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力の使い方  作者: やす
三年の夏
452/474

#451~力の国で開発される!?~


……ガー『ガゴッ』『ガゴッガゴッ』―――……

「……」

雷銅が歩いているのは薄暗い道である。

……ガー『ガゴッ』『ガガゴッガガゴッ』―――……

彼女が歩いている空間は背が低く、苦労する程ではないが道も狭い。

……ガー『ガゴッ』『ガガガゴッガガガゴッ』―――……

また、彼女の横にはどこまでも続くレーン……と言うか、ベルトコンベアが敷かれている。

……ガー『ガゴッ』『ガガガゴガガガッ』―――……

ベルトコンベアとは金属製だったりゴム製だったり樹脂製だったりと、場合や状況によって様々な種類の材質で造られたベルトをローラーで回転させ、その上に載せた物を運ぶ機械だ。

「……岩や石……」

そのベルトの上には大きな岩や小さな石、砂の様に細かい石等が乗っていて、延々と彼女の歩いている方向とは逆に運ばれている。

……ガー『ガゴッ』『ガゴッガゴッ』『プシュー』―――――……

「……ふむ……」

また、そのベルトコンベアの下にはベルトコンベアを支える台座があり、その台座の側面の一部分だけが網目状になっていて、ソコから時折空気が漏れ出ている様な音が鳴っていた。


『……ッ、……ッ、……ッ、……ッ、……ッ、……ッ、……、』

雷銅の後ろには5人の男と、暗い中でも相も変わらず目元を隠している者が歩いている。

「ふむ……『ガッ……』こんな大きさの”岩”の中に”原石”が入っていたりします。」

そんな目元を隠す者が足元にある一つの岩を蹴り、『……ゴロッ、ゴロッ……』っと雷銅の方へ拳大の岩を転がしていた。

「……『ガッ』”これ”を、この……”ピッケル”で砕けばいいんですか?」

雷銅は自分の方に転がってきた岩を足で踏んで止め、手と肩で担ぐピッケルを肩から浮かして言葉を返している。

「ええ……ただし、もう一度言っておきますが、結構本気な力で振り下ろさないと割れない位には固いです。なので、間違っても法力で割ろうとしてはいけません。もし”感風石”の原石が中に入っていたら、ただでは済まない事が起きるので……そういう理由があるので”ここでは”法力の発現が基本的に禁止です。」

その目元を隠す者・”第六警備隊隊長”は雷銅に向けて忠告を飛ばしている。

どうやらココ・”二島”の”開発拠点”内では法力発現が”基本的に”禁止されているらしい。

「そうですか『ガッ、ガッ』……まぁ、これぐらいなら……ふんっ!」『ガゴッ!『ピキッ!』パカァ』

だが、雷銅は足で岩を数度踏んづけたあと、”第六警備隊隊長”の忠告等はどこ吹く風と言える程には気安くピッケルを振り降ろし、拳大の岩を割っている。

「うっ……す、すごい鮮やかに割りますね……」

”第六警備隊隊長”は散々”割るのは大変”と言っていた割に、雷銅が片手間感覚で獲物を振る様子を見て、やや戦慄気味に雷銅へ顔と言葉を向けていた。


「ん?…………これは……”ただの岩”ですね「あっ……も、申し訳ありません」いえ、構いません。元よりそう簡単にはお目に掛かれる物ではないのでしょう?」

雷銅はしゃがみ込みながら自分で割った岩を見聞し、そこには特に透明な鉱石等が見当たらない事を”第六警備隊隊長”に確認している。

”第六警備隊隊長”はあてが外れた事を謝罪するも、雷銅はそんな問答が惜しいとでも言うが如く、淡々と歩みを再開させていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―


「ガチャ……」「……」「……」

とある施設、ひとけがあまりない空間で扉が開き、中から男女が現れる。

「……早くぅ」「……ちっ!、まてょ」

その男女は微妙な距離感で話していて、先を歩く女性が相方の男性を急かしている。

「ふんっ!」「ちょ?!」『パタンッ!』

その男性は扉を手で押さえながら、その空間の様子を見て、舌打ちをしたのちに件の女性を手繰りよせ、肩に手を回して抱え込む様にしてから歩き出す。

「……おっ?!「痛いっての!ちょっ!ナニ見てんのよっ!?」うっうるせぇっての!?」

その男性はその空間を歩き進み、出入り口にある待合室的な椅子をひと目見て”反応”してしまっていた。だが、彼が腕を回す女性から”その事で”鋭い声を向けられて軽く責められるのだが、虚勢を張ってうやむやにしようと不機嫌な声を張り上げている。

その”待合室的な椅子”の近くにはその施設の無人受付機と、缶飲料自動販売機等が置かれていた。


「……で?いつまでココにいるの?「うぉおっ!……って、金子ちゃん?……起きてたのかよ……」あ?」

その待合室的な椅子に座っている者の内の1人、胸に大きな希望をぶら下げている女性は唐突に隣に座る男性・山河太郎に言葉を発すると、山河は飯吹が目覚めていた事に驚いていてしまっていた。

二人の会話はどことなく、”距離が縮まっている”様にも思える雰囲気がある。

「……いや、”ここ”は”ココ”を利用した人達が”休憩”する所だからさ……いやぁカナちゃんって”下の方”も結構スゴイんだね?俺も久しぶりだったけどスゴイ良かったよ。カナちゃんはどうだった?」

山河は相手の女性へ自分の感想を求める様にボカして声をかけている。心なしか、少しだけ”疲労感”のある声色だ。

「え?”ナニ”が?」

ところが飯吹はドストレートだった……


「っ?そっ……え゛っ゛?……」

……山河は不安げな表情を浮かべつつ口を動かしている。

「ん?……いやいや、”え゛っ゛”って……私達、何もしてないじゃん?」

……いや、飯吹の言葉は別に隠語を言っている訳ではない。本当に何の話をしているか、解らずに聞き返している。

「……いやいや、カナちゃんも”ココ”がどういう所か、さすがに分かってるでしょ?カナちゃんは酒に酔ってたから覚えてない?……結構”アッチの方”はすごかったよ?」

彼は遂に説明する様にして飯吹に確認している。つまりは”致してしまった”と……


「ん?何を言ってるの?”ココ”来てから”ずっと”ココにいたじゃん?……何をしたって言うの?」

飯吹は懇願?と言うか、山河へ言い聞かせる様にして”ナニもしてない”と言葉を尽くしている。

「いや……ま、まぁ……”アイツ”と結婚するってなって、その直前に他の男と寝ちゃったのは確かにアレだけどさ……コレを機にアイツと結婚するのを止めといた方が良いんじゃない?今ならまだ”婚約”とか、ちゃんとした結婚はしてないだろうから……最悪の場合は浮気とかで慰謝料を払う事にはならないでしょ?」

山河は遂に言及してしまう。


「ふぅん?いやでも、ちょっと前にタクシーから降りてずっとこの”椅子”に座ってたじゃん?……一体貴方は何をしたって言うの?」

しかし、飯吹も頑なに自分の言葉には間違いない様に言っている。

「だからさ!カナちゃんはお酒飲んで酔っ払って多少眠ってたから覚えてないだろうけど、俺と寝たんだよ?ココまで言っても分からないの?」

だが、山河も負けじと”先ほど”までの情事を物語っていた。


「ふむふむ……そういう事なら……」

そして、飯吹はポケットに手を入れて、中をガサゴソ……とする感じに身をひねる。

「……んっ!」「は?スマホ?……」

飯吹はズボンのポケットからタッチ式の液晶端末を取り出してその画面を相手に見せていた。

「……っ……」

その画面には

”05:43:50”

”05:43:51”

”05:43:52”

と、カウントする数字と、赤い丸の”録画状態”を知らせる表示がなされていた。


「えーっと、、”コレ”かな?」『ピロンッ!』

飯吹は画面にある赤い丸をタッチして、電子音と共に”NEW05:44:00”と言う表示が画面に追加される。


「で、これが”再生”と……」

そして、彼女はその新しく出て来た文字列をタッチしていた。


『ギィィ『カランカラン!』…………ガタッ!

……ジャラッジャラーン、…………、ピィヒャララァピィヒャララァ、…………

いらっしゃいませお客様、お一人様でよろしいですか?

……ジャラッジャラーン、…………、…………ピィヒャララァ、…………ブォララ……

いえっ!待ち合わせしてたんですけど……

………………、ジャラッジャラーン、………………、ブォララブォララ……

……ジャラッジャラーン、………………、ピィヒャララァ………、………ブォララ……

お客様「んっ?!「あっ、どもども、』


「うん、結構バッチリ音取れてるね」

飯吹は端末から流れてくる音を画面を触る事で止めて”録音”が出来ていた事を確認していた。

「ま、まさか……今日店で会った時からずっと……”それで”録音してたって言うのか?」

山河は飯吹が持っている端末から聞こえる音声が自分達の声、そしてバーで流れていたBGMだと言う事を理解出来ていた。

そして、つい先ほど録画を止めた所を見るに、ずっと彼女は周りの音を録音していたのだろう事が理解出来てしまう……

つまり、彼が説明していた事はすべて”嘘”だった事もコレで証明されてしまっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―


「……なら……わかりました。四期奥様の仰る通りに致します。」

凪乃は頭を下げて自身の事について、”主人の言う様にする”と了承の旨を告げる。

「……えぇ……今すぐは無理だけどヘアカラーの代金なんかはこちらで持ちます。色や方法なんかは全て任せるけど、出来るなら今日や明日にでも染められる様にして頂戴」

対して四期はため息交じりの返事をして”言質は取った”と言わんばかりに予定まで決めている。

「んん……凪乃はどんな色にする?暗い茶色とか?……ただの黒はちょっとありきたりだしねぇ……」

千恵は少しだけ面白そうな顔で凪乃の頭に視線を向けている。心なしか少しだけ楽しそうな雰囲気がある。

「……」

やはり景は何も言わず、

「いっそのことだから、金髪とかももしかしたら似合うんじゃ?……」

また、四期奥様は先ほどまでの雰囲気から一変して、凪乃ではまず選択しないだろう色を発案していた。

「くっ……」

しかし、凪乃は特に何も言おうとしない……

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