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力の使い方  作者: やす
三年の夏
427/474

#426~力は自分の為に~

遅れました……すみません……


「いやっ……えっ?……結婚……って?えっ?……いやっ、飯吹さんと自分が?……いやっっ?!それは……”みゃごろ”と”飯吹さん”じゃなく?」

「そうだ。……このまま何もしなければ、”雄二”と、”そこの飯吹さん”が結婚する。」

平岩は沼岡の声に言葉を失いつつも確認する。それは、”結婚相手が間違っているのでは?”と言うモノだ。

しかし、沼岡は間違える事がない様に、それぞれの名前を言うタイミングで軽く指を指して示している。


「いやいやっ……確かに少し前まで彼女は、”そんな”事を言っていたけど……ここ何日かは会ってすらいないのに、どうしてそんな……っ?!、、、まっまさか……」

平岩は手を顔の前で広げて横に横に振って沼岡の言葉を否定する。


彼の言う様に、飯吹とはこのあいだ、水藻にある体育館のプールで一緒に泳いでから、ただの一度も会っていない。

子供達に”泳ぎを教える”と言う『お手伝い』をしてから数日が経過している。

彼女の携帯電話を契約したそのすぐ後、平岩は彼女から”一緒に虹の家を経営しない?”と誘われたが、それを断ったり”これからの人生設計”等を話してから、彼女はグイグイ来る事もなくなっていたハズだ。


飯吹の思惑や行動が全く分かっていない平岩である。

それとなく避けていたので、これ幸いにとそのまま放置していたのだが……、


「……っ……」


「……ひゅー……」「……にゃ……」


そんな飯吹だが、今現在の行動から解る様に、三夜と仲良くしているらしく、今日も”三夜が連れて来たお友達・お客”として平岩の部屋に一時的に訪れているだけだ。

彼としては、若干思う所はありつつ、いつまた『結婚してくれ!』等と彼女が言いださないか内心でビクビクしていたぐらいである。

「……」

ただし……全く心配が無い訳ではない。

平岩は彼女と”ヤル事はヤッていた”ので、もしも彼女が本当は身重になっていたら……検査をした後、諸々の”認知”や”対処”等をしなければならない可能性がある。

……まぁ、もし”そう”なっているのならば、”彼女はもっとグイグイ来るのでは?”とも思うのだが……


「……ひゅーー……ふぅっぅぅぅ!……」

飯吹は平岩からまじまじと疑いの目を向けられても、それを気にせず、口笛を吹こうと口を尖らせていた。

ただ彼女の思惑とは裏腹に口笛はあまり吹けておらず、ただ息を吐きだしているだけだ。


「……いやっ、だとしても、『結婚しなければならない』と言うのは?……まぁ、最悪……っ……いろいろと”お金を出さなければならない”と言うのなら、まだ話は解るけど……」

また、それでも平岩は沼岡の助言を正しく理解出来ていない。


もしも『”アレ”が来てない?……っ!?』として、話しがこじれにこじれて『平岩が責任を取る』としても、”結婚”までは強制されないハズだ。


幸いな事に平岩は、今現在清虹市市長の秘書業務から名実ともに離れている。

どれだけ世間から厳しい目が向けられようとも、『平岩が養育費や”手術費”等々を飯吹に払う』事で話しは終わるハズ……

”結婚”はあくまでも自由意志の結果だ。

法的に強制される事ではない……


「雄二……『金を出さなければならない』とは?……まさか……本当に噂されていた通り、”アレ”なのか?……「……にゃー……」「……ひゅっ、、んっ!?ナニナニ?……んっ?”お金”?……んんっ!?!……まぁ、良く分からないけど……いくらかなら私がお金を出しても良いよ?」……いや、”貴女”には関係のない話だ」

飯吹は飯吹で平岩と沼岡の会話の中から単語を拾ってきて言葉を投げかけてくる。だが、沼岡は反応を示した飯吹に向けて手を振るって飯吹の提案を断っていた。


「……いっ、いやっ、”関係ない”って……」

だがしかし、平岩としては、その原因や、自分を落とし入れた沼岡や三夜・そして当の本人である飯吹も巻き込もうとしている。

”関係を持った”のは賢人を”7カラ11カイ”から送り出した晩で、その夜に暗躍していた主要メンバーには沼岡や三夜も関わっているハズだ……


「……っ……そろそろ”……活動”しないと駄目なのに……」「っ!?、、、」

さらに言ってしまうと、平岩は賢人から切られたショックもあり、貯蓄を切り崩しながら生活を続けている。

まだ余力はあるが、そうポンポンとお金を払える懐具合ではない……


「、、待てっ、今雄二はなんて言ったんだ?「……えっ?!いやっ、何を?」”何の活動”しないと駄目なんだ?「むっ!?」いやっ、すまない、雄二が”抱えている問題”を教えてくれれば、もっと良い”助言”が出来るハズだ」

そこで、平岩がこぼした独り言で”全て”を理解した者がいる。ちなみに、飯吹はその理解した者・沼岡へ鋭い眼光を向ける。そんな眼光を受けた沼岡は幾分か柔らかく言い直していた。


「いやっ、普通に”就職活動”って言ったんだけど……どこかのスポーツジムのインストラクターとか、パソコン関係のSE・保守・運用業務とか……あぁ、どこかの家電量販店の販売員とかを考えてるけど……」

平岩はつい口から出た独り言をしっかりと言い直す。


彼の肉体は筋骨隆々で、食事管理や運動で身に着く筋肉の人体の知識等はプロ顔負けだ。実際はどうなるかは分からないが、そういう身体を造る仕事等で即戦力になれる自信がある。

また、電子計算機等のスキルや知識や伝手も、市長事務所で身に着けている。サーバー稼働等も経験しているのでシステムエンジニアとしても即戦力になれるだろう。

それらはすべて彼が慕う、彼等の兄貴分である”金山賢人”から言われて得た経験とスキルだ。

そしてそれは彼等の中でも”平岩のみ”に言える事である。


「やはりそうか「……っ?……」いや、賢人さんは凄いな「……っ?!」悪いが雄二は、”俺の為にも”飯吹さんと結婚してもらう。「んっ!?」勿論ジムのインストラクターやSE(システムエンジニア)も駄目だ。「いやっ!?なんで?!」言っておくが、”俺の為”だけじゃない。”皆の為”だから、諦めろ」「え!?……」「にゃ」『ヒュゥウ!』

そして、平岩は内心でだけ賢人にお礼を言っていると沼岡も賢人の事を感慨深げに褒めて、事も無げに平岩の人生設計を否定する。

平岩は沼岡の暴論に口を挟もうとするが、驚きすぎて満足に声を出せていない。

そして、三夜は満足そうに頭を前後に振り、飯吹は口笛を綺麗に吹く。


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