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力の使い方  作者: やす
三年の春
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#53~力のお化け?~

勝也は自転車を飛ばし、厘達の向かった格安スーパーから、ほんの少し先に行った商店街に来ている。

厘達とは違う道で来たので道中、厘と凪乃は追い抜かしてはいない。

複雑な地形ではないのだが、高低差があり、自転車で行くには遠回りの方が下り坂で楽なのだ。

帰りは厘達の歩いたであろう、最短の道で帰ると上り坂があまりなく、楽な立地である。


勝也は商店街の中では少し古びれた店舗を訪れる。店は商店街の店舗としてみれば広い部類だ。

八畳ほどの売り場があり、出入り口近くにレジカウンターが置かれている。

昔は証明写真や、記念の撮影会もやっていたが、最近店では撮影が行われていない。

店の名前は『カメラショップ・レインボウ』勝也のカメラ関連では御用達のお店である。


慣れ親しんだ様子で店のドアを開ける勝也は『いらっしゃい』と言われる前にレジカウンターの男性に声をかける。

(つとむ)おじさん!こんばんわ。現像をお願いしたいんだけど…今…良いですか?」

務”おじさん”と声をかけられた四十ぐらいの男性店主は勝也の声に反応し、手元から顔を上げると、顔に笑みを張り付かせて対応する。

「おぅ!勝也君、いらっしゃい…あー…悪ぃな…今日はこれから店じまいして、常連のお客さんの所-へ撮影しに行くんだよ…んー…急ぎかい?…ん~」

と勝也を見て、用件を理解すると悩む様にする。予定があったらしい…

このカメラ屋・カメラショップ・レインボウの店主は雨田務(あまだつとむ)

勝也の伯父で、勝也の父・雨田大の八歳上の兄である。


…と、『ガタン…』と音が聞こえた。

音源は二階の様子。

その音を聞く務は『あぁ…(ゆう)にやらせるか…』と小さく呟き、予定を立てた様だ。勝也に話しかける。

「二階にお化け(・・・)が来てるから、叩き起こして、現像をやらせてくれないかい?アイツ…また店の倉庫をホテルかなんかだと思ってるからさ…宿泊代として手伝って貰わにゃ…」


務の避難交じりの声に勝也は微妙な顔を覗かせると状況を理解したようで、それに応える。

「あー…お化けさん(・・・・・)ですか…解りました。…何とか頼んでみます…」

勝也の返事が可笑しかったのか『くくっ…』と漏らす務は『頑張れ!勝也!!』と親指を立てて、激励を飛ばす。


レジカウンター横にはスタッフ以外立ち入り禁止の立札が付けられた階段が存在する。

勝也は静かに『ソロリ…ソロリ…』と物音を立てない様にして階段を上がり始める。

階段の横に明り取りの窓があるのだが、夕日を避ける様にして今はカーテンで遮られている。

二階は倉庫・事務所として使われており、階段途中から其処かしらに在庫・売れ残りの備品などが段ボールで置かれているので階段を上るのでも一苦労だ…


勝也が『自然公園の春を見る』遠足に向け、用意したレンズ付きフィルムもここらで発見した物だ。

店主の務が持て余していた物で、それをたまたま発見した勝也は半額以下で譲って貰ったのである。

包装が破けていたり、泥で汚れたりして、定価の売り物には出来なくなったそうだ。

挙句の果てにはレンズ付きフィルムのモデルとして二・三世代前の物で、安くしても売れなかった物である。

存在は忘れてはいなかったが、不良在庫として、捨てることも出来ず、何かに使うにも勿体なく、倉庫の肥やしになっていた所に、デジカメを買って貰う前の勝也が、買い占めていたのだ。



二階の事務所として使われている部屋を音を立てずに開ける勝也は部屋の中を見て顔をしかめる。

部屋は薄暗く、オドロオドロしい雰囲気が立ち込めていた。

何より、日中の光源である窓が分厚いカーテンで遮られ、

一番の難点はカップラーメンの容器、食べかけの弁当がごみ箱にそのまま捨てられている事である。

あたりはほこりまみれで不衛生なのは言うまでもない。


ベッド代わりのソファにはこの部屋の惨状を作りだしたお化けがタオルケットに包まれている。

ソファの前にはテーブルが斜めにあり、タオルケットから出ている足で蹴ったのだろう…

タオルケットの山からは『ぐがー…』と寝息が聞こえる…


勝也は勇気を出してソファで寝ている人物に声を掛ける…

「夕お姉さん……あのー……夕お姉さん!!起きて下さい!して欲しい(・・・)事があるんです(・・)!!」


『ふぁああ!!!何!?…ん?え、えぇ!?…私……が欲しい(・・・)の!?』

暗闇で視界が悪い事を寝ぼけているのか、体を振り回し、危険な事この上ない…

『ガンッ!』とテーブルに足をぶつけた様で『んぁ!つぅ……』と痛がると覚醒した様だ。

暗闇の中、勝也は壁に手つき、手を上に伸ばして這わせると明かりのスイッチを『パチン』と付ける…



「なぁんだ…勝也か…焦って損した…てっきり私の旦那が…私を求めに襲いに来たのかと思ったよ…」

そこにいたのは三十台中ごろの、厘をそのまま大きくしたような女性だった。…女性は勝也を見て態度を変える。


この女性は雨田夕(あまだゆう)。勝也の父・雨田大の四つ上の姉である。

勝也は答える…

「旦那って…夕お姉さんはもう」「黙れ!勝也。」「はいっ…あの…写真を現像したくて…来たんですけど…」

勝也は言葉を遮られると用件を伝える。

「ああ、務兄ちゃんは…頼まれてた…常連さんを撮影しに行っちゃったんでしょ……解ったよ……現像ね…うん…プロのカメラマンの私が代わりにやってやるよ…うん…」

夕は不承不承も現像を引き受けた。勝也は顔を明るくして言ってしまう…

「ありがとうございます!!夕叔母さん!!」「おばさん言うな!!」「…はい、夕お姉さん…ありがとうございます…」「うむ……」


叔母の雨田夕は年下旦那に逃げられ、婚期を焦る、プロのカメラマンである。

兄の雨田務の店・カメラショップ・レインボウに何度も寝泊りする勝也の苦手な伯母だった…いや、お姉さんだった。

不(ry

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