#95~組織の力~
#93~力の組織~のBパート的お話です。
遅くなって申し訳ありません。
言葉回しの改稿を入れました。
申し訳ありません。話は変わり無しです。
飯吹こと01が、隣の県・廃棄施設の駐車場と隣の施設との間に隠された、コンテナに踏み込む少し前に遡る。
『この手で出来る事』の女幹部、『姐さん』こと国近麻美がコンテナに身を潜め、行動を共にする仲間たちに一通りの説明をしていた所だ。
それを納得出来ない『この手』の面子である。
一番信頼出来る、国近が言う事だから、嘘ではない事が理解できる。
だからこそ、受け入れられないのだ。
国近は普段とは違い、ボサボサ髪のジャージ姿と言う出で立ちである。
焦っている様で、身だしなみについては二の次になっている様だ。
本当の話をしても、良い返事が得られない為、もう一度、声を出して説明を始める。
「お前ら、薬は辞めろ!!私らを…渉をやったのは…黒ジャージ野郎、と…その恰好をした、小せぇガキだ。ガキがビルの駐車場にいきなり現れて、そいつが法力を私らにかまして来たんだ。その後見慣れた茶色い車が来て…車には黒ジャージの恰好をした仮面野郎が居たよ!そいつは手を出してこなかったが、そんな奴らが渡してきた薬やら、武器を使っても先は無ぇ!ひとまず、薬は今すぐ止めろ!!」
それを聞く一人は『何度もした話で悪いが…』と顔で語る。
困った表情に変えて、男は柔らかく言い返す。
「で、でもよぉ…法力のお巡と同じ土俵でドンパチやるのに、”薬”と黒ジャージの、弓使いってヤツが寄越した武器がねぇと…俺らは何にも出来ねぇですぜ?渉アニキのやり方は間違っちゃいねぇと思うんだが…お巡りの罠じゃねぇのか?姐さんたちを襲った黒ジャージ仮面野郎は…」
そんな言葉を垂れ流す男の態度に『いい加減、我慢の限界だ!』と言わんばかりだ。
国近は怒鳴る。
「バカが!黒ジャージ野郎の持って来たのは、チャカやら、ヤバい薬だろ!私らはヤバいモンを持たねぇ事で始めはやって来てたんだ!それを私が目を離したスキに弓使いだか棍棒使いだかのアブねぇ奴が、頼んでもねぇ、危ねぇモンを寄越してきやがって…気に入らねぇ事があんなら、てめぇの拳を握れってんだ!相手に向けて振るう度胸がねぇなら、自分のモノでも握ってろ!何度言っても解らねぇなら、”私が”握り潰してやろうか!!ああん!?」
国近のドスを聞かせたセリフを聞き、コンテナに居る男達が、恐怖や悪寒やら等々で『うっ!』やら『おぅおっ…』やら『あぁ…』やら、『あhぇ』等と驚き竦みあがっている。
国近が怒鳴り散らしたのを皮切りに、反論していた男が話題を変える。
「と、所で、龍一は留置所で、亮は病院で、康平は表の店番で…で、残りの、新入りの紅樹はどうしたんです?姐さんと一緒に居たんでしょう?アイツは色々使える、数少ねぇ新人で、火系の法力は色々と使えるんですよ…俺らに奉仕して欲しいなーー…なんちって……駄目っすか?てか何処に行ったんです?一番若いんだ、俺らの頼みを聞くぐらい、普通でしょう?」
下卑た笑いを時折挟む男は、自らの欲望に忠実なのだろう。良くてチンピラ、下手をすれば本職の人間に使われる、使い捨ての駒を彷彿とさせる力量を示している。
『なっ…おめぇ…』と、国近はそんな世迷言を吐き出す男に、ほとほと嫌気を感じていた。
この廃棄施設長の弟と言う事で、この場の責任者をやらせていたが、そろそろ潮時だろう。
何より臭いのだ。
ヤニ臭さと、吐き気を催す体臭は、自らの人間性を如実に語っている。
『いい加減、風呂に入れ!!』と言ってやるべきかと迷うが、見限る事に内心決めている国近だ。
唯一無二、絶対のトップを務めていた宮西渉が居なくなった事で、『この手で出来る事』は、既に死んだも同然だ。
『泥船に残り、見苦しくもがいて死んでしまうぐらいなら、潔く沈めてしまおう。』
と思っている国近である。
そこに突然、コンテナ隅のテーブルに置かれた無線機へ通信が入る。
表の店番をしている・年老いて見える男・貴俵康平が持つ無線の周波数からだ。
『ピッ!』『姐さん!ぐがっ…ド』
無視できない・誰もが気になる無線だが、誰もその場を動こうとしない。
仕方なく国近はテーブルに置かれた無線に歩み寄り、応答する。
『ピッ!』『どうした?貴俵?何だ?』
少しして無線から応答が帰って来る。
『ピッ!』『姐『ヒュ……』い、腹が痛く『ヒュ…』…すぐに交代を頼『ピュゥ…』ます。』
外に居るのか、風切り音が酷く、もはや貴俵の声と言って良いかすら際どい音声である。その不可解な音に、互いに互いを見渡す。
この場に居る『この手』の一同である。
国近は『トイレか?仕方ねぇヤツだな…』と漏らし、返答する様だ。
『ピッ!』『あぁ?良く聞こえねぇよ?腹が痛い?チッ!一人やる!さっさと糞して来い!』
その言葉じりに、手に持つマイクを机の上に『ガツン!』と投げ捨てる。
思えば、この簡易テーブルの上に置かれた、場違いな軍用無線機も黒ジャージ集団から提供された物だった。
国近は苛立たしげに、コンテナ出入り口近くにたむろする一人へ、言葉を掛ける。
「おい、お前…は………えーと…」
名前がパッっと出てこない国近は軽く考え込む。
指名されそうな二十代後半の男はニヤニヤしながら、『お前ってぇ…誰っすかぁ?』と、言葉では詰る。
普段なら許されない態度だが、現状のパワーバランスでは、誰も咎めない。
いや、『咎める人物が居ない』と言った方が適しているのだが……誰も彼もが、やる気等持ち合わせていないのだ。
「ちっ…おい、あぁ!大場!覚えてるぞ!お前が職質受けて困ってる時、助けてやっただろ!お前が行け、””オメーが一番若ぇんだ。私の頼みを聞くぐらい、普通だろ?””」
国近の言葉を聞き、仕方なく立ち上がって行く大場である。『貴俵が……面倒臭えぇな!』と独り言を漏らし、歩いて行った。
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