#75~目論見は力~
#72~力の目論見~のBパート的なお話です。
サングラスにマスク、帽子姿の男達がスーパーの敷地・湿地帯の林部分に入る。
大手総合スーパー『星&花スーパー』・スタフラの所有する敷地は四角形の土地である。
店が植えた木々が四辺を囲み、店の建物は敷地中央にあるが、北の四分の一程度は林になっている。
普通はその林に誰も入ろうと思わず、地面が舗装されていない湿地帯である。
強行軍なら進めない地帯ではないが、わざわざ泥まみれで進もうとする者はまず居ない。
あくまでもお店なのだから普通にしていれば、営業時間であれば、大手を振って来る者を迎えるはずだ。
普通の客であれば…
「…早くしてくれ!約束の時間に遅れちまう!!」
「おい…俺の方が年上なんだが…………それに山下、お前が高校でガキのケツに発情して、勾留されちまったから予定が遅れてんだぞ!少しは反省しろ?」
「あぁ…っすんません!!肥口さんが年齢よりも若々しい肌なんで、ついつい……勿論年上で便宜を図って貰った肥口さんには感謝してますよ?」
スタフラにコソコソ進入する『この手』の、比べると一歳若い男は、すこし前に清敬高校で秋穂と清田校長の働きにより、警察に突き出された男である。
名前は山下隆一、れっきとした清敬出身のOBで、法力が苦手な学生時代当時、落ち目な生徒だった。
一つ年上男性のサングラスに隠された目線にたじろむと山下は言葉を続ける。
「肥口さんって、肌とかめっちゃ綺麗じゃないっすか!?どうしたらそんな若い肌でいられるんっすか?教えて下さいよぉ…いや、警察にパクられたのは間違いですって!俺は乳臭いガキに興味はありませんから!」
肥口と呼ばれた男は肥口啓太、『この手』のリーダー宮西渉の一つ下に当たる男だ。顔はごつい。
「まぁ、どっちかっつうとそりゃ、若い方が俺は好きだがな…とにかく、どうでもいいから黙れ、スタフラは俺らを入店拒否してる珍しい店だ…これ以上パクられると宮西以上の藪蛇を突く事になるぞ?」
肥口のおかしな言葉に薄ら笑いを浮かべる山下。肥口に軽い気持ちで返す。
「いやぁ、宮西の兄貴以上はいませんよぉ…あ、あれっすか?国近の姐さんの方が怖いっすかね?国近姐さんもあれはあれでそそりますが…」
山下の見当違いな言葉を聞き流すと肥口は素っ気なく返す。
「ま、知らなきゃ知らないで良い、お前は当時の事を知らねぇからな…」
『この手』の集団はトップがやられた事を知らずに活動を続けている…
そんな言葉を交わす間に林の湿地帯を抜け、いまだ土の地面だが、舗装された地面に降り立つサングラス男達。
店の裏口に当たる商品搬入口には男の従業員が一人、たばこを吹かしながら休憩していた。
サングラス姿の男二人を運よく見咎めるとガタイの良い従業員はたばこを備え付けの吸殻台に置き、咳払いしてから話し出す。
「ん゛ん!!お客様、林を通っての御来店はお控えください。大変危険です。失礼ですが…『この手で出来る事』に所属されている方達で?そうでなければ…可能ならサングラスを外してからご来店頂きたいのですが?それとも医療用の遮光眼鏡でしたか?」
従業員は一応は客向けに断りを入れ、その声を聴く山下は肥口に報告する。
「ちっ!くそ!旦那ぁ!店長の立花だ!園派目玉の『岡の樹』シリーズを潰した奴らの筆頭だ!」
「むぅ…つまり…やり過ごすのは無理か…土棍棒っ!」
肥口は地面から土棍棒を発現させながら戦闘準備を整え、山下は真空波を飛ばすせるように右手を右後ろに引き絞る。
対する立花店長も準備体操をするように手・肩・足・腰を揉みほぐし、建物に被害が及ばない様に足をサングラス男に向けている。
『ガーッ……店長、GC・C二人、BC入りました…ぬいぐるみ回収次第アンケート・撮影協力の声かけお願いします…レジ応援は余裕無いので難しいです。どうぞ……』
立花店長の腰にある無線から、レジ担当主任の報告が聞こえる、立花店長は急ぐために右手を前に浮かせ、発言する。
「土棍棒!…ガッ…了解、こちらも用事が舞い込んだ。三分以内に向かうが、遅れたらレジ対応で頼みます…」
左手には無線のマイク、ゲームコーナーで二人が大物救出に挑み始めたため、急がなければならなくなった。
右手には暴徒鎮圧用に刺又が握られている。
三人の男がスタフラの裏口で暴れ始める。それを見る者は居ない。
不(ry




