プロローグ
初投稿です、誤字脱字アドバイスよろしくお願いします
普段であれば夜と言っていいはずのその時間帯、眼前に広がっているのは夜空と言うには程遠く、まるで世界は終わったと唐突に突きつけられたようにも感じられるその空は赤と言うには汚らしい、赤の絵の具に適当な色をぶち込んで出来上がったヘドロのような色とでも言えばいいのだろうかーーーそんな空が広がっていた。
見慣れていたはずの風景は崩れ去っており、住み慣れた王城も今ではただの瓦礫とかしている。何が起きたのかを探ろうにも意識はすでに朦朧としており、死に体の身体を無理やり、いや、自分の意思とは関係なく歩みを進めている。一つのことをただただ繰り返す機械のような存在に成り下がった気分だった。この体がどこを目指しているのか、はたまた何も目指していないのか、そんな事を考える余裕すらない。
何故か脳裏を埋め尽くすのはたった一人の姿だった。
瓦礫に足を取られながらも足は止めない。暫く歩いていたのだろう。気づけば円形状に瓦礫が広がった場所に出ていた。そこはかつては道であっただろうと予測される石畳が散乱し、酷いところは石畳の下の地面が顔を出し、さらにはクレーターになっている。そのクレーターの近くに何かが転がっているのが見えた。自身の体はその転がっているものに近づいていく。朦朧とする頭の片隅でなにかが、近づくなと警報を鳴らしているような気にもさせられるのだが、そんなことは御構い無しに自身の身体はその転がったものに近づいていった。
人、それも、すでに事切れていることが遠目からでもわかるくらいに近付いた。三人の人間が重なり合っているようであり、一番下の人物は遠目からでもわかるほどに体の関節が伸ばし切られていた。さらに伸ばし切った手足を一纏めに結び付けられており、顔は首をゴムのように伸ばし股間部分からその結びつけられた手足の間をくぐり元の頭がある位置に置いてある。それを潰すように、身体中を魚の開きのように切り開かれた人物が重なりその開かれた、かつて臓器などがあった場所には頭、指、手など関節ごとに切り分けられた人物が詰め込まれていた。
「親父、上兄、下兄……」
かつて四人で馬鹿なことをしていた人物達だとわかるのにはそう時間はいらなかった。これ見よがしに置かれたかつての家族を見つめながら溢れた自身の声には絶望感、敗北感の二つを感じさせる掠れに掠れた声。絞り出した声と同時に喉の奥から沸き上がってくる激痛、かつての家族の前で嘔吐し、地面を汚すのはどす黒い血。よくよく見れば自身の体も酷い有様である。折れ曲がっている右手、左足なんて元の足なんかではない。切り落とされ、そこらの住宅だったであろう場所の柵を無理やり捻じ込まれている。右足なんて足首から先がない。どす黒い血と土の汚れ、ぐちゃぐちゃな肉の先からは白い骨が顔を出している。左手は腹部を貫くように突き立てられており、その傷口と鉄製の鎖で縫い付けられていた。
ーーーほんと、悪趣味な、我ながらよく生きてるもんだ
自嘲気味にそんな事を脳裏に浮かべながら、かつての家族の元を離れる。歩みは止めない。既に死は決まっているのだ。どれだけあがこうが、今の状態から正常な状態に戻ると言うことは無理だと断言できる。そもそも周囲には瓦礫の山、よくよく見ればそこらかしこに悪趣味な死体が転がされている。城で働いていた兵士達、昔から世話してくれたメイド達の姿もある。金、金と煩かった貴族達の死体ですら正常な死体なんてものは一つ足りともない。そんな死体を視界の隅へ隅へと送りながら前へ進む。三人の生きた人間の人影が見えたのはほんの数分歩いた距離であった。三人といっても二人の男女に一人の少女が傷を負いながら対峙している。二人の男女の顔は何故か理解できない。真っ黒に塗りつぶされているように感じる。それとは逆にたった一人で対峙しているのは黒い髪を肩くらいの長さまで伸ばし、白いローブの様なものをドス黒く汚しながらたった一振りの剣を支えに立っている少女。
ーーーほんと似合わないな
少女の体を支えているのは国の国宝の一つであったものだ。それは選ばれた人物にしか扱う事を許されず、それ以外の人物が扱えば喰らい尽くされる。そんな少女に似合わない厳つい剣、剣で身体を支えるのが精一杯の少女と同じように剣自身も放っている光はあまりにも弱々しかった。
二人組の片割れが何かを言った。何を言ったのかまではわからない、さらに言えば声すらも。ノイズが走ったかと思えば対峙していた少女がバッと振り返った。驚愕と、今にも泣き出しそうな、それでいて何故だろうかどこか嬉しそうに感じる複雑な表情を浮かべた彼女はなにかを口走りながら自身へとその傷だらけの体を引きずって近付いてくる。何を話しているのかもわからない。彼女が口を開くたびにノイズが脳裏を埋めていく。必死にこちらに近付いてくる彼女の背中に二人組の男女は嬉々として攻撃を開始する。様々な魔法をその背に受けながら、少しでもこちらに近ずいてくる。自然と自身の体もその少女の元へと進み出した。流れ弾のように光る剣戟が己の体を襲う右腕が切り飛ばされ耳が落ちた。
ーーーこれじゃあ、抱きしめてもやれないな
体をきつく抱きしめられ、視界いっぱいに広がる少女の大きな茶色がかった黒い瞳、すっと通った鼻筋に小振りな、それでいて吸い付きたくなる衝動に駆られる唇。見た人全てが振り返るであろうその容姿が、今では自分一人しか見ることができない。
「ーーーあなーーを、なんーーもーーーーけてーーこーーをすーーー、あいーーー」
ノイズ混じりに聞こえるその少女の声はどこか安らぐような豊かな眠りに誘ってくれる。
ーーーああ、おれもーーーー