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力の使い方  作者: やす
三年の夏
450/474

#449~力の国で進退を決める~


「「「「「……」」」」」『ガ―――ゴロゴローーーーー』

重厚な音を立てて灰色の板が左右に分かれて開いていく。


『ザッザッザッ、ザッザッザッ、ザッザッジャリ、ジャリジャリジャリ、……』

その灰色の板である自動扉から出てくるのは、綿パンにシャツ、バトルスーツにマント、ヘルメットに目元を隠すシールドと、この国の警備をしている者特有の装備を身に着けている集団だ。


「”ハ島”に到着。別命あるまで各自待機」

その集団の中で、ほんの少しだけ背が低い者が無機質に告げると、一歩踏み出していた。

「……ぅす」「……了解」「……ぁぃ」「……ぇぇ」「……」

その一歩踏み出した者の言葉を聞いた他のバトルスーツ男達は各々が言葉を返してふり返り、彼らの後ろを歩いていた集団に顔を向けている。



『ザッザッザッ、ザッザッザッ、ザッザッジャッ、ジャリジャリジャリ、『ジャリッ』』

バトルスーツ達の後ろを付いてきていた、私服姿に各々が肩掛けバッグを肩に吊るす男女・法力警察官達は”第六警備隊隊長”が一人、近寄って来た事で足を止めていた。

「ぅ゛ん゛……ここは”ハ島”となります。見ればお解りだとは思いますが、この”ハ島”は砂浜の海水浴場もある”保養地”として機能しています。水着の貸し出しも含め、海水浴道具の店や、軽食の屋台等の建物が存在する島となります……「我々には無用です」……っ、分かりました」

”第六警備隊隊長”が咳払いの後に”ハ島”の説明を始めると、『……あなた方はご利用されますか?』と言う質問が出てくる前に雷銅が断りの言葉を付きつけていた。

「ふむ……見ての通りあまり盛況ではありませんが、時期になると多少は繁盛しています。我々の訓練等が行われる時もありますが……今はあまり人が寄り付きません。”ハ島”の開発は今後の課題でしょうね……”ハ島”の南東に”二島”があるのでそちらに向かいます。」

”第六警備隊隊長”は”ハ島”の現状などを述べて説明していた。

雷銅が食い気味に拒否したからかもしれないが、おそらく”輪の国”は”ハ島”にソコまで力を入れていないのだろう。

”ハ島”は土と砂と岩で構成されている島で、コンクリートの道路が一切ない。

また、砂浜の海は海水浴場と言うにはライフセーバーや砂浜を管理している施設等が見当たらなかった。

砂浜の砂や、海の浮きブイ、網等で海水浴場の区画を明示していたりと、海水浴場は意外とお金や人員が必要なのだが、今はまだ”輪の国”にはそう言った観光客は見込めないのだろう。

それを踏まえると、現状の”ハ島”は人が少ないのは当たり前の状況と言える。


「くっ……でっ、では”二島”に行きましょう。」

「「「「「……」」」」」

雷銅は”第六警備隊隊長”の後に付いて行く様に歩き出す。

他の歩力警察官達も無言で歩き出していた。


「「「「「……」」」」」

”第六警備隊隊長”とは別のバトルスーツ達は、雷銅達を目で追うだけで特に動こうとはしない。

「あなたのお仲間が付いてきてませんが……それは良いんですか?」

雷銅は思わずと言う様にして前を歩く”第六警備隊隊長”に声をかける。

「はい?……っ!……あぁ、”ここで”あの者達は待機させる段取りです。何も問題はありませんので気にしないでください。」

”第六警備隊隊長”は雷銅が声をかけてくれた事に驚く様にして声を返す。

確かに雷銅としてはわざわざ言う必要のない事なのだが、彼女としては驚きの動きだ。

ココまで自分達・法力警察官達と同数になる様にバトルスーツ達・”第六警備隊”は行動を共にしていたのに、わざわざ”ハ島”に彼等を残していく意味が分からない……いや、雷銅からしてみたら本当にどうでも良い事なのだが、思惑を裏切られた感覚に陥ってしまっていた。


”第六警備隊隊長”と雷銅以下法力警察官達は”ハ島”の南東にある島・”二島”に向けて歩き続けていく。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―


『ギィィ『カランカラン!』…………』「あっあのぅ……」

重厚な扉を開けると、その扉についているベルが鳴る。その扉を押さえていた者が扉を押さえながらも顔を横に向けていた。

「……お客様、本当に大丈夫なんですか?……いやっ、すぐそこにタクシーを停めてもらってるので”それは”大丈夫だと思いますけど……」

店の扉を抑えているのは店員らしい。

彼は”酔いつぶれた客”が大丈夫なのか聞いている。

「……んあぁ?……あぁ、大丈夫だ。まさか……たった一杯を飲んだだけで寝ちゃうとは俺も驚いたが……」

「……くぁーくぁー……

店員に話しかけられた男性客は、女性を一人背負っている。

……くぁーくぁーぐぐっ、ぐぁーぐぁー……

その背負われている女性の口から規則正しい寝息?……と、よだれと、酒臭い息が漏れ出ていた。

「……んっ、くっ……まぁ…………悪かったけど、助かったよ。また今度来るから、その時はその時で宜しく頼むよ……」

胸に大きな希望を二つぶら下げている女性・飯吹を背負う男性はそんな事を言いつつ、馴染みの店らしいバーを後にする。


…………


……


『……ロロロロロロ……

もう辺りが暗くなってきている時間の清虹市、店の出入り口すぐの所に一台の車が停まっていて、もう間もなく店から出てくる人物を待っていた。


……ぐぁーぐぁー……

『ジリッ』……ぐぉぁー「っしょっと……」ぐぁーぐぁー……『バガッ!』

男性が重い足取りで背中に乗せているモノを持ち直しつつ車に近づくと、その車は後部座席のドアを開ける。

「バガッ!」

そして、次の瞬間には反対側にある前方のドアも開いて車の中から男性が顔をだしていた。

「……おっ、わりぃね……ちょっと彼女を乗せるの手伝って貰える?」

「太郎……」

車に近づいていた男性は勿論その車・店経由でタクシーを呼んだ山河だが、彼と運転席から出て来た男性は”馴染み深い間柄”らしい。

「……困るんだが?!……泥酔した女性を運ぶなんて……」

「あぁ悪い悪い!……今回だけだって!」

いや、馴染み深いのは男性同士だけで、山河と話しをしている男性は変哲もないタクシードライバーの男性だ。

勿論その山河が背負っている女性・飯吹とは面識なんてモノがあろうはずがない。




ぐぁーぐぁー」『バタンッ』「……っ……」『バタンッ』「…………」『バタンッ』

寝息と唾液をまき散らす女性は後部座席に、彼女を背負ってきた山河は助手席に、最後は後部座席に彼女を詰め込む手助けをしていた男性が運転席に戻る。



「……んで?……”後ろの人”は何処へ送り届けるんだ?……」

運転席でシートベルトをしつつ、助手席に声をかける男性はかなり気安い態度だ。

「……いや、もうこの際だ……近場のホテルに頼む」

山河は助手席から、軽く笑いながらも目的地を告げる。

「……はぁ?!……おいっ!……本当に良いのか?……先に言っとくが、俺は関わるつもりはないし、自衛の為ならお前を売るぞ?」

「あぁ、勿論……メーターを無駄に回してくれても構わん」

「くっ……」

タクシー運転手と山河、特にタクシードライバーの男はやや緊張した面持ちで行先を確認している。


「……ふんっ!」『ガチッ』……ロロロ、ヴォォォォ……

タクシードライバーはため息とも鼻を鳴らすとも言えない程度に息を吐き、サイドブレーキを下ろして発進していく……

もう夏とは言えない様な気候の清虹市を走り出すタクシーであった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―


「……」「……」「……」

とある休日の朝、とある一軒家では重苦しい空気が漂っている。場所はダイニングで、食卓テーブルのある空間だ。

「……凪乃ちゃん?もう一度聞くけど……ブリーチと言うか……脱色とか、髪の毛を染めたりとかは……」

澄玲は二度目の、確認を繰り返す様にして疑問をぶつけている。家へ家事の手伝いに来てくれている女子大生に、もしも世間知らずなら……と言う視線を向け、確かめる様にして言葉を放っている。

「いえ、そう言う経験はありません……一応、”私は”土旗商店街にある美容院で髪を切ってもらってます。そこではカットとシャンプーしか頼んだ事はありません。……、そもそも、清敬は……」

澄玲の言葉を聞く体面に座る大学生女子は一杯一杯になりつつ、真面目に答えている。

「……ふっ……清敬は高校でも大学でもそういう校則は無いわよ?……」

澄玲は凪乃が通っていた高校、はたまた通っている大学のOGとして事実を述べている。

彼女は”そんな”話でも何かあったのか、少しだけ思案顔を覗かせていた。


「……っ……」

そんな空気の中、テーブルに並べられている朝食を前にして、今この場では唯一の男性……いや男子である勝也は何も言えずに彼女達の会話が終わるのを待っている。


「……凪乃ちゃんは今……18歳だっけ?「……っ……」ぅーん……」

「……とっ、ともかく、今は朝ごはんを食べてしまいましょう。澄玲さんは今日も病院に出勤ですよね?」

凪乃は澄玲が言葉を探している所で、朝ごはんをはやく食べる必要性を説いている。


「……今日は午後からだから、まだまだ時間に余裕はあります。……勿論私としても、若白髪の一本や二本ならそこまでとやかく言わないけど……」「……」

そう、この場で話題になっているのは凪乃の髪の毛についてである。

今朝、彼女の後頭部に白い毛があるのを厘が見つけていたのだ。

「……ちょーっと”若白髪”って言うには本数が多いかな……まぁ……っ……」

また、凪乃の後頭部にある白い髪の毛は”一本や二本”と言う話ではなく、”一部分の根本がごっそり”と言うレベルだ。

コレが”遺伝”や、”海外の血が混じって”と言うのなら、そこまで体調的な所で問題視はしないが……それも、虹の子である凪乃だと些か話がややこしくなってしまう。

いや、本来はそれでも清虹市市民と言う事で、彼女が日本人である事については別にそこまでややこしくはない。

……ただ彼女は金山家に仕える風間家の養子である。

問題が”ある”のか”ない”のかも、澄玲達からしてみれば想像がつかない。

そう言う事もあって澄玲は多くを語れずにいる。


「厘ちゃんには自分でも気づいてなかった”モノ”を見つけて教えて貰えたのはありがたいと思っています。厘ちゃん、ありがとうございます。”これは”……その……帰ったら四期奥様に報告して、今後どうすれば良いか”決めて”もらいます。」

凪乃は食卓テーブルについている者の1人、厘に頭を下げてお礼の言葉を述べると、自身の後頭部を触りつつ今後の身の振り方等を含めて言っていた。


彼女の言っている事は正論で、自分から問題を報告して指示を聞けるのは心構えとしては幾分か楽なのだろう。

こう言った問題を金山家に連なる者から発見されて何か言われれば、凪乃はショックと対処が同時に行われてしまう。


そう言えば今度の土曜(16日)は小袋怪獣行けの前回の催しで通信障害が起きた事の補填催しが開催されますね。

時間は11時~14時とちょっとアレで

色々ありますが孵化装置の距離が1/4と孵化装置の使用は当日の11時まで見合わせた方が良さそうです。

ゲッツ、イロチ、高個体!

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