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力の使い方  作者: やす
三年の夏
439/474

#438~力の国で会う三人目~


「では……この島に降り立った時に言った、”これまでの予定”を破棄してこの国の案内を外にいる者に頼みます」「なら……自分が呼んできます」『ガッ……』

雷銅は男達に今後の予定を話す。雷銅の言葉を聞いた坂巻は椅子から腰を上げて店の外に足を向ける。

”これまでの予定”とは、『今日は別々で情報収集をしてそれぞれが宿を取り、明日には隣の”イ島”に移動する。』と言う予定である。


ちなみに、この店の従業員である中年男性は店の奥に引っ込んでいて、店の中では雷銅達だけで話しをしていた様だ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―


「……ふんふん……」「……」

とある日の昼下がり、特徴的な男女二人は街中を歩いている。

半歩程度の少し先を歩くのは胸に大きな希望を二つぶら下げる女性だ。

「……はぁ……」

そして、そのすぐ横を歩くのは背が高く、筋骨隆々な肉体であるにも関わらずに肩を落として所在なさげな男性である。


『ガァァ―――』

「……んっ?ここ?ここだなっ!あっはっはー、ムフフフ……」

先を歩く女性は自動で開いた扉の中を見てから中を舐める様に見て目的地なのを確認し、含み笑いを洩らしつつそれを我慢する様にして店の中に入っていく。

「……はぁ」

また、その横と言うか、すぐ後ろを歩く男性はそんな彼女を見てから足を進めて店の中に進んでいく。


その店はこじんまりとした建物だが、内装は華やかでしかし落ち着いた雰囲気の店舗である。また、様々な知識や伝手のある者がいて、これから結婚をする者に結婚式や披露宴などを提案してくれる店舗である。

俗に言うウェディングプランナーのいる店や、ブライダルショップなどと言われる店だ。


ブライダルとは新婦や花嫁を指す言葉で、基本的には女性の結婚に関する言葉である。

世の結婚を盛大にしようとする女性達が一度は訪れてみたい店だ。



『ガァァ―――』「いらっしゃいませ」

店の中の自動扉が開き、近くに控える女性店員が今店に訪れた”カップル”をよく見る前に頭を下げて対応している。

「ぁ!」

その女性は社会人として見れば結構若めで、二十代頃を彷彿とさせる女性である。レディーススーツを着て、ナチュラルメイクに黒髪と、日本人が見る分には安心できる雰囲気を持つ女性である。

彼女は今訪れた男女、清虹市の市長秘書である平岩雄二と、少し前にそんな彼に公共の電波・又はサイバー空間を駆使して世界に見られる様にして求婚した女性・飯吹金子を認識して驚きの声をあげていた。

「わぁ……もしかして……ご結婚の式についての御相談ですか?」

店員である若い女性は落ち着いた雰囲気で、いつもはそんな感じは鳴りを潜めていそうだが……満面の笑みを浮かべる飯吹を見てから多分に微笑ましい成分を含みつつそんな事を聞いている。

「はい!結婚について良く分からないので”どうしようかな?”と思って携帯電話で調べたらこの店を見つけて来たんです!」「……」

飯吹は満面の笑みをさらに華やかな物に変えつつ、胸を大きく張って宣言した。だが、彼女の横に並んだ平岩は言いたい事を胸に仕舞う様にして所在なさげに愛想笑いを浮かべている。

「……あのー、婚姻届け等はもう市役所に提出されましたか?」

女性はそんな二人の温度差に気付いたのか、まず手始めにと言う感じで言葉を投げかけた。


「はい!まだ”そういう”のもなんもやってなくて……初めに出しちゃった方が良いですかね?」「……」

飯吹は見ているコチラが恥ずかしくなるほどの満面の笑みを浮かべながらハキハキと言葉を返している。

「……」

だが、そんな飯吹とは対照的に平岩は無言だ。


「……えっと、いえ、婚姻届けは”提出しなければならない時期”と言うのは基本的にありませんので結婚式のあとに出しても、生活を一緒にし始めてから出しても構いません。ただ、扶養家族になる為だったり、子供を出産するまでには出さなければならないと言うのが現実的ですね。あと、苗字が変わる場合は身分証明書の変更から始めなければ駄目なので……まだ何もしてない分にはそれほど問題はありません」

女性は飯吹に懇切丁寧に説明をしている。

だが、彼女は目の前にいる二人を見て、内心不安になっている。

「……」

そう、平岩がノリ気ではない事を察知しているのだ。


「では……まず、申し訳ありませんが、”ご契約”の話しからさせて頂きますね。こちらにお座りください。料金などはこちらにある様に……」

と、女性は内心の気がかりを無視しつつ、店の契約について話をし始める……



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―


「……それで、我々の案内はいかがいたしましょうか?」

ヘルメットを付け、目元を隠したバトルスーツにマントを羽織る者がテーブルに備え付けられている椅子に座る面々を見回してから確認の声をあげる。


「こちらとしても、貴方がたの案内を断る理由はありません。……ですが、私達としては、そちらを信用出来ないのは分かりますよね?」

その声を正面から聞いた雷銅は臆する事無く言い返している。

「ふむ……それは当然でしょう。ですが、我々としては信用を得る機会がありません。信じて貰えれば幸いです」

雷銅を正面にして、目元が隠されているのでドコを見ているのかは分からないが、恐らくは雷銅の目を見て言葉を返す者は開き直る様にして”ひとまずは信じなさい”と言う意思を伝えている。


「なら……まずは素顔を見せてください。こちらの正体をどう言っても何も言いませんが、素顔は晒しているんですから。せめて同じ立場になって貰わなくては信用など出来るハズがないじゃないですか?」


「ふむ……同じ立場……」

雷銅の正面、バトルスーツに目元を隠す者は雷銅の言葉に言葉を失ってしまう。

「いや、隊長……それは流石に……」「うむ……奴らは所詮よそ者、我々と同じ立場でなど……」

しかし、バトルスーツにマントを羽織る者は、雷銅の元に現れた一人から人数を増やし、今店の中にはバトルスーツにマントを羽織る男が二人、増えていた。ちなみに彼等はテーブルの誰もいない面を前にして立って雷銅達と相対している。

先程坂巻が店の外に待機していた一人を呼びに行くと、人数が増えていて、バトルスーツにマントを羽織る者が合計で六人もいたのだ。

今は店の中には雷銅の元に現れた一人の他に、同じ格好の男が二人が入ってきている。

後から増えたバトルスーツ男二人は最初の1人を”隊長”と呼んでいる。その男二人は雷銅達を下に見ていて彼女等の物言いに腹を立てている様子だ。


「ふむ………………黙りなさい。「「……っ!」」部下が失礼な態度を取りました。」

バトルスーツ隊長はあごに手を添えてしばらく考え込むと、顔を向けて部下であるバトルスーツ男二人を叱責する。そこで雷銅に顔を向けると頭を下げて謝罪の言葉を口にした。

「しかし、我々はこの国、ひいてはこの地の安寧を守る役職の者です。職務中、および道中の装備着脱は出来ませんが、この場でのみ素顔を見せる事で信用して頂ければありがたいです。」「「「な「「「「っ!」」」」」」」

バトルスーツ隊長の言葉を聞く、店の中にいる者は本人を除く全員が驚きの声をあげる。

それは勿論雷銅も、だ。彼女は自分の提案が叶えられない事を見越して対応していたのだ。

一種の対人スキルで、相手が呑めないだろう提案を拒否させてその後のやり取りを優位に進めようとしていたのである。

「しかしっ!」「そんなっ!」

そしてそれはバトルスーツ男二人も同様で彼等は隊長の決定に異を唱えている。


『ガシッ、』『ググッ』と音を鳴らしてヘルメットを持ち上げてバトルスーツ隊長はヘルメットから素顔を覗かせる。


「……自分は”輪の国”の軍事部、第六警備隊隊長の岡凪(おかなぎ)乃原(のばら)です。階級は二級です。以後は”第六警備隊隊長”とでも呼んで頂ければ幸いです」

「「「「っ」」」!」

バトルスーツ隊長は躊躇なく素顔を晒す。

ソコには綺麗な部類の女性の顔が鎮座している。歳は30にも行ったか行ってないかぐらいで、化粧っ気もないモノだった。

だが、見る者が見れば解る。そう、それは清虹市の金山邸、ソコに住み込みで働く風間凪乃そっくりな顔だ。


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