#429~力を通して見るモノ~
遅れました……
「……はい。ではこれより皆様の身分を証明するカードをお渡しします。それを受け取りましたらココにいらっしゃる”一部の方”以外は観光を始めて頂いて構いません。」
”へ島の船着き場”にある大きな受付で説明をする女性は、今回初めて六ツ子島に来た者達に声をかけた。
「「「「「「「「「「……ん?……」」」」」」」」」」
受付女性の声を聞く、その受付前にいる者達は怪訝な表情を浮かべている。
彼等彼女等は大きな受付の台で名前や住所などの個人情報を用紙に皆が書き込んでいた所だ。
「「「「「「「「「……っ……」」」」」」」」」「「「「「「……」」」」」
中年男性の集団と雷銅達の集団が先ほど剣呑な雰囲気を漂わせている。
もしかしたら、”輪の国”の者達が雷銅達と彼等の先ほどの様子を観察していて、それを咎めるつもりなのだろうか?
「その”一部の方達”ですが……それは”雷銅様”と”塩屋様”、”鎌谷様”、”小松様”、”坂巻様”の五人の方達です。貴方達にはもう少しお話しを伺い致します」
「「「「「「……」」」」」
なんと、雷銅達・”法力警察官の集団だけ”受付女性から『待った!』をかけられてしまう。
「少しだけお時間を頂いてよろしいですか?「「「「「「……」」」」」あぁ、それと、そちらにいる”男性”も一緒にお願い致します。「……」貴方も一緒に来られた方ですよね?」
「……なっ?……っ、いえっ……解りました……」
受付女性は、敢えて雷銅達から一人だけ離れていた男性・”橋元”を、呼ぶ。
彼は十得ナイフを持って来ていてフェリーを降りる少し前からずっと一人で行動していた者だ。
ここで橋元は一瞬だけ抵抗する様に言葉を迷わせるも”とある”可能性に思い至り、言われた通りに返答する。
「……」
そう、すでにフェリーの中かフェリーに乗り込む前に、”輪の国”の者に監視されていた可能性だ。
「……っ……」
こうなってしまうと対応が難しい。
『……ぁ……、……ども……、……これで……、……ふぅむ……、……』
雷銅達以外の者達は受付女性から様々な色のカードを手渡されて続々と”へ島の船着き場”から出ていってしまっている。
「この”カード”は皆様がこの島から離れるまで使用して頂きますので出来る限り無くさない様に大事に扱ってください。”カード”の再発行も行えますが、このカードは身分証以外にも使われます。このカードが手元にない間はこの国では何も出来なくなるのでそれは心に留めておいてください……」
どうやら輪の国では、人を全て”カード”で管理しているらしく、受付の女性は一枚一枚を大きな受付越しに手渡していた。
「……では、残って頂いた方達ですが「「「「「……」」」」」皆さまは保有している法力が他の方とは比較にならない程多い事が解っています。貴方がたは”法力警察”の方達ですか?」
「……いえっ?……どういう事でしょうか?」
受付に詰めている女性は雷銅達を見回してから淡々と用件を述べていく。
「「「「「……」」」」」
雷銅の他の男性法力警察官達は声を出せずにいる。
雷銅は動揺している様には思えない程に受付女性の言葉に反論しているのだが……だがしかし……
「あぁ、いえ、申し訳ありません。……我々としましても、”貴女がた”と敵対しようとしている訳ではありません。むしろ、逆です。”我々”は貴方がたを歓迎致します。」
「いえ……」
受付女性は雷銅の言葉を無視する様にして話を進めていた。
「「「「「……」」」」」
やはり、雷銅の他の男性法力警察官達は声を出せていない。
「”我々は”貴方がたが”法力警察”だと認めない事も理解していますし、逆に”法力警察だと認める”のであれば”輪の国”での滞在を拒否する様に言付かっております。」
「「「「「「……」」」」」」
大きな受付に詰める女性は押し黙った雷銅に視線を向けながら言葉を続ける。
「実は……この”感応石”と言う、法力を与えると発熱する鉱石は”ただ法力を与えると発熱する”機能があるだけではありません」
受付女性は受付台から半透明に赤い水晶然とした鉱石を取り出して説明を続けていた。
「「「「「「……」」」」」」
もう雷銅は反論も出来ずに他の男性法力警察官達同様に無言だ。
「この”感応石”を通して見ると、”ソコに保有されている法力の量が解る”機能があります。”コレを”通して見ると、貴方達の保有している法力量は桁違いに多いです。我々よりも多い方もいますし、これだけの方達となると”法力警察官”か、”我々の関係者”ぐらいしかおりませんので……」
「「「「「「……」」」」」」
なんと、彼女の言葉が本当か分からないが……どうやらその言葉を信じると”輪の国”の者達が有している資源は大分便利なモノの様だ。
こと”法力関係”でも雷銅達”法力警察官”以上だと言える……
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『コッ、コッ、ガタ、ゴッ、……
『ガヤガヤ……』
とある薄暗い空間では、大人数の男達が歩いて移動している。
『……ガヤガヤ……』
彼らは皆、肉体労働者らしい粗暴さが見られ、口々に雑談交じりにしているが、隊列を組んで足並み揃えて進む姿は一種の規律正しさを垣間見せていた。
『……ダガッ、ダガッダガッ、ダガッダガッ、ダガッダガッ、ダガッダガッ……』
『……ガヤガヤ……おい!、っ……』……コッ、ガタッ』
そこで、男達の中の1人が、前方から”やってくるモノ”の足音を聞きつけて、静止を促す意味の声をかける。
「「「「「「「「「……」」」」」」」」」
十人以上いる男達は息を止めて前方に視線を向ける。
「……おいおいおいっ!”魔獣”がいるじゃねぇか!”深夜組”のヤツ等はちゃんと”こいつら”を追い払ってねぇじゃねぇか!」
粗暴な男達の集団の中の1人が大声をあげて先行している者達に非難の声をあげる……
「「「「「……」」」」」
『『『『『ガサッ』』』』』
またさらに、粗暴な男達とは違う場所から隊列を組んで進行してきた者達が歩みを止めて”彼等”に視線を向けている。
「「「「「……「っ、」」」」」」
……粗暴な男達は”四足歩行の”獣から視線を向けられて半歩後ずさっていた。
「「「「「……」」」」」
『『『『『……』』』』』
しかし、隊列を組んで進行してきた者達の”視線”は他から見ても分からない……
なぜなら”彼等”の目元は隠されているからだ。
『……』
光が少なく、暗い空間の中なのに目元を隠す集団は一糸乱れずに”ただ”獣と対峙する粗暴な男集団に視線を向ける……




