#91~力のやりとり~
秋穂と山岡が、殴り・言葉で嬲られていた、次の日の早朝。
場所は清虹警察署の内部である。
厚手のシャツに動きやすいメンパンと言う、普段着の恰好をした飯吹は他の部署に顔を出していた。
内々の苦情を言いに…だ。
「すみません、特捜課の飯吹です。…前に清敬高校で、女子学生と騒ぎを起こした男性、山下隆一を釈放した理由を教えて下さい!その人物は過激派集団『この手で出来る事』に所属する容疑が掛かった者です。納得のいく説明をお願いします!!」
机を『バンッ!!』と叩く様は日頃の態度に、腹を据えかねたからだ。
普段の彼女は、どちらかと言うと温厚である。素顔の時は、だが…
机をたたかれた女性職員は特捜課の刑事に対して、正しい態度で返答する。
「…あっ、あの…私もそれは承知してたんですけど……容疑者の…山下さんは……立件出来る程の行動をしていないそうで…」
そんな可笑しな言いぐさに、飯吹はさらに机を『ダンッ!』と叩くと言葉を続ける。
「本気で言ってるんですか!!山下は清敬高校の女子生徒に向かって、殺傷性のある、真空の刃を行使したんですよ!!しかも、山下は風系の法力免許を持っていません!!これのドコが!?『犯罪性のある行動をしてない』ですか!!薬物検査をすれば”薬物違反”で立件出来る事は明らかです!!」
遂に飯吹の剣幕に耐えられなくなったのか、飯吹と話している婦警は目を瞑り、叫ぶように言い返した。
「い、一応!風系の法力は、清敬高校の敷地内の発動ですし!取り調べで聞いた損害も、『亀の銅像が壊れただけ』という話で、後日、現場検証に伺っても。亀の銅像は傷一つ無かった物ですから!事件自体が『不幸な行き違い・間違いだった』と言う結論で、釈放しました!続きは担当した課長へお願いします!私は言われた事に従っただけです!!」
『なっ…』と驚いて見せる飯吹は、『釈放』なんていう事は末端の人間で出来る事では無く、詰め寄るべきは『上層部にするべきだった。』と、自分のこれまでの失態に気付く。
気持ち優先で動いてしまった為の失態だ。
自分の出身高校で起きた事件、しかも、同じ部活の後輩が巻き込まれていた為、ついカッとなってしまったのだ。
そもそもの話、その事件(にならなかったので住民紛争)の話を聞いたのは、昨日の夜で、動くのが遅すぎた事が大きい。
気付いた時には後の祭り状態だったのだ。
『くぅ…玄武の銅像は…教師……今は清田校長が直すからなのに…』と亀の銅像・玄武の、すぐに回復する秘密を漏らす。
清敬高校の清田校長が隠す趣味、土蔵・銅像作りだ。
『タッタッ…タッ!』『失礼します!』
そんな諍いを聞いて駆けつけて来た者が一人、飯吹の部下だ。
姿は仮面を付けた、法力警察のフル装備状態である。
『飯吹警部補!斉木警視長がお呼びです。』
「ん!?あぁ、鎌谷君か…ごめん!時間だった?」
鎌谷と呼ばれた、30前の男性法力警察官は少し、申し訳なさそうに言葉を返す。
『も、申し訳ありません!飯吹隊長!自分は今、03でして……覚えて頂けるように、より精進したいと思います!』
『ああ…』と言う飯吹、鎌谷堅持は、個人情報保護用に、仮面を付けている。
今は『鎌谷』では無く、『実戦隊員03』か、隊員コードネームの『バックパッカー』または、『バック』と呼ぶべきである。
飯吹は今、素顔である為に『飯吹』としか呼べない。
「ああ…ごめん…03……対策本部だね!」
飯吹は装備を整える為にロッカーに走りだした。
…それを間近で見ていた鎌谷は、言葉を漏らす。
『いや…『鎌谷』って呼んだ後、『03』って呼んじゃ…秘匿している意味が…それに、”対策本部”じゃなくて、”捜査本部”に変更しているけど………まぁ署内で別の部署だし…良いか…”良い物”が見れた訳だし…』
飯吹は割と本気で急いだ為、大きい胸を揺さぶっている事を気付けずにいた。
飯吹の頭には『清敬高校』の事しか頭に無い。
不自然な釈放と、それを許した清敬高校について、である。
不(ry




