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力の使い方  作者: やす
三年の夏
429/474

#428~力のイケナイ所~


「っ……」

雷銅は小さく舌打ちをして目の前にいる中年男性達の好奇な視線に苛立っていた。

「ぁ……」「ぃゃ?……」「ぅっ?……」「ぇ?……」「……」

また、雷銅の苛立ちを肌で感じ取った今日も行動を共にしている法力警察官達は言葉に詰まってしまっている。


「……ふぅ……」

だが、雷銅はそんな苛立ちを微塵も感じさせない様な笑顔を浮かべ、少し空気が悪い”ヘ島の船着き場にある受付前”にいる者達に聞こえる程度の声量で説明を始めた。

「……いえっ、我々も”輪の国”の方達と、何か出来るかもしれないと、”半分は”仕事で来た様な者です。”会社からお休みを貰って、見学をしに来ている”状態なんです……でも……すみません。まだお仕事が出来るかどうかも分からない段階なので……私達には構わないで頂けると助かります。」

雷銅は当り障りのない風にして説明を述べる。

本来は仕事で”出張”として来るべきハズなのに、”仕事の休みを取らされ、その休日に会社から要請されて従わされている”と言う、グレーより……と言うよりも、完全な時間外労働を言い渡されていて……と説明をしていた。


「……ぁ、仕事……、……ふぅん?……、……まぁ……、……ぁ、ゃだ……」

雷銅の言葉を聞いたその場にいる者達は、それまで作り上げていた空気を隠して納得の表情を見せていた。


「……ほぉ?仕事で?……」

しかし、当の雷銅達の関係を問いただした中年男性は、その空気が霧散する前に言葉を重ねていく。

「……それで”男ばかりの中に女一人”と?……ふぅん?」「……ぉぃ、ゃめ……、……っ……」

中年男性は雷銅の説明を、『いや、それは嘘でしょ?』と言う様な疑いの目を向けていた。

また、中年男性の周りにいる彼の仲間内の男達はそんな中年男性の言動を止めようと小さな声を出して慌てふためいている。


『パンパンッ!』「っ「「「?」」「!」」」「はい、よろしいですか?皆さん?一度私の説明を聞いてください……」

雷銅と中年男性が……と言うよりも、中年男性が雷銅に絡んでいると、”ヘ島の船着き場”に置かれている、大きな受付の中に立つスーツ姿の女性が手を叩いて注目を集めてから、幾分か落ち着いた声で説明を始めた。

「……まず、始めに申し上げておきますが、”輪の国”での喧嘩や言い争いは極力避けてください。我々がその”争い”を止めるように注意しても、それを続けようとする方であれば、即刻この”六ツ子島”及び”輪の国”から退去して頂きます。勿論ですが、その争いに際して相手から不利益な言動をされたと言うのなら、それ相応に相手へ謝罪や賠償等の誠意を示して頂きます。それら”謝って頂く言葉”や、”賠償金”等々は我々”輪の国”の者がその場その場で判断いたします、また、これに賛同して頂けなくとも”退去”して頂きますのでご了承ください。」

受付にいた女性は、それまでの雷銅達の会話を断ち切る様な視線を向けて声を向けている。

「……っ?!……、……なに?……、……受付が……、……デカっ!……、…………、、、、」

その”大きな受付”は、一般的な成人女性が詰めていても、その受付の埒外な大きさの比率から”子供”が受付にいる様に錯覚してしまうモノだった。

その受付女性はふざけている様な大きさの受付の割に至極まともな顔と声色で振舞っている。


「ご理解いただけましたか?……では次の説明になりますが、”輪の国”では争いを防ぐ為として、武器である銃火器や刃物等、爆発が主な用途の危険物の持ち込みは全て禁止しております。もし無断でそれら武器を持ち込まれた場合は”退去”のみならず身柄を拘束させて頂きますので、どうか間違いが無い様にしてください。”日本から来た船”に乗って来られた皆さまなら大丈夫かと思いますが……持ち物などのご確認を、この場で御自身の手でお願いいたします。「……なっ……、……ちっ……、……、……ぉぃ……、……」では、次の説明を続けますが……」

受付に詰める女性は淡々と説明を続ける様子だ。その大きな受付に集まった者達の反応を一切待たずに口を開いていく。


「……”輪の国”へ観光しに来て下さる皆様は、全員この”ヘ島”にあるホテルで宿を取ってください。「えっ?あの……」もしも、既に”輪の国”にご家族や知り合いがいたとしても、この”へ島”にあるホテルで宿泊して頂きます。ここには”貴重な資源”等がありますので、持ち物や持ち出す物は徹底して管理させて頂きます。」

「……っ……、……ちっ……、……」

そんな説明を聞いた雷銅達以外の”六ツ子島”に初めて訪れた者達は顔を真剣なモノに変えて息を飲んでいる。


そう、この六ツ子島で取れる資源は世界的にも注目されている鉱石だ。法力を込めて適切な処理を施すことで様々なエネルギーが取り出せる。

他の地域でもわずかばかりは出土されるモノだが、六ツ子島で取れるモノは純度と数が桁違いに多い。


この鉱石群は、”次の産業革命を引き起こす資源に成りうる”として注目されているのだ。

そういう事もあって、多くの地域や企業が”現物”を持ってくる様に水面下で動いている。

一応今は六ツ子島の住民・”輪の国”の者が、その鉱石をそのまま利用していると言う話までだが、既に『海外の企業が”輪の国”で研究・開発を行っている』なんて噂も囁かれている。

つまり、今日この日”輪の国”の玄関口である”へ島”の”船着き場”受付に来ている中年男性達は工業系のメーカーに勤める者達なのだろう。

その関係でこの島に訪れている”企業”の者達は、暗黙の了解で敵対勢力同士とも言える関係なのだ。



「ここで”皆さま”が気になっているのだろう輪の国の”資源”・輪の国で産出される”鉱石”について言及しますが、既に”輪の国”では全員がその恩恵を受けている状態です。もう何度かこの地に訪れている方達で、我々の信用を得ている方達は既に今日も掘り出して頂いている状況です。」

「……なっ……、……に度さん度以上も……、……ぬぬっ……、……のぉっ……」

だが、受付女性の言葉によると、始めからこの島に来ている者達は既に利用しているらしい。また、彼等彼女等よりも早くにこの島々に観光へ訪れている者達は”採掘”をしていると言うのは初耳だ。


「……」

「……はぁ……、……ひょっとして……、……ふっ……、……へぇ?……、……」

また、雷銅達はそんな話を聞いても驚くしぐさなどは見せなかった。

彼女達は実際にそんな情報を得てはいなかったが、元より”鉱石”の採掘等はどうでも良い事なのである。

雷銅達は彼等・”輪の国”の者達の武力等を見極め、場合によっては”制圧”等をするのが”彼等・彼女等”の仕事である。


「現在、六ツ子島は”皆様の信用”によって利用できる島が限られています。初めてこの六ツ子島に訪れた皆さまが利用できるのは、今皆さまがいらっしゃいますこの”へ島”と”ロ島”と”ハ島”の三つの島になります。この”へ島”の北西にある海上通路から”イ島”に行けますが、皆さまは通過のみ出来る状態です。その”イ島”から北東へ海上通路を進むと”ロ島”になります。ロ島にあるお店では基準以下の”鉱石”が出てきた際は販売しますのでそれを探してみるのも良いかもしれません。……では皆様にはこれからお名前と住所を”コチラの紙に”書いて頂きます。また、皆様のお持ちになっている身分証明書を控えさせて頂きます。」

受付にいる女性はペラペラとこの島々・”輪の国”とココに滞在するのに必要な手続きの説明をしていた。

どうやら何度かこの”輪の国”に訪れなければ”鉱石”を得る事が出来ないらしく、パスポート等の提示を要求される代わりに身分証明をしなければならないらしい。

他の”二島”・”ホ島”へは行けないそうだ……


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