#52~力の秘め事~
今日一日は天気も良く、順調に日も暮れだすと、空はオレンジ色から薄い闇色が見え始める、すでに空気は夜の物に変わっていた。
「では、行ってきます。お留守番はよろしくお願いしますね」
と言う凪乃と『バイバイ、勝にぃ~…』と言う厘は元気に行ってしまった。
『さてと…』勝也は暇を持て余す、何か忘れている気がするが……と、
「あ…そうだった…」
やらなければいけない事を見つけて思い出す。
『コレ…現像しなきゃな…』とレンズ付きフィルム数個を見ている。写真の現像だ。
自分達の班だけはかなり遅れている、一日も早く、写真が欲しい。
『しょうがない…』と勝也は行きつけのカメラ屋さんに自転車で向かう事にする。
凪乃達は歩いて10分の所にある格安スーパーに向かっている。
手段は勿論徒歩である。
「凪ノン!何を買って来るの?…です?厘が持ってきます!です!」
声を弾ませる厘は機嫌よく言う。それを聞く凪乃は優しい顔で答える。
「カレールーが無いので厘ちゃんは食べたいカレールーを持ってきて下さい、私は他の、人参・ジャガイモ・玉ねぎを持ってくるので、レジ近くで落ち合いましょう。」
こういった時は店に入る前に買い物の順序、予定を言って置いた方が良い。
店ではぐれた時に、少しでもお互いの居る場所のヒントになるからだ。
今回の凪乃の予定では足りない物を買ってくるだけなので、凪乃は一瞬で選んで取って行き、恐らくどれにしようか悩んでいる厘を見つけ、そのままレジで精算する構想だ。
凪乃としてはお店で厘の動向を逐一見ている予定である。
『うん!…レジの前…』と、厘は一緒に外を歩く事で満足して来たのか、落ち着きを取り戻しつつある。
思っていたよりも肌寒さを感じたのかもしれない。
『ガーーッ…ピロリロリン…』と店の自動ドアが開いたところで、凪乃と厘は店に入る…
が、すぐには店に入れなかった。二人に声がかかる。
『厘ちゃん!…凪乃ちゃんも!』
「お母さん…」「澄玲さん!…と飯吹さん!?」
『ん?………』
勝也・厘の母親である雨田澄玲と、凪乃が少し前に公園で会っていた法力警察官(非番)の飯吹金子が二人連れ立って買い物をしていた…
「ええと…飯吹さん、紹介します。小さい子は娘の厘で…こっちの大きい子は知り合いの大学生、風間凪乃ちゃんです。…知り合いですか?凪乃ちゃんと…」
「はっはー!奇遇だね、凪ノンちゃん!さっきぶり!……私は知り合いと言うほどでは…ねぇ?凪ノンちゃん?列土の鬼女さんの尖兵と見まがう気概を見せて貰った仲さ!」「えっ!」
飯吹の発言に耳を疑う澄玲。
凪乃は驚きを恥じ入りつつも、立て直して対応する。
「は、はい!”自然公園”ではどうもありがとうございます……ですが、尖兵はさすがに…いえ、尖兵を名乗るには私”程度”ではおそれ多い事です…すみませんが…澄玲さんとはどういう…」『ーーえっ……』
飯吹の挨拶に驚き、凪乃の返しに不安を覚える澄玲は困り顔だ…
「いやぁ、高校が同じでね!学年はすれ違ったんだけど…あれっ……っ!…そうかっ!!澄玲ちゃんとは同じ様なあだ名を付けられた仲さ!思い出したよ!”烈水の奇女”さんだろ!澄玲ちゃんの高校時代のあだ名は!」
…飯吹のうっかり忘れていた、澄玲の隠していた事実、高校時代に”いつの間”にか定着していた、恥かしいあだ名を大声で暴露され、『な…ちょ…』と面食らう澄玲。
澄玲が何か言う前に凪乃がそれに反応した。
「ぇえ!澄玲さんも剣道部に在籍してたんですか!!」
「えっ…いや、私は生徒会に入ってたの、生徒会の仕事をこなしてたらいつの間にか『列水の奇女』なんて恥ずかしいあだ名が定着してて……ところで……厘ちゃんはどこ行っちゃったの?」
「…え?厘ちゃん……は……」「ああ、すぐに店の奥の方に…」
と凪乃は厘を探し、飯吹が見て知っている事を言う。
……
…独り嫌いな野菜・人参以外全てをカートに積んだ厘は第一目的を達成し、レジ前で皆を待っていた…
不(ry




