#68~力は咄嗟に~
すみませんすみませんすいませんすみませんすみません……
勝也は一人、自宅の居間でテレビを見て時間を過ごしている。
夜の8時を過ぎたあたりで、夕飯は7時ごろに済ませてある。
今は凪乃と厘が一緒に入浴中だ。
勝也は一番風呂を強要され、カラスの行水を行った次第である。
一人なのを良い事に独り言をこぼす。
「ふぅ……流石にカレーの連続はキツイ…てか…春香レーライスってなんだよ…明日の朝も同じだと……さすがにカレーも飽きる…」
勝也は自分の夕飯レパートリーが少ない事も忘れ、カレーの匂いが染み込んできた家を心配する。カレーなどの煮込む物は大きい鍋で大量に煮込む事で食材のだしや、風味がマイルドになる。そういう事でカレーなどは多く作り置きして沢山煮込んだ方がおいしくなるのだ。…と、ソファから立ち上がって動き出す。
「き、キッチンの鍋を見て来るか…」
勝也は居間から台所に向かう………
『バサッ!』「…明日の献立を探りに来ましたーー…」
台所・食卓部屋の暖簾を、意味無く音を立ててまくる。
誰に言うでもなく、独り言で自分の行動を実況する勝也は、柄にもなくそわそわしているのだ。
普段使っている自宅の風呂を、家族以外の女性が使っている事に、無意識的に意識している。
勿論ラッキースケベを期待している訳では無い。断じてない!
『カポン……』と、コンロにある、鍋の蓋を取り、中を覗く勝也。
「あぁ…もうほとんどカレーは無いのか…母さんの夜食分だな…良かった……『ガー…ドンッ!!』…ん!?」
勝也がキッチンで一人調べ物をしていると、風呂場の引き戸が開く音である。
続いて『トットット…』と軽快な足音を鳴らす。
「んー……凪ノン!……裏口には無いよー……タオルー……いつもの所に無ーい!……」
「そうですか、では私は他の部屋を探します。厘ちゃんは二階を探して下さい。」
『なっ!?』と勝也は狼狽える。どうやら脱衣所に置いてあるバスタオルが無く、家の中を探し回っているらしい…
厘は居間とは反対の裏口から遠くに聞こえる声を響かせ、凪乃は勝也の近くにいる様なハッキリした声を返す。
お風呂上がり→タオルを探して急いでいる→着替えの服はタンス部屋→体を隠すタオル()→桃源郷!
勝也は『うっ!』と桜色の妄想を膨らませて固まった。
勝也は食卓・台所部屋の暖簾をくぐれず、『えぇ…あ、あの…』と喘ぐ。
発生源は近くからとしか思えない、はっきりとした声が聞こえる。
『勝也君?居間ですか?……脱衣所にあった、バスタオルがどこかに行ってしまったみたいなんです。どこにあるか知りません……よね…では、タオルを探してもらえませんか?朝に脱衣所へ私が置いたので…居間か、タンス部屋にあるハズです。』
「えっ!い、いやぁ、”居間”に”今”は居ないのでちょっと解りません!…”今”からそっちに出ても大丈夫ですか?俺がタンス部屋から”今”すぐ何かタオルを取って来ますから!」
勝也は図らずも”イマ”と連呼し、意味は解るがすぐには腑に落ちない言葉を出してしまう。
それに応える凪乃の声はやはり近くから聞こえてくる。
「えーっと?……いえ、勝也君…今私は裸ですが…サッと走ってタオルを取って来ますので、出来れば動かずに居てくれると助かります。私がお風呂に入る前に準備しておくべきでした…」『ガチャ…』
凪乃の声の後、二階から、ドアが開く音がする。
『ん?』と勝也はその音に意識を囚われる。
「凪ノン!二階に…『ツルゥ…』『ガゴッ!』…あっ!『ガタ!ガタタタ!……』」
「っ!厘!」「えっ…厘ちゃん?…」
勝也はたまらず、その身を廊下に露し、階段から落ちて来るであろう厘に手を広げる。勝也はすぐに自分の失態を悟るが、厘の安否の前では些細な事だ。
………
……
そこには洗濯物を入れる洗濯籠が一つ、階段から転がり落ちている。
見ると階段上には真新しいタオルに身を包んだ厘。
では、廊下の近くには?…
…
そこには誰も居なかった……
いや、脱衣所ドアの隙間から目だけ見えている。凪乃が視線と口を動かす。
「だ、大丈夫ですか?厘ちゃん………勝也君は……助平さんなんですね…」
不(ry




