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力の使い方  作者: やす
三年の春
79/474

#78~力の秘策~

清瀬小学校の『総合』の時間。

勝也達壱班は教室の前に立ち、長い時間をかけて制作した、『自然公園の季節を見る(春)』模造紙を黒板に張っている。

班全員で発表を始める。

「俺たち壱班は、普段良く見たり、あまり見かけない景色を中心に写真を撮りました。この発表では皆で歩き始めた所から写真が始まります。」

と勝也が言い始める。


模造紙左上を指示棒で指さす女子、双子の妹の山郷朱音が言葉を継ぐ。

「えーと、朝から皆で学校から清虹公園までの道のりです。家が多いけど、いろんな公園や、歩道脇の木、電気や、通信回線のケーブルを這わす電柱がありました。写真にもある通りです。ちなみに、電柱と電信柱は物が違って、電柱は電力会社の持つ物で電気を這わすための柱です、本当は電力柱と言います、電信柱が通信ケーブルを這わすための柱で電信柱と言います。一つの柱で電気ケーブルと通信ケーブルを支えているのが共用柱と言うそうです。ちゃんと柱持ち主の名前が書いてあって、中には一つの柱に何個も名前があるらしいですが、何個も名前がある柱は下にある名前の方がその柱を持っているそうでーす。」

朱音の少し逸れ気味な説明が終わり、いよいよ公園である。


公園の入り口にある『清虹公園』と言う名前が写る写真を指さすと指示棒を七川に譲り、喋るのも七川に変わる。

「公園を見ると、一見、春の景色は見えない様に思いました。」

七川が指さすのは自分が撮った、公園全体を引いて写した写真だ。

その写真を指示棒である一点を指すと喋り始める。

「しかし、よーく近づいてみると、このように!虫がたくさんいます!春の季節を感じると土から出て来た奴らがたくさんいました。」

指示棒で指すのは全体写真の横にある、虫をアップで写している写真である。

言葉を交えながら見せる事で、極端に遠い、近い、写真を機能的に使う手法。

それは紹介の仕方一つでより際立ち、全体で見れば成功しているだろう。

大判印刷は高かった…いや、七川が自腹で出したのだけれども…

「春になり、雨は降って居なかったけれども、湿度が高くなってきたのを感づく、カタツムリがそこらにいました。」

七川は良い塩梅で背景がボケ、手前のカタツムリにピントが合っている物を指す。

レンズ付きフィルムで背景ぼかしは難しい為、実は勝也が撮った物だったりする。大判印刷を自腹でしてくれるお情けだ。一枚程度なら安い。


勝也達壱班は自分で撮った写真は自分で紹介していく形にしている。

それは自分で撮った写真ならコメントがしやすく、見る人に説明しやすいのだ。


その後は純一、茉奈、勝也と春らしい写真や、花等を紹介していく。


トリを飾るのは壱班班長として、また、良い秘策を提示した春香である。

「…と、これまでいろいろ春らしい写真を載せましたが、私たちが一番心に残った事は清虹公園にある。巨大遊具です。春はいろんな出会いや、別れ、新しい土地での発見、がありますが、大人は小さい頃の思い出を感じるのがうれしい見たいです。神田先生お知り合いの女性はこの遊具での思い出がある様で、私たちよりもたくさん遊んでいました。この遊具は昔からあるそうで、神田先生も昔はよく遊んでいたそうです。」

『なっ!金子がそんな事を!……あ、いや、続けて…』と漏らすのは神田先生、最近は気難しい面が見えていたが、『飯吹さんには良いように振り回されているのかもしれない…』と思う勝也である、と、同時に叔母の夕お姉さんに頼まれていた事を思い出す勝也も振り回されているのだが…それはまた別のお話。

春香が指す写真はいつの間にか撮ったのか解らないが、遊具で遊んでいる風景で、確かに一番生き生きしている物だ。プロの夕お姉さんが言う様に、素人の勝也達にはまだ風景写真は難しいのかもしれない…


春香は最後に、壱班では目玉となる秘策を始める。

「皆にはただ見てもらうだけじゃ、面白くないと思うので、ここで皆にちょっとしたゲームに参加してもらいます!」

春香の言葉に『ん?何だ?』と言う感じに一組の面子がざわめく。

”発表”なので、これまでの壱班の見せた物、作った物は妥当な物だ。

『何かゲームをする』と言う言葉が解らないのだろう。

春香は言う。

「私たち壱班の人がそれぞれ撮った一枚をお見せします。みんなにはこれの『どれが一番良いか』を投票してもらいます。廊下に張り出される模造紙の横にスペースを貰って、それぞれの一枚を張ります。それにみんなは一人持ち点一点を付けて下さい。投票は全校集会前と後で写真を変えて二回するので、まずは全校集会の前日までにみんな一点を付けて下さい。」


春香が提案した秘策、それは春香の言った様に、写真の優劣を付ける、見る人が参加するゲームだった。

はっきり言えば小学生が作る発表は何処も同じような物だ。作成した物を見るだけ。それでは面白味が薄い。

その点、児童が点を付けて投票するゲームはそれだけでかなりインパクトがあり、記憶に残りやすく、他の班とは良い差別化がされるだろう。

この案は大手総合スーパー『(スター)(アンド)(フラワー)スーパー』・スタフラの一角にある、ゲームコーナー、掲示板から得た物だが、勝也も良い案だと思っている。


春香の秘策は吉と出るか凶と出るか、今の所はどうなるか解らない…

…悲惨な末路を歩む者はこんな風に自分の末路に気付けない物…なのだ………

不(ry

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