非日常
離婚してしばらくは母の顔すら見たくない状態が続いた。
それも中学2年になる頃にはある程度は落ち着いた。
離婚前はうちではゲームが全面禁止で、やるなら友人宅かゲームセンターだったのだが、
そんな勇気もお金もなかった。
閑話休題。
母宅では再婚者の親御さんがずいぶん喜んだのか、非常に甘く、最新のゲーム機や
玩具をホイホイとまでは行かなくとも買っちゃうぐらいの状態だった。
その様子を妹や弟に聞いていた僕はいい気はしなかった。
もちろん、妹や弟にではなく母のその姿勢に対して。
しかし、いい気はしなくともあるものはやりたくなってしまうのが人間だと思う。
事前に電話をかけ、弟に再婚相手が居ないことを確認し度々訪問していた。
訪問を繰り返すうちに母が夕飯を食べていかないかと突然言い出した。
母は僕が母のことをよく思っていないことを知っているのかは分からないが、
当然のように
「いつもどおり帰って食べる」
僕的には当然のように。これは受け入れた日常に戻るように断る。
恐らく母は父がもう週の大半は夜遅くに帰宅することを知っていたのかもしれない。
僕は当然あの時それも覚悟したし、その時もその日常を受け入れている。
当然の如く断った僕に何度か夕食を誘っていたがある時母は涙を流して縋り付いた。
泣きたいのはこっちだった。
この日常を受け入れざるを得なかったのはあなたのせいだからじゃないのか。
まだまともな料理も作れずコンビニの弁当や惣菜が多くなりつつあった僕にしたのは
あなたじゃないのか。
この日はあまりの泣きっ面に母とはいえ引いてしまって食事を摂ったが、
その頃には母は再婚相手との子供もいて、食卓を囲んでいながら家族としてではなく
客人のようにもてなされてる気がして孤独を感じながら
久しぶりの母の凝った料理を食べた。
相変わらず母の料理は美味しかったと思ったと思う。
でもそれは毎日とは言えなくとも夕飯を作ってくれている父へ裏切っている
意識があって、夕食後は足早に母宅をあとにした。