#410~力のみずから~
すみません、遅れました……
すみません、やっぱりサブタイトルを変更させてもらいます。
「……えーと、、、まぁ、”君はすぐに”病院へ行った方が良いね……今から私が車で送ろう。……問題は”お手伝い”の方だけど……えーと、、そろそろ役所の人が”お手伝い”の首尾を確認しに来るんだけど……金山さん、君は水系法力の免許を持ってないだろう?……そっちの方はどうするつもりなんだい?誰か知り合いに頼むつもりなら……まぁそれならそれでコチラとしては別に構わないけど……」
矢吹教諭は白い道着男性を車で送るとして面倒を見る様だが、”お手伝い”として快適な空間を作る方はどうするつもりなのかと秋穂に確認をしている。
秋穂は水系法力免許を持っていない。その”代わり”についてはどうするのかと聞いていた。
「はい……”お手伝い”に関しては……私が彼等の邪魔をしてしまったので……報酬に関しては私が弁償させて頂きます。”提示されていた”額を私の方から彼等にお支払いします。”こちら”の方の治療費やタクシー代の方も私に支払いをさせてください。」
秋穂は多少口ごもりながらも、ジャージ男達の”お手伝い”や白道着男性への治療費や移動費の”お金を払う”事で解決すると言う。
「えーと……むぅ、、しかしねぇ……君が”お金”を出すとは言うけども……」
秋穂は金山家の人間だ。”お金”に関してならば、彼女のポケットマネーでも十分に払える額だろう。
しかし、矢吹教諭は『秋穂がお金で解決する』と言うのにあまり良い顔はしていない。
何よりもそれでは、”快適な空気”を作る事が出来ないかもしれない方法だ。
「……いえ、”そちらの男性”の怪我については全て自分の責任です。”水の弾丸”の調整が不十分でした。」「っ?!」「……んっ!?」「「「「「……」」」」」
矢吹教諭がどうするか思案していた所、秋穂や白道着男性・ジャージ集団とはまた別の方向から矢吹教諭に声がかけられる。
「んっ?えーと、、君か……なるほど、”君の”技だったのか……」
矢吹教諭たちから見て北・水路となっている清虹川の西側から、東側のこちら側に北から回って来た少年の言葉だ。
矢吹教諭は”この状況”の全貌をある程度把握する。
「……まぁ……」
また、ここにいるジャージ集団の中でも”この少年の法力ならば”と納得する様子も見せている。
「「……」むぅ……」「「「「「……」」」」」
今も秋穂の近くにいるジャージ集団は無言で、白道着姿の草山は何かを言いたそうにしてその少年に目を向けるだけだ。
「……待て待て、っく、これは私自ら、進んで手を出した結果、、ゆえに繰り返して言うが、”コレ”は大した怪我ではないゆえっ、速やかに冷やして幾分か休憩をとれば、おのずと腫れも引くっ……っ、ゆえに、心配ご無用っ!、っ……」
草山は腫れている右手の掌を見せながら秋穂やジャージ少年に矢吹教諭へ”問題ない”と、再度繰り返して宣言している。
だが、草山は右手を動かすたびに目に見えて痛がっていて、とても本心からの言葉ではないのは誰が見ても解る事だった。
「……っ……」「……」「……しかし、そうは言ってもねぇ……」
秋穂や、水の弾丸を放ったジャージ少年と高山は草山の言葉に懐疑的である。
「これこれ「「「……っ!?」」」そろそろ花火が始まってしまう。んっ!?」
そんな風に互いが『自分の責任だ』と言いあっていると、この場で一番近くにある建物の主で、ジャージ集団に”清虹川でお手伝い”を斡旋して頼み、矢吹教諭をココへ行くように頼んでいた者が現れる。
彼は”とある教え子”から頼まれて”矢吹教諭”をココに派遣していたのだ。
尤も彼が頼んだのは矢吹教諭だけで、草山と高山はこのすぐ近くで異変に気付いて矢吹教諭と共に来ただけなのだが……
「こっ、「「「「「「「「「校長……」」」」先生……」」」」」」
この瞬間に現れたのは清敬高校の校長、清田三郎だ。
秋穂や矢吹教諭、高山に草山と、人の接近にいち早く気付ける者達でも”彼の”来訪は感知出来ていなかったらしい驚きを見せている。
「ふむ、なるほど、、、草山君は”君の”所に居たのか……いや、それは盲点だった。」
清田校長は草山をひと目見てから高山に目と声を向けつつ、テクテクと草山に歩を詰めている。
「ほれ、『ギュ』「っ」石再生『ギッ』「なっ!?」「「「「っ!」」」」、ふむ?牢獄『ギュュュ』『ジャボジャボ……』ふむ、早くせんと花火が始まってしまうぞ?」「「「「「……」」」」」
清田校長は草山の腫れている右手を掴むと、何事もなかったかの様にして土系法力を発現し、続けて辺りの空気を見る様にして見回すと川に手を向けて水系法力を発現させる。
どちらも一瞬の早業だ。
秋穂の近くにいるジャージ男達は草山の右手を一瞬で直した事に驚くが、今もまだ遠い所にいるジャージ男達は一瞬でこのあたりの湿度を下げた清田校長の御業に閉口している。
「ふっふーん、ふっふーん、ふっ、ふっ、ふっ、ふん、ふっふっふーん!」
最早”スゴイ”だの”手伝う”だのを言える次元ではない。ステップ交じりにやって来たのだろう高校の校舎へ戻る”妖精さん”は、秋穂達の誰かが言葉を挟む間もなく歩き去ってしまう。
「……って、清田校長先生が最初から一人でやった方が”余分な労力やお金”もかからないのでは?」「う、うん……」「いやいや……」
秋穂は1人、いち早く気を持ち直して矢吹教諭に思った事を口にしている。
また、矢吹教諭は矢吹教諭で『それもそうだ』と言わんばかりに顔を縦に振るが、その隣に立つ白ジャージ姿の高山はそれに異を唱えていた。
「……あー、清田先生が1人でやってしまったら……」「あっ!」「……」
高山の言葉を聞き、つい先日までの間、教師らしい事を体験した秋穂は、清田校長の”考え”にいち早く気付いた様にして目を輝かせる。
「……いつかは面倒に思っちゃうからさ……」「えっえぇ……それもそうですね……」「……」
そう、清田校長は案外、結構な面倒くさがりなのだ。秋穂は学生の頃では気づけなかった事だが、清敬高校で教育実習を経験した今となっては、清田校長の面倒くさがりな所や、適当に過ごしている事を痛感している。
「……えーと、じゃ、じゃあ……ひとまずっ、、”コレで一件落着!”と言う事で、、今日はもう花火でも見て全て水に流しましょう。」
口を噤んでいた矢吹教諭は気を取り直す様にして清敬高校の校舎に戻ろうとその場にいる者達に号令を出していた。
「あっ、あのっ!……、「うん?」”彼は”どういう子なんですか?水系法力の中でも結構な難易度の技である”水の弾丸”を発現させてましたが……まさか、あの年?で、水系法力の免許を持っているとでも言うんですか?」
しかし、『これでもうお開き!』と言う矢吹教諭に抗議の声をあげるのは秋穂だ。
彼女は”水の弾丸”を発現させた少年の情報をわき目も振らずに求める様にして水を向けている。
「えーと……金山さん、、まさか君はそういう趣味だったのかい?「えっ?」いや、すまないが……これはプライベートに関わる事だからね……いくら君の頼みでも、、えーと……「なっ何故?」いやいや、えーと……金山さん、いくら我々が信用している君でもね……いや、君がどういう種類の男性が好みでも構わないし「?」気になった男子の個人情報はもうちょっとさ……勿論自分で直接聞く分には自由だし、こちらとしては金山さんの好みにとやかく言う訳ではないから……あっ、まぁ一応、、暴力は勿論だめだけど……それ以外では特に問題な事は”こちら”としては特に無いよ?」
矢吹教諭は秋穂に殊更丁寧に、言葉を選びながら”諭す”ようにして言い聞かせている。
「えっ?好み?!……っ!?ちっ、違いますっ!」
この日から、一部の間では、
『清虹市に居を構える金山家の長女は特定の男がいると言う噂を聞かないが、実は、ショタコン趣味だった。』だの、『”特定の”気に入った男性が現れない事に業を煮やして”好みの男性を幼い頃から自分で育てる令嬢”だった!』と言う噂が流れるのであった。




