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力の使い方  作者: やす
三年の夏
416/474

#415~力のM~


『ガチャン……』

「はぁ……」

夏の日差しが清虹市に強く差し始める頃、”彼女”は自宅の玄関扉を外から閉める。

『……カチャン、』

そして次に”彼女”は閉めた扉にある鍵穴に鍵を差し込んでそれをひねり、マンションの自室を施錠させた。


「……っ……」

”彼女”・雷銅陽子は久しぶりに取れた休日を謳歌する為にこれから出かける。

手からは紐バッグを垂らしていて、他に荷物らしい荷物は特に持っていない。

服もレディーススラックスにTシャツと、ごわごわショートヘアな事も手伝って実にラフな格好だ。


『ミーンミーンミーンミーン……

『ギュ』「……っ……」

左手に持つ紐バッグの紐を左肩に掛けて背負い、炎天下の道へ歩き出す。

彼女は清虹市の中心にある、清虹署でその近くに借り上げているマンションから出ていくのだった。


……ミーンミーンミーン……

「……」

”彼女が”向かう場所はひとまず清虹駅だ。

そこからリニアモーターで東にある”水藻駅”へ向かうらしい。



『ピッ』「……」

「あっ、雷銅さん!……そのまま水藻に行くんですよね?良かったら一緒にどうです?」

雷銅が清虹駅の改札を潜ると声がかけられる。その声は男性のモノだ。

「……っ、小松?……ですか?」

雷銅は改札を抜けた所で声をかけてきた男性を見ると、少しだけ声に棘を含ませて返答している。

二人は同僚だ。つまり、清虹駅の改札を抜けた所で彼女を多分待っていたのだろう男性は法力警察官、若しくは清虹署勤めの者と言う事らしい。


ちなみに歳は雷銅が28歳で、その”小松”と呼ばれた男性は31歳である。


年齢が近いので同じ様な世代と言える男女だが、男性・小松の方が年上だ。

「まぁ、、良いですけど……」

しかし、雷銅は年下なのを若干引け目に感じさせる様な口調で男性の苗字を呼び捨てで呼んでいる。

「ははっ、実を言うとお察しのとおり、”雷銅さん”を待ってたんですよ。」

「……ふん、貴方を”ストーカー”として、”おまわりさんに”通報しますか?」

「あれれー?良いんですか?いやぁ……”雷銅さん”を守って”やけど”になった皮膚が痒くなってきた気が……」

対して小松も年上だが敬語を使っていて、彼女を”さん”付けで呼んでいた。

また雷銅は小松が自身を駅で待っていた事に対して難癖をつけるのだが、男性はそれには負けじと腕や肩をさすって”負傷”した部分を”労わっている”風に見せている。

実を言えば男性のその言葉は冗談だ。

確かに腕や鎖骨あたりの皮膚が少しだけささくれ立つようにして荒れている。

医師の診断のもと”対して重症なワケではなく、ひと月も経たずに回復するだだろう”と診断が下されているが、”法力医師が施術すれば一日で回復する”と言われても、彼はそれを断って自然に治癒する事を選んだのだそうだ。

ちゃんと作戦行動中の負傷で、労災等の保険も適用されるが、彼はそれでも法力医師の施術を断ったのだ。

勿論その施術を受けるのは”彼”なので、彼が”法力医師の施術を受けたくない・受けなくても良い”と言われればその限りではない。

では何故彼はそんな負傷を直さないでいるかと言うと……


「ふん、そんな事を言ったって私は動じませんよ?」

雷銅は切れ長な目で男性をにらみつける。

「……ぉぅぉぅ……」「んっ?」

雷銅の視線を受けた男性は恍惚な表情を浮かべて痙攣を起こす。

雷銅はそんな男性の意味が分からない様子に怪訝な顔を向けるだけだ。


「……っあ、いやぁ……はぁはぁ、(*´Д`)……なんでもないですっ!」

「えっ?……はっ?、はぁ……まぁ、なんでも良いですけど、なんか気持ち悪いので付いてくるぐらいは良いですが、少し離れて歩いてください。」

「むぅぅ……あぁぁ、はいぃ(・∀・)ィィ!」

「えっ?ぇぇ……」

雷銅は小松の性癖を理解出来ず、彼の状態を捨ておいて歩き出す。


清虹駅からは東・西・南・北の水藻・風台・火狩・土旗のどこに行くにもすぐに行ける駅なのだが、その分ホームや乗り場が複数用意されている。

つまり、改札を抜けてからも階段を上がったり下ったりして行先毎に向かう先が決められているのだ。

そんな雷銅(達)が向かう先は清虹駅の中でも”水藻方面へ向かう電車が来るホームである。



彼女達がこの休日前に下された今後の予定だが、『”旅行気分”で遠出をして貰う』事だ。

彼女達は清虹市に本拠を置く警察組織に配属されているのだが、”仮面”を被って活動をしている。

つまり”仮面”をハズして行動している時は”プライベート”・若しくは”活動”の準備的行いをしている時なのである。

なので、もしかしたら、仮面を付けずに”仕事として遠出をする”事もあり得るだろう。


今現在清虹市の東の海・太平洋の沖の方で”防人部隊”と言う集団が”六ツ子島”と言う名の”無人島”を占拠して国を作った。

一応その国は今の所、軍事的活動を予告してはいないが、それもいつ軍事的活動を始めるのかいまの所は分からない。

また、”日本に利する行動”をすると言うが、そんな者達を見過ごしていれば……

いつかは”日本の差し金と思われて”他国を害した場合、”日本の国際的立場”に傷をつけかねない状況だ。


つまり、彼等が”何かを”する前に”彼らを止めなければならない。”

であるからして、そんな時に雷銅達は”不自然に休暇を貰い”、また”水藻港から遠出をしてほしい”と言われたからには『”その国”又は”六ツ子島の占拠”を辞めさせろ。』と言う類の命令だろう。


『……ググゥ、ガーッ、ピロンピロン、ピロンピロン…………』

はたして、彼女等・彼等は”これから電車に乗って”何処へ行き、何をするのだろうか?……

『『……ガッガッ……』』

『ブゥゥーン……ブゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウ……

一瞬車両が揺れると、間もなく滑るように動き出す。

……ウウウウゥゥゥゥゥ……』




……ミーンミーンミーン……



『ザパァァァン!ザバァン!ザバァン!ザバァン!ザパァァァン!ザバァン!ザバァン!……

『ジョロジョロジョロ……』

『グググッ、ググッ、ガゴガゴッ……』

水が等間隔で波打ち水面を揺らしていた。

そんな中でも”水がほそぼそと流れている場所”がある。

また、その”流れている場所”は人も時折流される事もある様だ。


「……くっ、、」

そこで流されている女性・雷銅は競泳水着にもかかわらずに、体育座りの様にしてお尻と足の裏を付けて股を開いている。

俗に言う”〇字開脚”である。

「、、、くっ……もう……でちゃう……」

雷銅は足を曲げながらも、ピンとつま先を伸ばして”何かに”耐えていた。

『ジャッ、バァンッ!』

「……ぅぅ……」


雷銅はウォータースライダーから”でて”、”遊戯用プール”に放り出される。


「……」

「……」

「……」

「……」

「……」


そんな雷銅を眺めるのは彼女と同じ班に配属されているアラサー男性の五人である。


彼等は近い内に”遠出をする為”、その調整として今日から数日の間は言葉の通り”休日”とされている。

彼等男五人と雷銅の計六人は水藻にある”総合体育館”に遊びに来ているのだ。


こまった人ですね……

全国の小松さん、申し訳ありません……

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