プロローグ
処女作となりますので稚拙な文になりますが、よろしければ見てやってください。
夜の繁華街の路地裏、普段なら野良犬すらも立ち寄らないような寂れた通り、営業中を知らせる看板の一つも無く、一本向こうの通りには何千という人が行き交っているとは思えない、そんな都会の暗がり。
だが、だからこそ、その暗がりを好む住人達が安心して悪事を働く。
「ほ、本当です。これ以上出すお金無いんです!か、勘弁して下さい!」
度の強い眼鏡をかけた少年が、脱色した派手な金髪の不良たちに囲まれている。
顔面に青痣を作り唇も切れており、既に何発か貰ったその顔は恐怖で強張っている。
そして震える両腕には鞄をしっかりと抱きしめていた。
「だからよぉーたったこれっぽっちじゃ俺たちが晩飯にありつけないわけよ、分かる?だからその鞄の中に入ってる封筒を俺たちに寄こせって言ってんだっよ!」
言い終わると同時に鞄ごと少年の腹に蹴りを入れる。
周りを取り囲む不良たちは、ニヤニヤとへばり付いた様な笑みを浮かべている。
塾の月謝の入った鞄を絶対に離すまいと必死に抱え込んでいたが、今の一撃で体に力が入らなくなってしまったのか、鞄を手放し地面に突っ伏している。
不良たちは口々に、ナイッシュー!今日の晩飯代ゲット!など獲物を狩った喜びに浸っていた。
そんな集団の輪の一番外にいた男が突然、ビクッと震えて倒れこんだ。
どさっという倒れる音に一番近くにいた男だけが気付いた。
「あ?どうしたよ、変なもんでも食って腹壊したがががが!」
倒れた男に呼びかけた男も言葉半ばにして、盛大に痙攣して白目を剥いた。
するとその壊れた玩具のような断末魔を上げた男に、周りの不良も皆気付いたのか一斉に後ろを向く。
白目を剥いた男が崩れるように倒れると、その影には小さな人影があった。その顔は暗がりにあってはっきりとは確認出来ない。
「あーもう電池切れだよ、出力上げすぎちゃったかなぁ、それとも電池のほうに問題があるのかな」
バチバチと威嚇するようにして、青白い電気を走らせるスタンガンを片手に、ぶつくさと呟く人影。
その人影は倒れた男の事など目もくれず、大の男を2人ものしたスタンガンの改良の事で頭がいっぱいのようだ。
「淳ちゃん、やっぱり勇ちゃんが言うとおり、不意打ちはいけない事だと思うんですけど」
淳と呼ばれた人影が「ちぇーっ」と言い唇を尖らす。
すると物陰から一回り背の高い人影が現れる。
「依莉歌ぁ煩いよー、勇志じゃないんだからそんな生真面目にさぁ…」
淳の後ろから現れた依莉歌と呼ばれる声の主が、おっとりとした口調でたしなめ、それに反抗するような口調で淳がぼやいた。
するとそれを見計らったかのように、全員の頭上から大声と共に何かが降ってくる。
「依莉歌の言う通りだぞ淳!戦いは常に正々堂々振る舞わなければならない!」
全員の頭上から大きな声と同時に、マントをはためかせながら得物を振りかぶり、先ほど眼鏡の少年を蹴り飛ばした不良の顔面に木刀をめり込ませる。
その余りにも容赦のない一撃に突っ伏していた少年が軽く悲鳴を上げる。それを察知したのかマントの人影は素早く名乗りを上げた。
「安心しろ、少年。我々は正義の味方だ!」
暗がりではっきりとは見えなかったが、そう名乗ったマントの人影はキラリと笑みを浮かべながら言い放った様に見えた気がする。