#49~力の会議~
『胸厚だなー…』『あぁ…胸圧だ……』
純一と七川は最後に遊具に乱入してきた者を見上げている。
遊具の頂上に登った所で姿をさらす、大人な女性・飯吹さんの姿を、男子二人は下の砂場に立って遊具の頂上を見上げてこぼす様にヒソヒソ話しているのだ…
その声を聴いていた勝也は言う。
「お前ら…漢字が違うんじゃないか?」
「「勿論!違う!!」一人だけ気にしてないフリするの止めろよ!!勝也も好きだろう!夢が膨らむだろ!!」
『あっ…そ、そう…ま、まぁ…』と答える勝也は七川の指摘を自覚して、内心、胸を熱くさせている。
それを聞き咎める女子の声。眼鏡を光らせると言う。
「ふぅん?本当に満更じゃないんだ。あんなの何処が良いのよ…後十年したら化けて無くなっちゃうんじゃない……私だって…」『え…春香ちゃん?…』
「ま、まぁ…春香お嬢様はこれからですよ…秋穂お嬢様ぐらいにはなると思います……女性は胸では測れませんよ…」
そう春香にフォローするのは春香に未だ近い凪乃である…
それを一緒に聞くマナーは何も言えない…
『うん…今から…揉めば……でも…』と春香は凪乃を見ずに自分の体を見下ろして応える。
近くのベンチに座って児童達を見る秋穂は思う。
『あの人は子供の”胸育”に…いや、教育に良くないなぁ…』と…
「はっはー!懐かしいな、もう20年ぶりぐらい……ん?むぅ…」
飯吹が皆に向けて漏らす言葉を止めると、腰元に手をやって何かしている。
言葉を急に止めた飯吹の姿を見て『どうしたんだろう?』と思う勝也達は顔を見合わせて飯吹の言葉を待つ。
…
…飯吹が何かを終わらせると、再度皆に向けて声を出し始める。
「みんな!ごめん!ちょっと用事が入ってしまった!出来れば急ぎで撤収したい!続きは皆の家でやって欲しい!撮影はもう良いかい?勝也君!!」
と、なぜか勝也を名指しで指名すると、返事を待つ飯吹。
勝也は仕方なくそのまま大声で返事をする。
「はい!もう必要な写真は全て撮ったので…公園の作業は終わってます!」
それを聞く飯吹は『うんうん!元気な返事だ!』と独り頷くと『最後の仕上げ!』とばかりに皆を見た。
『よ~~し!撤収!!』と声を放つと滑り台を勢いよく滑り出す。
贅肉があまり見えない体に、唯一自己主張する様に付いた胸の脂肪を”ぐわんぐわん”弾ませ、その場の皆を唖然とさせる。
埒外のスピードと華麗に滑る様を皆に見せつけ、滑り終える所で側転宙返りを決めて立ち止まる。
私服のお尻部分は少しだけ汚れている。
”カッコいい”だけでは言い表せられない動作を済ませると、皆を指さし、仕上げの言葉で〆る。
「良い子の皆は滑り台で私のマネしちゃ駄目だぞ!!よし!忘れ物が無いか20秒確認したら帰ろう!」
勝也達『良い子』な男子は、その注意をあまり聞いていなかった。
…あまりの揺れ具合に……
『やはり…”教育”よりも目に毒だな…』と思う秋穂である。
勝也達は秋穂の車でそれぞれの家まで送って貰う。
飯吹は駐車場のどこかに停めてあるあると言う、乗ってきた原動機付自転車、原付バイクで帰るそうだ。
「今日はありがとうございます。」『ありがとうございまーす。』
と言う勝也に続いてお礼を言う一行。
「大した事してないよ。圭介…じゃなくて、神田先生に頼まれたわけだしね。私も久しぶりに気持ちがリセット出来た!帰りは気をつけて帰る様に!その任は秋穂ちゃん!安全運転で頼んだよ!」
と駐車場で解散として、『はい、気を付けます。』と返す秋穂は先に駐車場を出発する。
独り駐車場で秋穂の車を見送り、その場に残る飯吹は携帯電話を耳に当てると話し出す。
「……と言う事で、我々の装備一式は本当の話みたいです…はい、そのルートから…はい……まぁ、仕方ありませんよ、彼女はまだ未成年ですし…一人で奴らを撃退した方が驚きです、それのおかげで尻尾を掴めてるんですから、…はい…えぇ…彼女の足に目を向けて行きましょう。…はい、…彼女が狙いの可能性は高いです…あの歳で『嵐の種を扱ってるんですから…はい、私の後輩だからって訳じゃありませんよー、私は二十歳ぐらいで嵐の種を使ってたんで、私より将来有望です。まぁ、信じて下さい。……では次の会議で細かい段取りを……お疲れ様でーす。』」
と言い、通話を終わらせた飯吹は伸びをするように懐から太もも程の棒を取り出すと手元のスイッチを押し込む。
『ポン!ガシャン!』と言うとプロペラ羽が飛び出し、一人用ロール(携行タイプ)を展開させた。
「ふぅ…”『列土の鬼女』が同行するから『警護』はいらない!”って言われるんじゃないかとひやひや物だよ…まぁ、任務完了ー…!んぅ…やったー…久しぶりの休暇だ……帰って寝よー、んー…やっぱり…同じ空気を纏ってる人に会うと昔を思い出して駄目だな…はわぁ……ん…」
手のロールを『キューン……』と高速回転させると『ふぅぅぅ…』と浮き上がる飯吹、ロール世界次速ホルダーの『烈風の気女』は一目散に自宅へ帰って行くのであった…
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