#460~力の国でのスタンダード~
「「「「「「……」」」」」」っ?」「……」
『……ッッガッッ……ッッガガッッ……』
見えなくはないが薄暗い空間を歩く集団で一人の”女性が”何かに気付く。
「……」
この場にはもう一人女性がいるが、彼女は無言で足を進めるだけだ。
「「「「「……」」」」」
それまでと変わらずに足を進めながらも、その何かに気付いて顔を上げた女性以外の男性達も女性に視線を向けるだけでただ黙々と歩き続けている。
「あのっ、「はい?……」何ですか?この音は?大丈夫なんですか?」
顔を上げた女性・雷銅は前を歩くバトルスーツを身に纏う”第六警備隊隊長”へ声をかけるが、その返事は不自然な程に速かった。また、雷銅もその返事の速さに構う事無く用件を述べている。
「え「「っ「!」」「?」」」
だが、彼女達の周りにいる男性達・法力警察官達は隊長である雷銅の言葉を理解出来ていなかった。
「……もう間もなく”開発拠点”の最深部になります。そこで使われている機械の掘削音でしょう。雷銅さん、貴女はやはり耳が良いのですね。現状の確認は出来てないので何とも言えませんが、何か問題が起きている可能性は限りなく低いです。ご安心を」
”第六警備隊隊長”は雷銅の疑問に答えると彼女の耳を褒めて、現実的な状況を踏まえつつ『問題はない』と言ってくれていた。
「そうですか……いや、失礼」
雷銅はこれまで一緒に動いていたのだから、事前に知っているのと知っていないので印象は違うが安全を保障しろど言うのは無理な話だったと思い直して歩き出す。
ある程度近くにあるモノならば自分で確かめればいいだけだ。それを無理に聞いてしまった様なモノである。
危険な事は突然起こるモノで、地中深くに降りてきている現状では根拠なしに『ここは安全です』と言われても、それはそれで無責任な物言いだろう。
それを考えれば”第六警備隊隊長”の対応は誠実だ。
そもそもの話、この地中深くまで伸びている地下道の”開発拠点”には雷銅の要請で来ている。
「……」
”第六警備隊隊長”は、見えはしないが七色に光るゴーグルの下にある眼を雷銅に向けつつ歩き続けていた。
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「はっ!?……」
場所は薄暗い空間である。
「……んぅうぅぅぁあぁ……」
そこには一人の女性が居る。
「……」
彼女はこの部屋に住む女性で、今日は自分の住宅であるワンルームの部屋から目覚めてその一日が始まる。
「……んんっ!」『ギシッ』
彼女は部屋全体に絨毯を敷き詰めて生活しているらしい。
『ガタッ!』
彼女の寝床、下に収納空間があるベッドの上で覚醒すると、短めながらもボリュームがあるボサボサ髪をそのままにベッドから飛び起きていた。
『ガチャ……』
彼女はベッドの上で伸びたあと、特に躊躇う事なく起き上がって行動を開始している。
『……ッ、ッ、ッ、ガッガッ……』『ガチャ!』
また、彼女は身支度等を整える素振りすら見せずに廊下を進み、玄関にはそれだけしかない靴を履くと玄関扉を開けて部屋を出ていってしまっていた。
『……ガッ、ガッ、ガッ……』
そして、彼女は部屋の外すぐ近く、と言うか同一施設にある空間へ突き進んでいく。
『キュキュ』『ジャージャバジャバ……』
いや、彼女はどうやら顔を水で洗う為に部屋の外へ出ていった様だ。
『キュウゥゥ』『ポタポタ……』「……」
部屋の外、清虹市の中でも西に位置する風台地域にあるアパート、”清虹ポート”にある共同トイレで寝起きの顔を水で洗うのは飯吹金子である。
「……」
彼女は顔を水でバシャバシャと洗っているが、タオルや洗顔の石鹸やクリーム等、朝の支度をするには些か不十分な状態で活動を始めていた……
「……生成」『ブォッォォォォ!』『ガタガタ』
いや、彼女はタオル等を必要とはしていないらしい。
強風を法力で発現させると、顔や髪が一瞬にして渇いていく。
共用トイレなので物が一切置かれていない為に、不相応な風が吹いても特に問題は無いが……
「んー……まぁ、こんなもんか……」『ペシペシ』
強風で肌を乾かしてしまうのは本来、肌がダメージを負ってしまう事もあるので良くないが、彼女の肌はそんな事を感じさせない程に健康的だ。
トイレの洗面台に備え付けられている鏡を前に、手で頬を叩いている音を聞くと、その肌にはダメージがある様な雰囲気が一切ない。
「……さってっと、歯磨きでもしたら行くか」
彼女は自身の部屋に向けて歩き出す。続いての歯磨きは自身の部屋・そこにある台所で行うらしい。
ここ最近の”清虹ポート”では良く見る朝の光景だった。
彼女はこれから程近くにある風台駅まで行き、そこから電車で清虹駅まで行くのが今の日課である。
彼女は現状ですでに、”通い妻”状態だった。
行先は勿論だが、”7カラ11カイ”である。
遅くなりました。




