もあんまり考えられなくなってきた。
さっきよりも空の色が舞い落ちる雪で白くなった。雪があたしの肌へと落ちてきて、体温で溶けた雪は涙みたいに流れた。
ふと男の人が近づいてくる。さっきまで助けてくれるなら誰でもいいと思っていたのに、あたしの記憶がフラッシュバックした。
男はやだ!女の人、助けて!
心の中で叫ぶと何かがほんのり光った気がした。
あたしの顔に影が落ちた。
「おや、こんな日に捨て子かい…?」
さっきの男性ではなく、修道女のようなおばさんがあたしの顔を覗きこんでいた。
「あぶぅ」
ありがとう、と言ったつもりだったけど、あたしは本格的にあかちゃんらしい。喋れないし、身体も動かせなかった。
ふわっと体が宙に上がる。持ち上げられているらしい。
「こんなに体を冷やして…また仲間が増えるね、みんなが待ってるおうちに帰るよ」
どこに行くんだろう?
でもおばさんの体温が近くにあることで、とても安心する。あたしとりあえず眠るね、おばさん。
今日はいろいろあって疲れたや、、、
そこで景色は暗転し、あたしの記憶は一旦途絶えたのだった。