表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
力の使い方  作者: やす
三年の夏
415/474

#414~力の救い~

すみません……梅雨の説明が逆でした……


『ミーンミーンミーン……』

「あははは……」


夏も終盤でっ、”夏休みも”あと数日で終わる頃であるぅぅぅううう!


清虹市は梅雨の終わる時期が他の地域よりも早く、それ故に早い時期で市内にある小中学校が夏休みに入る。

しかし、その分夏休みが終わるのが他の地域から見て早い訳でもなく、日本にある他の地域よりも夏休みが長く取らている。

その分を夏休み中の宿題として、”家庭内学習”で僅かなりとも学習を進める施策を取っていた。


つまり、夏休みもあと少しで終わる今頃は、市内にいる小中学生は悠々自適な時間を過ごしている頃合いなのだ。


『ピラッ』「よしっ、春香?次のページは”ドコ”にある?」

「うん……今やってる”これ”……だから、、、もう良いよ。」

清虹市内でも一番北にある住宅、金山邸の一室では殺伐とした雰囲気が漂っている。


「いやいや、”もう良い”って事はないだろう?確か”自由研究”が「いや、それは”良い”って!?」……っ?そうか?……別に良いんだぞ?せっかく”友達”の厘ちゃんが遊びに来てるんだし……」

今日はまだ”夏休み最終日”ではないが、金山父娘が”夏休みの宿題”に取り掛かっていた。

「もう!……”自由研究”は別に必ず提出しなきゃいけないってワケじゃないし……」

”夏休みが終わって提出する宿題”は”宿題冊子”一冊だけだ。

但し、そのページ数は夏休みの日数分程はあり、一日1ページ勧める事で計画的に宿題を終わらせる事が出来る宿題だ。

しかしその分量は結構あり、また、まだ学校で習っていない部分もあるので多少なりともは苦戦する物となっている。

春香の様に”一日ぐらいは……”だったり、”三日ぐらいは……”や”一週間ぐらいは……”とやらないでいると、夏休み後半で”泣き”を見る物なのだ。


そういう事もあってか、小学生の長期休暇でよくあるとされる”自由研究”は”提出すれば追加点分の宿題”と言う位置づけで、特に”かならず”提出しなければならないモノではなくなっていた。

また、学校から持って来ている”鉢植え”の植物も別に観察日記をつけている訳でもなく、”現物さえ”休み明けの学校に持って行けばよくなっていて、育てる植物も特に決められていない。

つまり、観葉植物等、発芽や育ちが早い植物ばかりでなくても良いモノとされている。

ただし、渡されている鉢植えで植物を育てる事は在学中にしなければならず、多くの児童は”小学三年生”から始めるのが通例だ。


『……』

いま春香とその父親である賢人がいるリビングには二人だけで”春香の宿題”を賢人が手伝っている状況だ。

「……ぁ……ぉ……」

また、賢人の言う様に、金山邸には春香の友達として、雨田厘が今現在遊びに来ている。

聞くところによると彼女は春香の一学年下の小学二年生だが宿題は初日にほぼすべてを終わらせていて、今は自由研究も行い、鉢植えで育てている植物も既にほぼ全てを終わらせている段階で、あとは日課の水やりとただ時間を置く事で終わる見込みだそうだ。


今日も今日とて遊びに来ている彼女は今、この家に住み込みで働いている風間凪乃が"手の空いている者"として1人で相手をしている。

本来は”春香が”その友達の相手をしたいと言って聞かない所なのだが、その遊びに来た”厘ちゃん直々に”『春香お姉さまは今日は宿題?』と言われ、面倒くさがりな春香は粛々と”自発的に”宿題に取り掛かっている。

雨田厘と言う女の子は何とも頭脳明晰な子なのだろうか……


普通に考えれば、宿題を最終日まで終わらせないつもりの我が子に『お友達と遊んでいる暇は無いだろう?帰って貰いなさい!』等と言って、お引き取りを願う所だが、”あの子”はそれを言われる前に春香のプライドを刺激して”自発的に”宿題をさせている。それだけならば”なんていい子なお友達なのだろう”等と思うだけだが、”その娘・本人”はちゃっかり家に居座り、今現在もその”手の空いている者”と遊んでいるのだ。しかも、”我が子”が頼るだろうその”手の空いている者”を奪うと言う、幾重にも練られている”作戦”だ。

いや、”作戦”ではないとは思うが……まぁ、その”お友達”はクラスで熱狂的なファンがいる程の”アイドル的”人気を持っていると言うし、その家族は秀才ぞろいではあるが……


”アイドル”とは日本語訳すると”偶像”だ。宗教などの求心的人形や神物等が転じて昨今で言う所の芸能人の”アイドル”と呼ばれている。

つまりそれは、もう宗教の様なモノなのだ。

宗教とは”信じる者は救われる”のである。

もしそれが悪徳”宗教”なのであれば賢人としても困るし、娘はそれに傾倒して欲しくはないが、まぁ、あの娘ならば大丈夫だろう。

そう、”信じる者は救われる”のだ。


「……」「ふむ……」

一生懸命に冊子の勉強を進める娘を見て、賢人は少しだけ考える素振りを見せている。

「……ただ”優しく”するだけでは人は育たないか……「……んっ?」あぁ、いやごめんごめん、ふむ、この調子なら今日の内にこの”宿題”も終わらせられるな。明日か明後日にでも”水藻の体育館のプール”にでも行くか?」

賢人は一生懸命に頑張る春香を見て、何か気付いた様子だが、その春香に零した独り言を聞かれ、慌ててもう残り少ない夏休みの今後の予定を提案している。


父親の提案を聞いた春香は、はたしてどのような返事をするかと言うと……


「えぇ……」

あまり乗り気でなかった……

「”あの今日もウチに来てる春香の友達”も誘ってさ「……うんうん!」ははっ……」

……しかし、アイドルの降臨は効果絶大だ。

”信じる者は救われる”のである。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―


『……麒麟(きりん)!……』『バチッ、チッ、チッ、……』『ブゥゥゥゥ『ガチッ』ブォォォン!!』『ガグッ!』『ガッガッ……』

「むっ……」

清虹市にあるとある”施設”内では『バチバチ』音を鳴らしながら、その施設にある”射撃場”で銃を構える者がいる。

『……麒麟(きりん)!……』『バチッ、チッ、チッ、……』『ブゥゥゥゥ『ガチッ』ブォォォン!!』『ガグッ!』『ガッ……』

「っ……」

どうやら”彼”又は”彼女”は射撃してすぐに動けるように訓練を繰り返している様だ。

「……くっ……」

彼女の射撃だが、ハッキリ言うと”射撃の腕”で狙いを付けるモノではない。

全て機械仕掛けで照準から弾道計算を行うので繰り返し訓練するモノではないのだから、今やっている事は”射撃”の訓練ではないのだ。

『……麒麟(きりん)!……』『バチッ、チッ、チッ、……』『ブゥゥゥゥ『ガチッ』ブォォォン!!』『ガグッ!』『ッ……』

「……よしっ。」


ココで何度か行っていた作業に一区切りをつけるのは、清虹署の刑事課に配属されている女性警官、雷銅陽子巡査部長だ。

彼女は先日の”失態”から教訓をえて、射撃後スグに動くようにする動作を行っている。


これまでは、”まさか10Km超の狙撃で即座の反撃をされる”とは思っておらず、その時は部下に盾になって貰う事で難を免れたのだが、”一度でも”その例外が起こってしまったからにはその対処も出来る様にしなければならない。

彼女は狙撃後すぐに動ける様に何度か”この動作”を訓練として繰り返していた。


「雷銅君、ココにいたか……」「はい?……課長?……」

そんな彼女が満足出来る反応が出来た頃、頃合いを見計らっていたわけではないだろうが、彼女の上司が現れる。

雷銅陽子巡査部長の出動時の”01(スナイパー)”の上司、斉木謄課長である。


「……実は、”本部”から通達があってな、、、”君達”にはちょっと遠出をして貰う事になったんだ。「……」それで悪いんだが……明日から少しの間、休暇を取ってもらえんかな?」

雷銅は言葉少なに、”雷風銃”を手に持ちながら斉木課長に顔を向けている。決して雷風銃を構えている訳ではないが、その眼光は幾分か鋭さを携えていた。

「……”遠出”と言いますと……」

雷銅は特に”休暇を取れ”と言う申し出に腹を立てている訳ではないのだろうが、彼の言葉が”仮面を付けての出動”だとして、少しだけ疑問を覚えている。


「あぁ、いや、”そのまま”で良いんだが……ちょっと”旅行気分”で良いから遠出をして貰いたいんだ。」

「……”旅行気分”ですか……」

そう、”旅行気分”……あくまでも”気分”と言うのは重要だ。


「うむ。駄目かね?」

「……いえ、勿論構いません。メンバーは?」

雷銅は真剣な眼差しで斉木を射抜き、その”遠出”の面子を確認している。


「いつもの面子だよ。」

そして斉木も気安く答えている。

実を言うとこれはソコまで珍しい事ではない。主に”事前調査”や”現場の下見”として時々ある事だ。


しかし、”この時期”と言うのは見過ごせない要因で、彼女も”場所”を確認していないのは聞くまでもない事なのである。


「追って正式に連絡するが……”水藻港から”だろうな。まぁ”面子には”私から声をかけておくから、今日はもう上がって貰って構わないよ。」

「はい。」

こうして、特捜課実戦隊前線班の班長であり隊長を務める雷銅は思いがけずにお休みを頂く事になる。

この休みは彼女の”救い”になるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ