#8~力の応酬~
今回は少し長いです。
長く読みづらいかもしれませんので悪しからず
行間を少し付けました。
空は赤みを帯び、夕飯の支度をする者が外出をするが、金山家の近くには民家も少なく、お店も無い。音を聞きつける者は居ないだろう。
門の外には異様な風貌をする男達、歳は皆目見当がつかない。体格はマチマチで、一番目を引く特徴は皆黒いジャージを着て土色の仮面をつけている。右手には土で出来た野太い棍棒を持ち、『土棍棒』という技で作った物だ。
敷地に入ってくる男達。嵐の前の静けさの様で誰も言葉を発しない。
「………」「ご用件は?……お帰り下さい、貴方達の来訪をお断りします!」
風間は一応は話しかけ、返答がない事を見ると、退去を命じる。
……が、男達は止まらない。
風間はすぐに右手をあげ、対処しようと身だしなみを整えたスーツ姿で身構える。そんな風間に朝のそのままと言ったパンツルックの秋穂が声をかける。
「10人は居るな……私も相手をしよう。住居不法侵入と門・家を破壊した器物破損から正当防衛が取れるだろうけど……ほどほどに手加減は……いや、どうだろうな……」
「はい、先ほど厘様の見た、透明な鳥は恐らく『真空の鳥』、風系の最高難度の技です。既に攻撃されています。私も知識でしか知りませんが、超長距離遠隔の『真空の刃』で、目下それが一番恐ろしいかと……お気をつけ下さい。この者達は……加減が知れません。」
サラりと『遠くから狙われている』と言われ、冷や汗を垂らす秋穂は気を引き締めて言う
「うん、留意しよう。」
動きが統率された黒ジャージ集団と、金山家の大学生コンビの戦いが始まる。
先頭で来る男は棍棒を肩に担いて次々に振り下ろす、秋穂の前に立つ風間はなめらかな身のこなしで右往左往する様に避け、切り返す様に「矢!」と唱える。間もなく矢状の風を黒ジャージ男に見舞った。『ゴブッ!』と手ごたえを感じるが、出血は無い。
穴の開いた黒ジャージの裏からは土くれが舞い、目立った傷は無い様だ。
風間の放った技は正式には『風の矢』だが、緊急を要する時、どんな法力でも発動失敗のリスクより、技の発動速度を優先する時に使われる。
広く多くの所では迅速系統と呼び、よく省略して『クイック』と言われる。相当の熟練技術と、自分の得意系統ぐらいでしか使えないのが一般的だ。
『土装甲!!』風間は息も絶え絶えに言い、距離を取る。
他の黒ジャージ男と対峙する秋穂に風間は声を掛ける。
「この者達は土装甲を付けています。手加減はさほどいらないでしょう……やはり一番危惧すべきは狙撃かと……」
言外に『強敵では無い』と言う風間の言葉だ。
しかし秋穂は顔をしかめる。
「私には一番厄介な奴らだ……風間さんの『風の矢』であれ程なら私の土の剣では強すぎる……奴らと同じ土棍棒ではな……フンっ!……私としては高校生活の思い出が詰った得物が一番なんだが……今は部屋にあるし……仕方ない……」
秋穂は独り言を漏らしながら、襲ってくる男をいなし、踏ん切りをつけた様だ。
『棍棒!』と発言し、男達の持つそれより幾分か細い土の棍棒を庭の地面から引き抜く。見てくれ的には棍棒というより、素材は違うが厚みのあるワイドソードだ。
「……フンっ!」
無言の黒ジャージ男が振る土棍棒に秋穂は手に持つ細身の棍棒を打ち鳴らす。
『ゴンッ!ブォン、ピキッ……ゴロ、ゴロゴロ……』『ポロッ……』
見事に男の棍棒を割るが、秋穂の得物も欠けてしまう。
男達は風間達の身のこなし・技術を知ってか知らずか乱戦状態に持ち込まない。
誰も怪我を負い負わせたくないのか、無傷で攫いたいのか判断が付かない状態だ。
もしかしたら別の思惑があるのかもしれないが、防衛戦である風間達にはまだ嬉しい襲われ方である。勿論襲われないに越した事はないのだが……
その奇妙な攻防、状態を見て黙って居られない女子が一人、……厘は
母の澄玲に抱かれ……いや、押さえつけられている。代わりに走り出した女子・春香は戦う大学生コンビにこう言い、『ドンッ!』と玄関のドアを開け放つ。
「秋穂お姉様の部屋から武器を持ってきます!」
「ま、まて、聞け、春香、見える所に……」
「春香、俺も行くぞ!」「か、勝也君!……君も勝手に……あっ!くっ……」
秋穂の制止も虚しく、男達が庭に残る女性陣をその場に縫いとめる様に立ちはだかる。
一人の男が勝也達を追って家に侵入していった。
家の中を土足で走る春香は一目散に姉の部屋を目指して廊下を走る。
勝也は一瞬躊躇うも、春香を一人にはさせられないと同じく続く。
途中、ドアが開けっぱなしのピンク色が目立つ部屋・廊下の壁に掛けられた絵・花瓶等を尻目に奥のドアを開ける春香。秋穂の部屋だ。
ドアのすぐそばに見事な木刀が壁に掛けられている。春香の記憶では秋穂が高校時代の修学旅行に行った時、持って帰ってきた物だ。
不思議なほど大事にし、一度も振るわれた事は無いだろう綺麗さが目立つ。
『これだ!!』とその木刀を抱えようとする。
春香が木刀を持った瞬間に遅れて部屋に入る勝也を見て言う。
「邪魔!!どいて!!」「お、おう……悪い……」
すっかり『鈍くさい、ただついてきただけ』になってしまった勝也は手持ちぶたさで頭をかいてぼやく。
「何やってんだ……俺、恥ずかしい……秋穂お姉さんにも怒鳴られた気がするし……はぁ……」
と一人ショックを受けている。
……だが、ふとある考えが頭をよぎる。
春香が家に入る時、秋穂が『見える所に……』と言い淀んでいた。それは『見える所に居ろ。』と思っていたが、今思い起こすと、その前に『聞け』と言っている。
あの状態で『聞け』と言う言葉を切羽詰まった時に聡明な秋穂が言うだろうか?
止めようと思うのなら『聞け』ではなく、『止まれ』等と言うハズ。
するとどうだろう。『聞け』を『大事な事だから』と注釈する方がしっくりくる。
そうなると『見える所に』は『武器を持ってくるなら』という言葉に繋がる。
もしそうなら、『見える所にある』だが、すぐに発見できる木刀に『見える、見えない』の表現は使わないでそのまま『木刀』と言うはずだ。
他に見える所に武器になりそうなものは無い。
だとすると『見える所には無い』と言おうとしてたと考えるべきだろう。
そんな事を一瞬で考えた勝也は一人秋穂の部屋奥に向かう。
そこには使い古されているが、綺麗に保たれている竹刀が一層大事に飾られていた。
「これじゃないのかなぁ……まぁ、余った武器は俺か風間おねぇさんが使えば良いか……どうせ棍棒相手なら奪われても大差違いないし」「キャッ!……ムグッ……ゴロッ……」「っ!春香!」
勝也が竹刀を持つと廊下から春香の悲鳴が聞こえた。
勝也は走る。
……見ると男は春香の口、腰に手を回し、押さえつけながら抱きかかえている。
春香の抱えていた木刀は近くに落ち、男は中腰で手元に棍棒を置き、その木刀を熱心に見ていた。
勝也は我を忘れ、『ブォン!』と持っていた竹刀を振るう。
『ベシッ!』『ゴトッ、ガシャーン!』竹刀は正確に男の頭を叩くが、竹刀が横に跳ねると近くの花瓶に当たってしまう、花瓶は割れ、中の水で周りを水浸しにするだけになってしまった。
小学生の力ではまともな方だっただろう。
男はゆっくり振り返ると黙って勝也に手を伸ばす。
終始無言で、もはや気持ち悪い。
勝也は涙目になって自棄になっていた。
「くっ……クッソォォォ!」
言葉とは裏腹に勝也が少し下がると男は棍棒を持った、勝也はそれが届きそうで届かない位置に立つ。
男は春香を片手に抑え、反対の手で棍棒を携えながら勝也を追い詰める。
勝也は緊張するが、集中して手を男に向け、技の発言をする様だ。
まだ一度も出来た事の無い、技自体が危険で、一歩間違えなくても攻撃的な技。
勿論、法力無免許で、医師の指示も無いので罰則物である。
勝也は春香の為に力を使う。
「水爆発!」『パチン!』
『ブワァォォォン!!』
水蒸気爆発が起こる。
男が花瓶からこぼれた水たまりから外れ、春香を抱えていない方を集中的に爆発させる。
集中力を増すため、技発動のタイミングを取るために法力初心者が使う手法で指鳴らしをする。
それがカッコいいのか、間抜けなのかを判断するのは人次第。
男は衝撃をモロに浴び『フゴッ!』と失神した様に頭から倒れこんでしまった。
『バタン!』「うぐっ……」
春香は投げ出されて廊下に打ち付けられてしまう。
「春香!!」
勝也は焦って春香の傍に寄ると春香の様子を診る。
『ウゥッッ…』
どうやら意識はある様で、『大丈夫か?…』と恐る恐る聞く勝也は涙目だ。
「こ、このぉ!痛いじゃない!!このおバカ!助けるならもっと綺麗に助けなさいよ!秋穂お姉様みたいに!!結局痛いじゃない!!」
「む、無理言うなよ……助かったんだから……良いだろ?」
と返す勝也は怪我がない事に安心すると悪びれた。
「何言ってるの!助ける相手を痛い思いさせてちゃ意味無いじゃない!!……まぁ?……、ありがとうございます。このご恩は忘れません。一生忘れませんからね!!ずっと一生、死ぬまで文句言ってやるんだから!!」
『こいつは一生くたばらないなぁ……』と思う勝也であった。
何はともかく、『庭に行かないと』と急ぐ春香達。
勝也の持ってきた竹刀を手に持って見て
「木刀の方が強いでしょ?普通に考えて…」
と春香は置かれていた木刀も抱えて勝也に言った。
勝也は『要らなかったら俺が使うの!』と譲らない。
そんな勝也を見て『言い合ってる場合じゃない!』と慌て急いで玄関から庭に向かっていく。
またまた途中ですが続きます。次作は早めに頑張ります。
ストーリー的にまだ一日も経ってない事に焦りを覚えています…