#452~力の国は開かれる~
……ガー『ガゴッ』『ガゴッガゴッ』―――……
「……」
雷銅はあまり変わる事のない道を歩いている。
……ガー『ガゴッ』『ガガガゴッガガガゴッ』―――……
「……」
彼女が歩いている隣にあるのは相変わらずのベルトコンペアだ。
……ガー『ガゴッ』『ガガガゴガガガッ』―――……
「「「「「……」」」」」
また、彼女の後ろを歩く男達も彼女と同様に、一見しても分からないだろうが、似たような雰囲気で足を動かしている。
……ガー『ガゴッ』『ガゴッガゴッ』『プシュー』―――――……
「ふむ……」
だが、彼等彼女等のまたさらに後ろ、暗い道ながらも目を隠している者は”そんな”彼・彼女等を”見守る”様にして時折視線を前に向けている感じだ。
……ガー『ガゴッ』『ガゴン!ガゴン!』―――……
「……っ?!これは……」
先頭を歩いている雷銅は、ベルトコンペアにこれまでは見られなかった”ギミック”を見つけて反応する。
そこまではベルトコンペアが隣にある道、つまりは一本道だった通路だが、雷銅は少しだけ思い違いをしていたらしい。
ベルトコンペアはそのまま奥に続いてはいるが、横からはまたさらにもう一つのベルトコンペアが置かれていて、二つのベルトコンペアは高低差をつける事で言わば主流と複流と言う様にして枝分かれしている。
……ガー『ガゴッ』『ガゴン!ガゴン!』―――……
「……くっ……」
つまり、ベルトコンペアを辿って奥に行くのなら”どちらか”を選ばなければならない。
……ガー『ガゴッ』『ガゴン!ガゴン!』―――……
「……どちらかと言うと、横から伸びてきている方が大きい岩?が多いですね……」
「……ええ、こっちの”方”は……横から伸びてきている方とは違って、小さい粒みたいな小石とか砂っぽい物ばかりです。」
雷銅の見立てに賛同する様な事を言うのは塩谷である。
横から伸びている複流ベルトコンベアは主流ベルトコンベアの一段だけ上にあり、ベルトで運ぶモノにも少しだけ差異があった。
つまり、複流ベルトコンペアの方からは大きい岩や石を運んできていて、今まで辿って来ていたベルトコンベアの先からは小さい小石や砂ばかりが運ばれて来ている。
ベルトコンベアは雷銅の目の前で複流ベルトコンベアが終わっていて、運んでいる岩や石等が主流ベルトコンベアに合流しているのだ。
「……なら、”こっち”の横の方、大きい石とかを運んできているベルトコンベアの方に進みます」
「……良いんですか?何なら俺が一人でこのまま進んで見てきますが……」
雷銅は”横のベルトコンベア”を選択するのだが、塩谷はこのまま主流の方のベルトコンベアの先を確認しなくて良いのかと提案している。
つまりは二手に分かれるか、最悪自分だけでも離れて主流ベルトコンベアの先を確認してくるかと提案していた。
「いえ、我々は”感応石の発見”が今の所の第一目標ですが、『誰も欠ける事無く帰る』のが前提条件なので最悪”そちら”が達成出来るのなら”感応石”等は見つけられなくても構いません。……それとも、こんな洞窟を歩いていて気が滅入ったり、”冒険”をしたくなりましたか?」
雷銅は静かに声を発しているが、実の所、彼女は痛烈に塩谷を非難している。
「……すみません、少しだけ調子に乗っていた様です」
そして、塩谷も自分の提案した事は”今回の任務では責められるべき提案”だったと認識して雷銅に頭を下げていた。
いくら身の危険が危惧出来ない状況が続いていたが、その油断は命取りだ。
彼女達法力警察官にいくら技能があろうとも、後ろに付いてきている”第六警備隊隊長”はそれを凌駕できるだけの力があり、塩谷一人ではこれに太刀打ちするのも危険である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―
「こっ!、これ……なっ、何の?……はぁ!?」
山河はそこで、飯吹がしている事や、彼女の真意に理解が及ばず、今いる場所も忘れて若干だが大きな声を出してしまう。
「……」「っ?!」
だが飯吹は山河の驚きに反応せず、ただ目を向けるだけで一切彼へ説明しようとしていない。
手にある液晶画面を向けながらただ横に座る男へ何の感情の籠っていない視線を向けるだけだ。
「何をしたいんだ?これも”アイツ”の差し金か?!」
山河は自分のしていた事を棚に上げ、飯吹にも憎々しい目を向けて誰何している。
「……ふぅん?そういう態度を取るんだ?」
対して飯吹は山河の反応を見て静かに言葉を返していた。
「これってどういう風に見られるんだろうね?」
「……」
飯吹は続けて今の状況、そして相手の状況を教える様に言葉を述べている。
状況としては単純な様でいて、その実問題が多い。
飯吹と平岩は結婚しようとブライダルショップに出向くがそこで対応していた男性店員が飯吹を呼び出して酒を飲ませ、最後はそういう宿泊施設に連れて行き”何もしていない”のにさもナニかしていた様に言って結婚を取りやめる様に言及してしまっている。
「……”アイツ”が俺を嵌めたのかっ!くっ……」
山河がブライダルショップの仕事を首になるぐらいならまだ良い方で、強制性交等罪、強姦未遂、最悪は誘拐事件にも問われる問題行為だ。
「うん?いやいや、私が勝手にやった事だよ。雄二さんは私が貴方と会ってる事さえ知らないんじゃないかな?」
飯吹は山河に対してこんかいの会合には平岩が関与していないと言う。
「……何が狙いだ?……金か?……いやしかし……」
山河は自分のやった事を棚に上げ、平岩に嵌められたと思っている節がある。
彼が”こんな事を”する必要も旨味も無いのが解っているハズなのに……だ。
「いやー……うん……”それ”なんだけど……一度雄二さんとじっくり話してくれない?なんか……貴方のやってる事って変だからさ?」
「……はぁ?」
飯吹は言い出しづらそうにして”要求”を述べた。
対して山河は理解できない様にしてその”要求”の真意を暴こうと目を向ける。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―
『ピュ!―――――――……パァンッ!、、ピュ―――――――……パァンッ!』
「……くっ……」
清虹市の快晴なとある日、市の北側にある地域では早朝に花火があげられる。
俗に、『昼花火』や『昼玉』と呼ばれる花火である。音や煙が聞こえたり見えたりするモノで、
一斉に不特定多数へ合図を送ったり、知らせる機能を見込まれているモノだ。
稀に、住宅街等で使われる花火だが、一般的には学校等がその日の天気等を見てから打ち上げる事が多い。
「……ぁあ゛ぁーー……」
そう、今日は勝也達清瀬小学校で運動会が開催される日である。




