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力の使い方  作者: やす
三年の夏
471/474

#470~力の激動 その1~



「お前も”法力を使うな!”とか言うのか?!そりゃー大人だから分からないだろうがな!、”ここ”は法力が扱えるかどうかでその後が全然違うんだよ!?それを馬鹿みたいに法力警察が決めた事を何も考えずに守って?!法力は使わなきゃ上手くならないのに?!”お前ら”もいつか絶対こう思うぞ?『あの時の”俺は”正しかった』って!?お前らはまだまだ時間があるから良いかも知れないけどな!?」

”辛うじて少年”は鬱憤を晴らす様にして吠える。


「おぅおぅ?!……威勢が化け物やん?どないしてん急に?」

キツイケメンはニヤリと笑みを浮かべると 辛うじて少年に向き直って”一応は”なだめすかそうとしている。


「コイツラは2年でまだ一年はあるけど、俺は来年高校なんだよ!分かるだろ?!もう俺には時間も”機会”もないんだよ!?」


どうやら 辛うじて少年は中学3年生で、毛生え少年少女は中学2年生の様だ。多分顔馴染みで、同中か同小の間柄なのだと思われる。

そこでこの 辛うじて少年は法力で高校進学を狙っていたらしい。……まぁ言っては悪いが受験勉強に嫌気?が差したか失敗だかしたのだろう。

いや、”機会もない”と言うからには、早めの受験出願届が出せなかったのだろうか?まだ夏休みが終わったばかりの秋に入ったか入ってない頃なのに。


「まだ夏休み終わったばっかやろ?なんでそないに時間がないの?」


そう、大体の高校受験は願書が1月や2月に受付が始まる。専門学校ならば秋から受付を始めている所もあってギリギリな所もあるが、夏休み開けの今の時期に”ここまで”切羽詰まるモノなのだろうか?それとも勉強が間に合わない感じにおつむが足りないのだろうか?


「……俺は清敬の特待生を狙ってる……もう特待生枠の選出期間が、、もう終わりそうなんだよ!!」

少年は軽く慟哭しながら説明していた。


「いや、特待生ってそない努力したから選ばれるもんやないやろ?そんな泣くほどなら普通に勉強した方がええんちゃう?まだ間に合うやろ?泣く暇あったらこつこつ勉強せえっちゅうに」

しかし、キツイケメンは冷静に 辛うじて少年にモノ申す。そうだ。彼に必要なのは法力の練習ではない。ひとえに、ただがむしゃらに勉強をするべきなのだ。


「くそっ!?、くそっ!くそっ……」

ついに 辛うじて少年は頬に涙を流しながら静かに悪態を吐きつつ顔を伏せてしまう。


「ほらほら、おのれ等も俺と早うそっち行きぃ」

そしてキツイケメンは残った毛生え少女と残った少年1人を手で囃し立てる様にして 辛うじて少年から距離を取らせていた。

地面に倒れて呻く毛生え少年達をその場に残して……



「いやぁーまさか、リンチされてる方が悪やったなんてな。まぁ人生こないな事なんてよくある事や」

キツイケメンは少年1人と少女4人を数歩歩かせてからそんな事を臆面もなく(のたま)う。

「あ、あの……それで、俺らをここまで押してきて……なんかあるんですか?」

男で1人だけ難を逃れた毛生え少年は代表してなのか、それともちっぽけなブライドからか、毛生え少女達を後ろにしてキツイケメンが自分達をここまで歩かせた理由を聞いていた。


「いや、実を言うとな?俺今ごっつぅ困っとんねん!助けてくれへん?」

キツイケメンは手を合わせて拝み倒す様にして少年に頭を下げる。

「え?……い、いや……お兄さんが困る程の事を、俺らがどうにかできると思えないんですけど……」

悪ガキに毛が生えた様な少年……いやもう毛は生えているだろう少年は、キツイケメンに対してこれ以上付き合いたくない様な顔と雰囲気で相対していた。

多分、ここに毛生え少女がいなければ即座に逃げただろう感じだ。そして、その少年の想像は残念ながらそれほど間違ってはない。


「金貸してくれへん?数百円でええから!いや、数百円ちゅうか、一つ向こうの駅の……清虹駅!?最寄り駅から清虹駅までの電車賃だけでええから!ホンマ。ホンマに返すから!」

キツイケメンはあろうことか、カツアゲの常套手段とも言える『電車賃だけ!』・『絶対返す!』・『困ってる!』と言う、多分1つも本当の事ではない言い訳でお金を集っている。


「あの……現金なら私少しだけ持ってるから」「え?なら私が出す!」「はぁ?それなら私だって!お金を下ろせば!」「ぇーなら私も出さないといけない感じ?」

「……わかりました。俺、今1000円札持ってるんで、それを出します!」

毛生え少年は少しだけ苦悩した後、財布を取り出そうとポケットに手を入れて”それ”を取り出そうとしていた。彼は孤立無援だった……

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ちなみに、清虹市に住む少年少女は基本的に現金を持たせない風潮が出来上がっている。

彼等彼女等が行く先はすべて”清虹カード”で決済できる為だ。まぁ、”一部”お店がそれに抗っている様子だが……

清虹市が推し進める政策で、電子支払い端末の無償貸し出し等があるのでその抗っている店もいずれは駆逐されてしまうだろう。

お店は税金の支払いの手間と帳簿を付ける必要がなくなるからだ。全て電子支払い端末が”それら”を行ってくれる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―

「っ!これです!」

「んっ?何なん?この……虹の?キーホルダーみたいのなんなん?」「あっ!?」「ばっ!」「えっ?」「……」

毛生え少年が出した物は虹を(かたど)った置物?もしくはキツイケメンの言う様にキーホルダーの様な物だった。

間違っても現金、千円札ではない。少女達が”それ”を見た瞬間に何かを言おうとしていたが、彼はその前に反対の手をポケットに入れて口を開く。


「あっ!?間違えました……財布は逆のポケットで……」

「んん?なにしよっとん?」

キツイケメンが何かを言う前に、少年は逆のポケットから財布を取り出す。どこかで見た事がある様なガマ口タイプの財布だ。

キツイケメンはそんなお茶目な失敗をした少年を笑いながら諫めるが、事態は進んで行く……


『ピュー!ピュー!』「そこの男!!子供から離れなさい!!」

「あ?なんやなんや?!」

キツイケメン達の耳に、突然の笛の音が聞こえ、一人の男が走り寄ってくる。

「げっ!?おまわりさん?!――」

そう、それは警官の制服を着た男だった。キツイケメン達に向かって走ってきている。

キツイケメンは制服姿の警官を見て、驚き戸惑ってしまっていた。何かあるのだろう感じだ。


「手を上に上げて!地面に伏せなさい!」

「――はぁ?いきなりなんですのん?」

だが、キツイケメンにとっては警官からのいきなりの命令だ。勿論ソコは反論する。


「もう一度警告します。子供から離れて、手を上に上げて地面に伏せなさい!」

「いやいや、じゃか、ら!?何でいきなし喧嘩腰なん?いくらおまわりさんでもこらあかんやろ?!」

再度繰り返される警官の言葉を聞くに、キツイケメンを子供達から引き離そうとしている。もう警官があと一息吐く頃には手を伸ばせば瞬時に届きそうな間合いだ。

警官に遂にキツイケメンは声を荒げようとしたが、寸での所で抗議の声に切り替えていた。

まぁ、確かに……いや、先ほどのキツイケメンの言動を聞いて見るに、カツアゲの現行犯みたいなモノなのだが……


「これが最後の警告です!手を上に上げて、地面に伏せなさい!しなければ公務執行妨害もありぇます!」

やっと足を止めた警官の口からは、最後通告が告げられる。本当にお縄になりそうな雰囲気と剣幕だ。


「いやいやいや……くそっ!?覚えとけよ?!こら”お上”に相談せなあかん案件やん!」

遂にキツイケメンは警官の指示通りに手を上に上げて、しゃがみ込み伏せた姿勢をとる。

「「「「……」」」」

そして、そのやり取りの最中、事情を多少は理解している毛生え少女達は押し黙ってもう一人の毛生え少年を非難がましく見つめていた。

「ふぅ!おまわりさーん!」

だが、周りの少女達から目を向けられている少年は先ほど取り出した虹色のキーホルダー?を握りしめながら警官に手を振っている。やり遂げた男の顔で。


「で?どういう状況ですか?恐喝?それとも暴行?ともかく、署でお話しを聞きますから」

警官はキツイケメンが大人しく言う事を聞いた為に幾分か緊急性は無いと見て少年少女に事情を聞こうとしていたが、ひとまずはキツイケメンな男を連行しようとしていた。


「ちょお!待てって!?これ任意やろ?!何でもう逮捕したみたいになってんの?おかしない?」

キツイケメンは警官に怒鳴り散らしている。

「あぁ、解った分かった。ひとまずここじゃなんなんで、署で話しを聞きましょう?」

しかし、警官はキツイケメンの声をやんわりと聞き流して”場所を移動しよう”と提案している。


「ちょおお!だから!俺は騙されんって!”これ”連行やん!俺知っとるぞ!場所を”移動する”とか言って実はこれ逮捕なんやろ?」

キツイケメンは何かを知っている様にして警官に怒鳴り散らしている。剣幕はすごい。

「あー解りました解りました。でも、ほら?場所がね?ほら”そっち”行くだけだから」


「だから行かんって!何の権限があって場所を移動させるんや?そうやって”緊急逮捕”出来んヤツを”任意”って事にして身柄を拘束するん手口はわぁっとるからココで話しせぇや!」

キツイケメンは自分の権利を主張して、警官の”提案”と言う形のやんわり容疑者を拘束する常套手段を言って防いでいた。


「んー解りましたって……そんなつもりはありませんよ。で、どういう事か説明してもらえる?」

警官はあくまでもキツイケメンの言っている事がマトハズレな”様にして”、納得してみせてから少年らに事情を聞く。

「「「「……」」」」「あー……」

少年は周りにいる少女達から見られて喋り出せない様だが、何かを言わなければならない事は変わりないので間を持たせる様にして口をあけている。


「兄さんの顔が怖くて話し出来ん様やから俺から言ったるわ。俺困ってんねん「ちょ!」清虹駅までの電車賃貸してくれー言うてたんや別に”金出せ”とか言うてへん貸してくれる思たら兄さんが邪魔しに来よったんやただそれだけやん。な!?」「……」「うんうん」「そのお兄さんの言う通りだよ!」「”こいつ”が防犯ブザーで遊んで押しちゃっただけ」「いっつも遊んでて怒られてたのに言う事聞かなくて」

「なっ!?んん――」

しかし、いつまでも説明が始まらない事に業を煮やしたキツイケメンが割って入り、警官が止めようとしたがそれ以降を早口で言い切ってしまう。また、警官の目から見ても、少年は押し黙り、挙句の果てには少女達から自然な流れで援護射撃があったので警官としてはキツイケメンが悪者なら自分の行き過ぎた警告その他もろもろをなかった事に出来るのだが、”こう”なってしまうと如何ともしがたい。


「――君?防犯ブザー出してくれる?」

警官は全てを無かった事にしたいが、”防犯ブザー”が鳴った事で記録は残ってしまっている。その処理をしなければならないと少年に声をかけていた。

「はい」

少年が手に出したのは先ほどの”虹を象ったキーホルダー?”だ。

「む…………はい『ガッ』警邏から本部に、先ほど風台駅近くであった番号1156の特殊警報は誤報と確認が取れました。警報の削除をお願いします」『ザッ……っ……っ……『ザッ』』

警官は腰に付けてあった無線機を持って、どこかへ連絡していた。

返答があったが、それを聞かずに無線を腰に戻してしまう。


「えーこれはオモチャではないのでこれ以降は遊ばない様にしてください。このブザーを起動させると本当の危険が起こった時に遅れるかもしれませんし、何度も間違ってブザーを押すようなら学校や保護者に連絡が行きます。もう持つなとは言いませんが、それでもこれで遊ぶ場合はこれの所持が難しくなるかもしれません」

「はい、ごめんなさい」

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どうやら毛生え少年が取り出したのは子供防犯ブザーらしい。しかも、音が鳴って周りに助けを求めるモノではなく、ネット通信で警察に連絡が行き、近くの警官が駆けつける代物だ。

少し前に金山賢人市長が考案して、その当時彼の秘書だった”大男”が配備や保守管理を行っていた物だ。今はもう警察が保守管理を引き継いで清虹市の子供を守る代物となっている。

今回みたいに誤報や子供の不注意で鳴らす事もあるが、交通事故が起こった際にいち早く警官が急行出来たりと、マイナスよりプラスな感じで受け入れられている。

インターネット無線基地局アンテナが近くに無ければ使えない代物で、金山家の”ゴルドラ”が工事やアンテナ設置で一役買って出来たモノだ。

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「では、私はこれで……「ちょ待ちぃや」な、なんでしょう?」

警官がそそくさと立ち去ろうとしていた所、今度はキツイケメンが警官の肩を掴んでその場に留める。

「ごめんで済んだら警察は要らへん。なぁ?それなら今度は俺を助けてくれへん?」

「なっ何を?」

警官はこのキツイケメンを見かけで判断して拘束しようとしていた。

一応、そこまでは行っていないが、多少の罪悪感はあるらしい。

このお話しはフィクションです。話しの中に出てくる警察や警官は実在する団体・人物とは何の関係もなく、物語の中で言われている様な常套手段等があるのかは勿論知りません。知りませんったら知らないのです。

勉強の下りは多分真実です。※個人の感想ですが

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