#50~力の初顔見合わせ~
『ふふっ、今日は久しぶりに早く帰れた!今日は凪乃ちゃん来てくれてるかな…今日ぐらいは私が料理を振る舞わなきゃ…雨田家の夕飯の味を忘れられないうちに!』
と思いながら、いつものパンプスを光らせ、家路を急ぐ女性。
雨田澄玲は駅から徒歩で帰宅している。
場所は夕方ごろの、いつも徒歩が許可されているサイクリングロードだ。
このサイクリングロードは信号が少なく、駅近くまで出入り口が無い。
よく通学・通勤に徒歩でも自転車でも使われている。
早く帰れると言っても今日は祝日なのだが…その事は頭から抜けてしまっていた。
近頃は資金面でかなりの余裕を見せ、忙しさが減ったおかげである。
各病院全てに足を運ばなくても、資金でサンプルデータを集められる様になったからだ。
そこに一人の男性が通りがかる。
…いや、澄玲に助けを求める、私服姿で白神交じりの中年男性が息を切らせながら現れる。
「はぁ、はぁ、た、助けてくれ!へ、変な奴に追われている!………くっ…来た……」
「!っ!警察に通報は?」
「まだだ…始めに携帯を壊されてしまってな…あんたも逃げた方が良い…サイクリングっ、ロードが仇になった…はぁ…助けをよべん……はぁ…はぁ…」
澄玲は現実を受け入れられないほど驚くが、件の『変な奴』は待ってはくれない…
「おぉいぃぃ!…俺から逃げんなぁ!んなっ!ちっ!今度は女か!!えぇ?良い靴を履いてるじゃぁねぇかぁ?そんな靴を買う金があんなら、俺に金かしてくれねぇか?、ふふっ!…いつか倍にして返してやるからよぉ!!」
男はサングラスとマスク、鍔付キャップを目深に被り、纏う空気は一線を画している。
『っ!通報を…』と澄玲はハンドバックから携帯電話を取り出そうと中をまさぐる。
「おいおい!今度は女が俺に喧嘩を売って来てくんのか!ちっ!こうしてやる!!」
男は右手を上に引き絞り、力を溜める。
澄玲は戦闘などはからきし駄目だ。
まず、戦闘向きの技はほとんど使えず、使える技は生物には使わず、物に向けてしか使わない。
これは意地の問題なのだが、医師となった澄玲の矜持でもある。
『”人を助ける力”を”人を傷つける事”に使ってはいけない。』と、今の所は騙し騙しやってきたが、相手が素手で襲ってくる場合には対処が難しい…サングラス男は発言する。
「真空の…『ブロォォー…ドンっ…』ぐぇ…」『ググゥ…』『…ゴンッ!』『ぐぁ…』
ロールで飛んでくる者はサングラス男の背中をラリアットする様にして息を詰まらせ、そのまま身体をひねる遠心力で地面にたたきつける。
そのラリアットをした女性は大きな胸を弾ませる様にして滑らせていた足を地面に噛ませ、澄玲の前に敬礼して立ちはだかると言う。
「お怪我はありませんかっ!法力警察です!…まぁ、今は非番ですが…社会情勢を脅かす、不穏な輩達と酷似した男が、違法な法力を放とうとしていたため、身柄を拘束し、無力化させました。事件の検証を行う為に、詳しくお話しを伺いたいのですが……あれ?通報は…まだ…でしたか…では…私が警察を呼びますので、できればそのまま警察が到着するまでお待ち頂きたい!」
胸の大きな女性は自分の携帯電話を取り出すと、番号を押して通報を行う。
電話が終わり、警察を待つ間、澄玲は恐る恐るその女性に声を掛ける。
「あ、あの…その人…大丈夫ですか…さっき、すごい音が…生きてはいるみたいですが…」
医師として、たとえ自分が襲われていた立場であったとしても…ほんの少しは心配してしまう澄玲…
「はっはー!大丈夫ですよ!人間こんな程度では死にません!地面が土で柔らかいですし!私は高校生の頃から幾度となく実戦して慣れてますから!」
……
…そんな危ない事をサラリと言い、法力警察を自称する女性の言葉に違和感を覚えながらも、ずれたサングラスの裏で白目をむき、意識を失っている『この手』構成員の男を診る澄玲。
目が光っている様に見える。
「えぇ…大丈夫…ですね。…あ、すごい…頭を地面にぶつけてないんですね…背中をぶつけて脳震盪だけで…本当になれているんですね…まるで…私の高校で伝説だった剣道部の先輩みたいな…」
澄玲の漏らした感想を聞きつけ、飯吹は顔を赤らめながら言う。
「ああ、それは…何を隠そう私です!『烈風の気女』こと飯吹金子の事でしょう?」
「えぇ!そうなんですか……法力警察に勤めてらしたんですね………えっ…っと…危ない所を助けて頂いて、どうもありがとうございます。…私は、貴方の三つ下で清敬高校出身の雨田澄玲です。貴女の居なくなった剣道部には何度かお邪魔した事もあって、お話だけは聞かせて貰ってたんです…すみません…なんだか…懐かしくなってしまって…」
「いやいや、仕事みたいなものですから!…あれ?…雨田さん……むぅ……ま、まぁ、ともかく、警察の到着を待ちましょう。実は今の私は非番でして…今は一般人みたいなモノですから…」
『清敬高校はこんなのの巣窟か…』と腰を抜かして恐れおののいてしまう、始めに目を付けられていた中年男性だった。
不(ry




